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〜 りっかと雪の結晶 〜

〜 りっかと雪の結晶 〜
〜 ろくの雪の結晶 〜
〜 りっかの雪の結晶 〜
〜 二人の結晶 〜

リボン作家の『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう
心を込めて作っています
こちらでは、リボンの物語を紹介しています
楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 りっかと雪の結晶 〜



空を見上げれば綿あめのような雲とキレイな青い空
遠く見渡せば雪化粧をした山たちが、仲良く肩を組むように並んでいる
風は少し冷たく、時に私をドキっとさせる
『今日はこれまでにしよう』
そう自分に言って今日の練習を終わりにした


帰り道に基本魔法の練習でもしながら帰ろうと、手をかざした
『待って!炎は熱いから風にしよ?』
呪文を唱え始めた瞬間、突然後ろから聞き慣れた声が頭の上から降ってきた
『りっかは勉強熱心だな♪』
『あれ?今年は早い帰省ね!・・・ん?ロク背伸びた?』

春に遠い国へ珍しいもの探しと、この国の技法を持って旅に出る
そして、冬になると珍しいものや新しい文化を国のみんなに教えに帰って来る
また春にはこの国の技術を持って遠い国へ伝えに行ってしまう幼馴染の『ロク』
この国の魔法は他の国と違ってヒーリングが優れているらしく、ロクはその技術を教える代わりにお金や文化(新しい魔法)をもらっている
とてもよい仕事なのだが旅は危険もつきまとう、簡単に言えば冒険者+商人のような仕事をしているのである


『なぁ、りっか?面白い魔法を覚えてきたんだけど聞きたい?』
『なに!?新しい魔法!!?教えて!!』
『そんなキラキラした目で俺をみるなよ。あはは。本当りっかは勉強熱心だな』
そう言いながら、りっかの頭をポンポンと撫でた


ロクから教えてもらった魔法は、とても便利なものだった
今、目の前にある物質を、自分の思い描いた物に変えるという、聞いた感じではシンプルな魔法
例えば簡単なものだと、りんご、はちみつ、黒砂糖、レモン、お皿を置く
『りんごのハチミツ漬けを作りたい』のだ
出来上がりを思い描いて呪文を唱える
すると、あら不思議『りんごのハチミツ漬け』が出来上がる
お店に出てくるような料理が美味しそうに輝いている・・・
というように、魔法で料理や作りたい物を作ってしまういう便利な魔法だった

しかし、聞く分には簡単なのだが、これはめちゃくちゃ難しい超難関で高度な魔法なのだ
分量や仕上がりのイメージをしっかり持っていないと、とてもじゃないが食べ物と言えるようなものは作れない・・・

『ねぇ!?ロク??これ本当に出来るの?!どこで教えてもらったのこれ?!』
『そんな顔するなよ。わはは。俺だって読んで覚えただけなんだから実践するのは、今が初めてなんだ♪』
『・・・え?読んだ?なに?教わったんじゃないの?』
『実はな、森で道に迷った時に、たまたま入った洞窟があってだな?』
そう言ってロクは、突然真面目な顔をしながら話し始めた
『洞窟を抜けたら目の前にポツンと一軒だけ家があったんだよ・・・家に入ると見たことのない魔法書がたくさん置いてあったから俺は夢中で本を読み漁った。だけど、俺が本を読み終えたら突然、家が火に囲まれて逃げようとしたんだが気を失ってしまって・・・もう死ぬんだと思ったよ。でも不思議な事に気が付いたら、探していた道にいたんだ・・たぶん・・・あれは古代魔法書だったから俺は呼ばれたんだと思う』
ロクは少し怯えた表情を浮かべながら空を仰いだ
『そんな事があったのね。ロク・・・無事で良かった。ロクがいなくなっちゃったら私・・・』
うっすら涙目になった私の頬をロクは軽くひっぱった
『ばーか。俺はそんな弱くないよ、ちょっと話盛っただけだ!ちゃんと逃げ出したよ。自分でな!はは。心配してくれてありがとうな!!』
『ムッ!!心配なんかしてないわよ!!もうっ!絶対心配なんてしてないもん!さっ!!だいたいやり方は分かったわ!あとは実践よ♪』
私は勢いよくクルっと周り、ロクに背中を向けた
そして、りんごのハチミツ漬けの魔法を練習を夜遅くまでしたのだった

しんしんと降る雪は、辺りの静けさをより美しく、どこか切ないメロディーを奏でるように降り続けた
目の前は真っ白
遠く目で見える場所は、全て白く飲みこまれていた
この国の冬は早く短い
だからロクといれる時間は余計に早くて短く感じる
もっとゆっくりでいいのに・・・
ふと、いつもと違う感情で雪を見つめる自分に気が付いてしまった・・・


すっかり雪も溶け、春はもう目前だ
春になると旅に出るロクなのだが、どういうわけかのんびり支度をしていた
私はその隣で、一緒に準備を手伝っている

『もうすぐ出発?今年は少しのんびりね?』
『そうか?・・・まぁ、春の風になってきたしな、1週間後くらいには出るかな』
『・・・私も行こうかな』
『は?何言ってんだよ!俺は戦闘魔法も習得してるけど、りっかは治癒魔法だけだろ?そりゃ、国一番のヒーリング魔法が使えてみんなにも慕われて優秀なりっかなら旅先でも自慢だけど・・・モンスターもたくさんいるし危ないとこもあるし!それに・・・』
荷物を詰め込んでいたロクは勢いよく立ち上がり、慌てながら身振り手振りで必死に、りっかに向かって旅の怖さを説明しだした
『くすくす。分かってるよ。そんな必死にダメって言わなくても。ははは。・・・でもね、私も世界を自分の目で見たいし、自分の力で歩きたいの』
『りっか・・・でも・・・ほら』
『大丈夫、今は行けない。私は、足手まといなの分かってる。だからこの1年間でヒーリングと攻撃魔法の腕をもっと磨くわ♪ロクが瀕死になってもすぐに助けられるようにね。ふふ』
りっかは、ロクの荷物をベッドに置いた
部屋にある大きく開いた窓の方へ移り、そこからそよぐ春の風を気持ちよさそうに受け入れている
いつもの冗談を言っているりっかの顔とは違い、瞳の奥の決意が見え隠れする真剣な表情になっていた
その様子を見ていたロクは意を決したように、顔を真っ赤にさせながら、りっか隣に優しく、でも男らしく寄り添った
『・・・お、おぉ!!分かったよ!この1年どこまで腕を上げれるか俺楽しみにしてるよ!・・・だから・・・次、帰ってくる時は覚悟しとけよ!?お・・・おれ・・・俺がっ!!俺が連れてってやるよ!!りっか!俺についてこい!!』
『ふふ。言ったね?・・・覚悟しとくのはロクだよ!はは。』
りっかがロクの目をしっかりと見つめながら頬を赤らめて答えた
そのまま二人は言葉を交わすことなく、しばらく気の済むまで優しい顔で笑い合っていた


いよいよ旅立ちの日がやってきた
りっかは、まだ夜が明けきる前だというのに、溢れんばかりの笑顔でロクの家に向かって走っていた
ちょうど、りっかとロクの家の真ん中くらいにあたるであろう小高い丘にロクは1人座っていた
りっかは、丘で座っているロクを見つけ急いで登っていった

『ロク?おはよ!』
『・・・ん?・・・りっか、おはよ!』
『どうしたの?旅に出るの寂しくなっちゃった?ふふふ』
『・・・寂しくないって言ったら嘘になるけど、ちょっとな』
『珍しいね・・・ねぇ?ロク!みて?これ!!今朝やっと出来たの!!』
そういって差し出したのは、真っ白のリボンだった
『え?!なんでそれ?ん??あれ!?・・・持ってる・・・』
そう言ってポケットから出したのは、同じ形をした青いリボンだった
『へ?なに??ロクそれは??』
『ほら、こないだの魔法ずっと練習してたんだ。俺も今朝出来たばっかりで・・・りっかに似合うリボンだろ?雪の結晶で作ったんだ。りっかに・・・りっかに何か持ってて欲しくて』
『ロク・・・私に?ありがとう・・・ぐすっ』
『りっか?泣いてんの?はは。何か泣き虫になったな、お前は。ははは』
『泣いてないよ!!ぐすっ・・・。いや、そうじゃなくて?何で私と同じもの持ってんの?』
『うーん?それは、分からんがこれは雪の結晶を形にしたものなんだけど・・・それも?』
『うん・・・ロクにね、この国の雪を持ってて欲しくて・・・形にしたくてものすごく練習したんだ』
『同じもの作ってたなんて、同じ気持ちだったのか?はは。不思議だな』
『ねぇ?私たち最高位の古代魔法を会得した?』
『そうだな・・・ちょっともっかいやってみる?』
ロクは持っていたリボンに、あの魔法の呪文を唱え始めた
そして私も同じように呪文を唱えた

二人の手の上には、三色のリボンが出来上がっていた
真っ白、青、薄い青と濃い青の入ったもの
『これってさ?すごくない?』
『多分、古代魔法の1つだと思うから俺たちすげーと思う』
『ロク・・・私ね?魔法頑張るから』
『うん。来年・・・来年は一緒に旅に出ような』
『一緒に行く!だから・・・だから、ちゃんと帰って来てね?これ持って・・・この国の事思い出して、ちゃんと帰ってきてね?危ないとこ行って死んだかもって思わないでね?!・・・ついでに私も思い出して・・・』
『あぁ。大丈夫!死なないし、ちゃんと帰ってくる。りっか・・・じゃあ、これと交換な?俺が帰ってくるまで持ってて?魔法サボらないように御守り!ははは』
『サボらないわよ!大丈夫!来年までには、この古代魔法も、もっと完璧にしてみせるから♪』
『それは楽しみだ・・・じゃあ、俺はそろそろ行くとするよ』
『みんなに挨拶は?』
『昨日、散々どんちゃん騒ぎしたし、しんみりするのも嫌だからさ・・・いってくるよ』
『うん・・・ロク、いってらっしゃい』
『いってきます』
いつもと違う『いってきます』を口にすると、ロクは軽く私を抱きしめた

薄く太陽の光が見え始めた頃
まだ夜明けのひんやりした朝
旅立つロクがいつもより大きく見えた

大きく手を振って背中で別れを告げるロクを私はいつもと違う気持ちで見送っていた
来年、一緒に行こう
そう言ってくれたロクの気持ちに応えるよう、私は今日からもっともっと腕を磨く
ロクとこれからずっと一緒にいられるように



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