今年の冬は多くの社長に会って、会社のこと、社員のことなどいろいろな話を聞いてきた。インタビューで人材のことを尋ねると、どの社長も「やっぱり素直な人が一番!」との答え。ほぼ100%どの社長も同じ答えだった。さらに、私は代表に尋ねた。 「素直ってそんなに重要なことですか?」 「そりゃそうだ。素直な人ってなかなかいないからね」 そもそも私が素直ではなく、見栄を張ることはよくある。その傾向は年齢とともに増える気がしている。周りを見渡しても、素直な人がなかなか居ないのも頷ける。素直
日照りの続く8月上旬、ミイラの棺を見に行った。 棺は一つひとつ大きさが異なり、内装も独特で凝られている。紀元前3000年、つまり5000年前のもの。当然、テクノロジーは発達していない時代なので、棺を作るには多くの時間が必要だっただろう。 本物の棺を目の前に、私の腰は抜けなかった。時代や境遇が違いすぎた。「死」に対して実感が湧かないのも理由の一つだろう。棺は他人事でしかない。 現代、全ての情報に全力で向き合っていられない。私はいつしか、どの情報に対しても無関心さを抱くよう
去年の秋に、柿のジャムを作った。思い立ったが吉日、さっそく退勤後に、私は柿を3つ買って帰った。 柿に『柿助・柿右衛門・柿五郎』と名付け、机の上に並べて3日。痛んだ柿を水・砂糖と一緒に鍋に投入。あとは柿がじゅくじゅくになるのを待つ。音楽やラジオを聴きながらゆったり過ごしてもいいし、実家の親に電話をしてもいい。少し寝ても、お菓子を食べながらワルツを踊ってもいい。これぞ贅沢な時間の使い道である。 柿全体にとろみがついたらレモン汁を入れる。ぐつぐつと煮立ったら、さらに2分煮て
フレンチのフルコースを食べたことがあるだろうか。私は先日、先輩の送別会で初めてそれを食べた。私にとってフレンチは、シルクのような存在。お金持ちが通うイメージだ。 ヨーロピアンな椅子にテーブル。知らない単語が並ぶメニュー表。すべてが新鮮で、フランスに迷い込んだ気分。フランスでは水をワイングラスに注ぐのか。そんなことを考えながらフランスパンをおかわりして、さっそく満腹になる。 料理がやってきて、最初の一個を一口。 「おおっ、これはどこかで経験のある味わい…。そうだ、プールだ
友達の定義は人それぞれだが、私の場合は、プライベートで関わる人たちを区別したくないので基本「友達」と呼んでいる。 知り合いはみんな「時々会ってお話をする相手」と言い換えても良いくらいだ。 それでも友達と呼びたい、ちょっとした理由がある。 私はめんどくさい性分で、長い時だと3~4時間、とりとめのない話に友達を付き合わせる。 「どうして肛門周りの肉塊は「おしり」なの?」 「人間に飼育される動物って幸せなの?」 当然、答えは出ない。 それなのに、ほとんどの人は嫌な顔せず聞いて
誰でも、一度は思ったことがあると思う。 「自分には何か才能があるんじゃないか」と。 私も思っていた。平凡と言われた。 昔から褒められて育ってきた。 稚拙な絵も文も、周りから「いい子いい子」されてきた。 だから、高校生までは「自分は才能がある」と思っていた。 大学は美大に入学し、文芸学科を専攻。他学科の友達も出来た。 みんなの作品を見て、圧倒と絶望を何度したか分からない。 「天才って、こういうことか」と思ったことが、たったの2年間で数知れない。 「自分には才能が無いんだろう
地震・雷・火事・親父。 怖いものの代表として挙げられる、有名なことわざだ。 私の場合はというと、地震・雷・火事・電話。 電話が怖い。いつまで経っても恐ろしい。 暇な夜は電話の発明者をちょっと妬んでしまうほど、電話が苦手である。 電話は「声」だけで完結してしまうところが、便利で、そして不便だ。 会話は、表情やジェスチャーも含めて成り立つもの。 「声だけでうまく伝わるか」と、ドキドキしてしまう。 仕事となると、なおさらだ。 身近でも、LINEやメールは平気だけれど声だけのコミ
入社2日目、転入届を取りに歩いていた時のことだ。 その日は、区役所がとても混んでいた。 上司より「申請が通るまで外を見てきていいよ」と言っていただいたので、お言葉に甘えて札幌の街中を散策した。 まだ春先で少し寒くて、とっても晴れており、外の音がやたらと鮮明に鳴っていたのを覚えている。 その時「天気と音って関係があるかもなあ」と思った。 この予感は当たっているかもしれない!と思った私は、耳をすませて歩いた。 「おお、音が事細かに聞こえる」 「天気が良く暖かいと、耳が音を拾
4月から、環境がガラリと変わった。 もともとは旭川で、カフェの店員をしていた。 仕事が無い時は昼寝をしながら過ごした。 お客さんとお話しするのが楽しくて、昼寝も快適で幸せで、一生このままでもいいなと思ったことが何度もある。 そんな矢先に、カフェの閉店が決まってしまった。 これからどうしようかと考えているうちに、なんやかんやと時が流れて札幌に引っ越した。 そして今、縁あって、デスクでこの文章を書いている。 人生はなにが起きるかわからない。 一人の生活も3か月が経過した。
オノマトペをご存知だろうか。 「ふわふわ」や「もちもち」、「トゲトゲ」「うるうる」のように、色んな動きや状態を音で表したものだ。 このオノマトペ、あわよくばペットにしたいくらい可愛い。 入社して間もない頃、練習がてらにキャッチコピーを考えた。 なんの知識もないペーペーの私は、「語感が好きだから」という理由でオノマトペを用いることにした。 書き上げたキャッチコピーは会社のゴミ箱に貼り付ける予定だったので、「メラメラ、火曜日、金曜日。」というように、ゴミの種類をオノマトペで
絵画に吸い込まれそうな人だった。 4月下旬、「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」が開催されている美術館へ行った。館内はたくさんの人、人、人。 もちろん、お目当てはフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」だ。描かれていた天使が、何者かによって消されていたらしい。目玉作品は大トリなので、楽しみにしながら他の作品を眺めた。 歩みを進めながら、とある絵画の前で立ち止まっているおじさんが気になっていた。 彼の容姿や佇まいは、どこか俳優の窪塚洋介に似ており、人の流れに流されず、せき止
思考の飛躍が癖かもしれない。 学生時代からその癖が止まらない。 読み返すと「ウギャー」と叫びながら全身を掻き毟りたい衝動に駆られるような文章を書くことが多かった。 ゼミでの課題のタイトルを「微生物の個体がフライアウェイ」にした時は、ゼミ生全員の前で「意味わからん!」と指摘された。 だから、仕事でタイトルを書くことはとても難しく、先日は3つのタイトルを決めるために丸1日費やした。 ジャスミン茶の話なのに「気まぐれ春のササニシキ」しか浮かばなかったのだ。 年齢とともに感覚が変わ
上司と一緒にお昼ごはんを食べたい。理由は3つある。 当然、お金が浮く。 私はこの春、地方から単身で札幌に飛び出してきた身で、常に金欠状態。お金を浮かせたい時は上司と食事に行くことに尽きる。 次に、新しいお店と出会える。 上司は札幌暮らしがとても長く、あらゆるお店を知っている。この前は二つ星レストラン出身のシェフが運営するお店で、おかわりしたいくらい絶品のオムライスをご馳走になった。上司と食事に行くことは、食の世界を広げるチャンス。またあのオムライスを食べるためなら、ボ
ジャスミン茶が飲めるようになった。学生時代は香水のような風味に耐えられなかったのに。 そんな私の転機は、取引先のAさんが会社を訪れた日のこと。 その日は暑く、飲み物は冷たい方がいいと思って冷蔵庫を見ると、ジャスミン茶しかなかった。 自分が苦手なように、Aさんもジャスミン茶が苦手かもしれない。「どうかAさんがジャスミン茶好きでありますように」と祈りながら、ジャスミン茶を出した。 しばらくしてから、「ジャスミン茶ってこんなに美味しかったんですか」という声が。 どうやらAさん
運がいいだけの人や、運が悪いだけの人はいない。 友達のNちゃんは人間関係に恵まれている。 Nちゃんは一見するとごく普通。けれど他の人とは少し違うのだ。 高校の自己紹介で「将来の夢はスーパーマン」と自己紹介で言うなど、思いもよらない発想をする。 Nちゃんはユーモアと度胸まで兼ね備えていた。 自分の気持ちを面白く発信できるNちゃんだから、たくさんの人が集まって来る。 それが結果として、Nちゃんの運を上げているのかもしれない。 けれど、Nちゃんはアイドル運には恵まれない。彼
ごはんに困らない時代だけど、食事を自由に選べることは、食べ物を粗末に扱っていい理由にはならないと思う。 この前の新人研修でお弁当が配られた。幕の内弁当2つ分くらいのボリュームで、おかずなんて10種類以上入ってた。 ほとんどオードブルみたいな感じで、いろんな味をいっぺんに楽しめる、バラエティ要素たっぷりのお弁当。こんなに豪華なお弁当を用意してくれるなんて、研修主催社ったらもう太っ腹。 朝ごはんを食べてこなかったわたしは、空腹も限界でものの数分で完食。早々に空箱を捨てにその