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SS【魔法学校に潜む妖魔】前編


人里離れた山の頂上にある魔法学校。

そこはミキちゃんが学ぶ全寮制の中学校です。

学校の地下深くには異世界へ通じる通路があり、異世界からの招かれざる客を防ぐためにゲートが存在します。

異世界は奈落とも呼ばれています。


ゲートは絶えず固く閉ざされており、文明の利器をもってしても開けることはおろか、傷つけることさえ容易ではありません。

千年前に生きた魔法使いたちが張った強力な結界で守られているのです。

しかし年月の経過とともに少しずつ結界の魔力は弱まり、最近ではゲートの内側から少なからぬ量の妖気が漏れ始めてします。

それはすぐそこまで招かれざる客が来ていることを意味していました。

彼らもゲートの魔力が弱まっていることに気づいているのです。

そして負運なことに、過去の火事によって結界方法の記された書物は燃えて無くなっていたのです。もう誰も強力な結界を張ってゲートを封印することはできません。


そんなある日、一年生のミキちゃんは瞑想の授業を受けていました。

ミキちゃんの指には校長先生からもらった夢の指輪が着けられています。

瞑想の先生は、人の夢の中に自由に出入りできるネニモツ先生です。

以前、ネニモツ先生には夢の中の実戦練習でお世話になりました。

ネニモツ先生はどんな時でも沈着冷静で、三十人は居る先生たちの中でも、一番の実力者と噂されています。

突然、教室の中に一羽の鷹が飛び込んできました。

校長先生の飼っている鷹です。

緊急時しか飛んでこない鷹を見た生徒たちは、何があったのかと心配そうな表情です。鷹はネニモツ先生の耳元で何か囁くと、すぐに飛び去っていきました。おそらく他の先生たちにも伝えに行ったに違いありません。


「自習していなさい!! 教室から出ないように!!」


そう言い残してネニモツ先生は顔をしかめながら急ぎ足で教室を出ていきました。ミキちゃんも心配そうです。


実は大変なことになっていました。

学校の地下深くにある奈落に通じるゲートの鍵が壊され、妖魔によってゲートが開けられてしまったのです。

地上への侵入を狙っていた妖魔たち。

異変にいち早く気づいた校長先生が、一人で妖魔たちの侵入を防いでいます。

腕が六本もあり、頭から牛のような角の生えた怪力の巨人や、俊敏に動き回りながら鋭い牙と爪を武器に襲いかかってくる狼男。それに背中に翼の生えた怖い顔の鬼も見えます。よく見ると石像のようです。


先生たちが駆けつけると校長先生は叫びました。


「妖魔たちを一掃して早くゲートを閉めるんだ!!」

後編へ続く

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