まっしろなようです
おじいちゃんになっても君を愛すお!
来世も君のこと忘れないお!
まっしろなようです
( ^ω^)「……お、」
「…ーン、……」
誰かの声がする。
誰かを呼んでいる。
誰が?誰を?
……ここは?
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン…ブーンってば!」
(;^ω^)「んおっ!」
急に視界が開ける。
肩を揺らされ、靄のようにぼやけた意識がどこかへ。
代わりにむくれた女性が目の前に現れたのでびっくりした。
(;^ω^)「ごめん、ボーっとしてたお…」
ξ゚⊿゚)ξ「もー、ずっと呼んでたのに。最近ボーッとしてること多いけど疲れてる?」
( ^ω^)「よくわからないお…」
彼女の言う通り、最近ずっとこの調子だ。
季節の変わり目だとか、やることがたくさんあるからだとか、理由は色々あるけど、果たしてどうなんだろう。
ξ゚⊿゚)ξ「疲れてるなら休んでも大丈夫よ」
( ^ω^)「いや、大丈夫だおー……それよりどうかしたのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうそう。ね、タキシード、白とシルバーどっちが良い?」
( ^ω^)「おー……僕のはどれでもいいおー」
ξ゚⊿゚)ξ「良くないわよ、大事よ!やっぱりドレスに合わせて白がいいかな…でもシルバーも捨てがたいのよね…」
( ^ω^)「……ツンちゃん、あのね、大事なことがあるんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なに?」
(;^ω^)「色がどうとかよりもサイズの有無…!!」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ#゚⊿゚)ξ「減!!量!!!」
(;^ω^)「おーん、ツンちゃんの料理が美味しいからつい食べ過ぎちゃうんだお!こないだのアレ…アレなんてすっごく美味しくて…あれ?えっと、アレだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「もー……いい加減なんだから……」
ツンは呆れたように溜息を一つ吐いて、それでもなんだかんだ言いながら許してくれる。優しい、愛しい、可愛らしい。
( ^ω^)「この度晴れてめでたく、この可愛らしい女性、ツンと結婚することになりましたお!」
ξ゚⊿゚)ξ「急に誰に言ってんの…」
( ^ω^)「全世界に発表したくって…」
桜の花びら舞う季節。僕の気持ちも春めかしかった。
大大大好きなツンと結婚式を挙げる。結婚する。夫婦になる。
なんて素敵な響きなんだろう。全ての物が、輝いて見えた。
記念日と同じ日にしたいからとまだ籍は入れてないけど、こうしてせっせと結婚式の準備に明け暮れているのだ。
( ^ω^)「結婚式って決めることたくさんあるおね…」
ξ゚⊿゚)ξ「そうよー。招待客リストは作ってくれた?」
(;^ω^)「マダデス……」
ツンは結婚式に夢があるみたいで、とても張り切っていた。
僕はというと、やることの多さに絶望してる。
コース料理みたいに決まってあるものをポンポン進めていくわけじゃなくて、材料はどこの何にするか、どんな形のものをどれくらい出すかとか、一つ一つを慎重に決める必要がある。
最初のうちは楽しかった僕も、だんだんと疲労してきてしまっていた。披露宴の準備で疲労えーんって、やかましいわ。
誰を招待するか、そのリストも呼ぶ友達が少ないのだからさっさと用意すればいいのだけど、今ツンに言われて思い出したくらいなのでかけらも作っていなかった。
手のひらと手のひらを合わせてゴメンネのポーズをする僕に、ツンはまた、小さくため息をつく。
ξ゚⊿゚)ξ「早く用意してね。じゃあムービー用のアルバムは用意した?」
( ^ω^)「それはあるお!」
やっと誇れることがあったと喜ぶ。アルバムは実家に帰省した時、部屋をかき回して見つけてきた。重たいアルバムをばっと開いて見せてみる。
(*^ω^)「見て見て、昔の可愛いブーンを!」
ξ゚⊿゚)ξ「あら本当、可愛い。これいくつ?」
( ^ω^)「えっとね、小学生だお。でこれが中学生、高校生…」
( ^ω^)「懐かしいおー」
かーちゃんは僕にはそんな性格を受け継いでくれなかったけど几帳面な性格だったので、わかりやすく写真をファイリングしてくれていた。
懐かしい、僕のメモリーズ。
反抗期らしい反抗期もなかった僕は、会社員になって家を出るまでたくさんの写真を撮られてきた。
ξ゚⊿゚)ξ「中学生からあんまり変わってないわね…ん?高校生のブーン…これ、ご実家じゃないところに住んでる?」
( ^ω^)「そうだお!実家から高校が遠かったから、おじいちゃん家に下宿してたんだお!」
( ^ω^)「それでおじいちゃんの話し方がうつっちゃって今でも「〜だお」って言っちゃうんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだったんだ…生まれつきだと思ってたわ」
( ^ω^)「それで大学に行って…ブーンってあだ名は大学の友だちがつけてくれたんだお」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、ドクオくんでしょ?酔って「ブーン!」って飛行機の真似してたからブーンになったって前話してくれたよね」
( ^ω^)「よく覚えてるおね!」
懐かしい。ドクオは結婚式呼びたいな。
おじいちゃんは大学の時に亡くなってしまったけど大好きだった。生きてたら呼びたかったな。
…いけないいけない、湿っぽくなってしまう。
( ^ω^)「ツンの写真も見せてほしいおー!」
ξ゚⊿゚)ξ「私のはスマホに入ってて…あ、ねえブーンここ覚えてる?」
ツンの細くて綺麗な指がスマホ画面を滑らかに移動している。
ある画像をタップしてこちらに見せてきた。
大きな遊具のある公園だ。
(*^ω^)「覚えてるお!僕たちが初めて会った場所だお!」
ξ゚⊿゚)ξ「そう…懐かしいわ」
(*^ω^)「僕、絶対あの時のことは忘れないお。だって女神に出会ったと思ったんだから」
ξ゚⊿゚)ξ「……そんなロマンチックな出だしじゃなかったじゃない」
(;^ω^)「そんなことないお!」
ξ゚⊿゚)ξ「だって第一声が『おねーさん何で泣いてるんですかお?お腹すいてるんですかお?』って…お腹すいて泣いたことないわよ」
(;^ω^)「僕はお腹空くと悲しくて泣いちゃうお……」
ツンとの出会いは衝撃的だった。
後に聞いた話、あの時のツンは前の彼氏に手ひどく振られた直後だったらしい。
ポロポロ流れ落ちる涙があまりにも綺麗で、泣いてる人がこんなに美しく見えるものなのかと驚いた。
しばし見惚れてしまい、ハッとしてから前述の台詞を投げかけたところ、ツンは少し呆けたあと笑ってくれた。
その姿が本当に本当に綺麗で、あれほど心臓がうるさかった日はない。
僕はきっとずっと忘れない。
( ^ω^)「…あいてっ…」
ξ゚⊿゚)ξ「どうしたの?」
(;^ω^)「最近なんか頭痛いんだお…」
ξ゚⊿゚)ξ「えー?風邪かな…念のため病院行きなね?」
( ^ω^)「おー…」
それから式で流す写真を選別した。
どれもこれも良い写真で、きゃっきゃと選ぶのが楽しかった。
思ったより時間がかかってしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「じゃあ招待客リスト、用意お願いねー」
( ^ω^)ノシ「うんだお!また連絡するおー!」
ツンとは式が終わったら新居に住む予定。
というのも式の準備にバタバタして引越しする余裕がなかったから。
なのでまだ別々の家に帰る。
( ^ω^)(早く同じ家に住んで、同じ家に帰るようになりたいおー)
それももうすぐだなと思うと、顔がニヤけるのを止められなかった。好きだから仕方ない。
.
.
最近暑い日が続く。夕方になって日が沈んだというのにまだまだ暑い。
( ^ω^)「シャワーを浴びてピカピカのブーン!」
冷房が効いた部屋に戻る。色々やる事がある。アイスを食べながら冷たいコーラを飲んでスイカを食べよう。
部屋のドアを開けて、違和感を覚える。
( ^ω^)「あれ?何でアルバムが出てるんだお…」
部屋の様子が何かおかしい気がする。
出してないはずの物が出ている。
アルバムを本棚にしまう。
前にテレビで見たな、こういう状況。
部屋の配置が違う気がしたと思ったらベッドの下にストーカー女がいるとか、クローゼットの中に強盗がいるとか…。
ゾワっと鳥肌が立って押し入れを開けた。当たり前だが誰もいない。
そしてこの部屋はベッドじゃなくて布団だ。
他におかしなところはなかった。
(;^ω^)「怖いのダメなのに見ちゃうからよくないおね、気のせい気のせいだお」
(;^ω^)「……もし人が入ってたら……」
ストーカー系でないなら、強盗系は……?
( ^ω^)「まーそんなわけはないおね〜!」
一応、財布を見てみる。
( ^ω^)「減っ…てる…?」
( ^ω^)「え?いや、え?本当に…?」
正確な金額はわからない。
だけど一昨日お金を少しだけおろした。昨日はどこにも行っていない。
誰も来てない。
数千円、足りない気がする。
( ^ω^)「……最近、なんか変だお」
( ^ω^)「こないだも…いつのまにかアイスが消えてたり…」
( ^ω^)「着ようと思ってた服がなかったり…」
ぼんやりしてしまう。
物が無くなることが多い。些細な物だけれど。
誰かに取られている?誰に?誰が?
( ^ω^)「ツンに言ったら心配しちゃうおね…」
(;^ω^)「……」
誰かに相談しようにも、誰に?
誰もいない。
(;^ω^)「…頭も痛い…」
結婚式を挙げる前に何かあってもいけないので、病院に行った方が良いのかもしれない。
(;^ω^)「行くかお……病院」
善は急げという事で早速次の日に出向くことにした。
暑い中をあまり移動したくないので、家から近い病院を探した。
古くからやっている病院のようで、建物自体がだいぶボロボロだった。
看板は塗装が剥げているし壁は亀裂が走りまくっている。
(;^ω^)「…大丈夫かお…」
近くなかったらおそらく選ばないような病院だった。
一抹の不安はあったけど、何も問題はないことがわかればそれで良い。
早く済ませてしまおう。
ギッ
手押しの扉を開くと、病院特有の消毒液の匂いがぶわりと纏わりついてくる。病院は苦手だ。特にこの匂い。
('、`*川「あら。今日ご予約されてたかしら?」
受付のおばちゃんがこちらの顔を見るなりそう言う。
しまった、予約がいるのか。
下調べもせずに来てしまった。
(;^ω^)「す、すみませんお……予約し忘れちゃって……」
('、`*川「ねぇ。そうよねぇ。今日は予約なかったと思ったのよね。でも今日は他のお客さんいないから大丈夫よ、診察券出してね」
(;^ω^)「えっ、あの…診察券…」
診察券も何もこの病院に来るのは初めてなので持っていない。
初対面でタメ口だし、だいぶ雑なおばちゃんだなぁ。
地域密着型とでもいうのか、なぁなぁの距離感だ。
('、`*川「あら、忘れちゃったかしら?」
(;^ω^)「いや……」
('、`*川「じゃあ新しいの作っておくから、かけて待っててね」
(;^ω^)「はいお……」
正直病院選びを失敗したかもしれない。
何でこんな病院にしたんだっけ?ちゃんと口コミとか見ないとダメだなぁ。
古いベンチは動くたびに動物の鳴き声みたいな音を立てた。
早く帰ってあれ作らなきゃ。
えっと、なんだっけ……あ、招待客リストだ。
('、`*川「内藤さん、診察室入ってください」
( ^ω^)「はい」
あれ、カルテとか書かなくていいのかな。
まぁ中で先生に聞かれるのかもしれない。
(-@∀@)「こんにちは、内藤さん」
大きな眼鏡で表情のわからない先生。
40代くらいだろうか。落ち着いた声の先生。
ところで僕はカルテを書いてないのに、どうして名前を知ってるんだろう。
保険証……渡したっけ?
( ^ω^)「こんにちはですお、先生」
(-@∀@)「今日はご家族の方と来てくれた?」
(;^ω^)「え?いや……1人ですお……実家は飛行機の距離ですし」
(-@∀@)「……あー」
先生はなるほどと小さい声で呟いて何かメモを走り書きしていた。
受付のおばちゃんといい先生といい、なんか変な病院だ。
親同伴で病院になんて、もう10年以上も行ってない。
こんないい歳して流石に病院が怖いなんてことはない。
(-@∀@)「えっとね、内藤さん。次はご家族の方と来てもらえるかな?」
(;^ω^)「な、なんでですかお?診察も何もしてないのにそんな……重病みたいな」
(-@∀@)「診察はこの前来た時にしたよ」
(;^ω^)「……僕はこの病院に来るの初めてですお……」
(-@∀@)「内藤さんね、あなたこの病院に来たの」
(-@∀@)「3回目ですよ」
( ^ω^)
( ^ω^)
.
──嫌だお
.
( ^ω^)「…ぉ、」
( ^ω^)「あー……またボーっとしてたお……」
( ^ω^)「何で玄関にいるんだっけ」
( ^ω^)「あっ、そうだお。病院探さなきゃ……」
( ^ω^)「……病院?どこか悪いんだっけ?」
玄関だというのにじんわり暑い。そりゃそうだ、もう8月で夏真っ盛り。
僕は暑いのが嫌いだ。片足は靴を履いていたけど、もう片方は履いていなかった。今から出かけるところだったんだっけ、帰ってきたんだっけ?
( ^ω^)「……どこか出掛ける……のは今度でいいかお、暑いし…招待客リスト作らなきゃだし」
靴を脱いで部屋に入った。
暑さでボーッとしてしまってるのかもしれない。
みずをのもう。
そうすれば、大丈夫……。
そのまま眠ってしまった。
.
.
──嫌だお、嫌だ
.
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン?」
( ^ω^)「あれ…おはようだおツン……今日約束してたっけ?」
ξ゚⊿゚)ξ「何言ってんのもう、すぐ忘れちゃうんだから。早く用意してね」
( ^ω^)「用意?ああ、招待客リストならまだ…」
ξ゚⊿゚)ξ「招待客リスト?まだ寝ぼけてる?」
( ^ω^)「え?」
ξ゚⊿゚)ξ「……式は明日よ、寝坊助さん」
(;^ω^)「え……」
(;^ω^)「式は10月だお、ツン。まだまだ先…」
ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン?スマホ見て」
ツンに言われた通りスマホを見てみる。日付は10月22日。
なんで?さっきまで8月……いや、4月……だった?あれ?
春で…暑い夏が来てて…あれ???
( ^ω^)「なんで…」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーン?病院行った?」
( ^ω^)「病院?……なんだっけそれ?」
ξ゚⊿゚)ξ「頭痛いから病院行くって言ってたわ。数ヶ月前と…先週」
(;^ω^)「行った…のかもしれない、覚えてないお…」
(;^ω^)「なんかよくわからないけど、多分疲れてるだけだお」
(;^ω^)「ねえ、えっと……」
ξ゚⊿゚)ξ「……本当に、大丈夫?」
(;^ω^)「大丈夫……だお…そんな目で見ないでくれお」
ツンの目が怖かった。それより日付が進んでいることも怖かった。
招待客リスト、いつのまに作ったんだろう。
それより病院って?
あれ、招待客……って、何の招待?
( ^ω^)「……お…」
頭の中のものが消えていくような気がした。
何がなんだっけ、今はなんだっけ?
何を探していたんだっけ。
財布の中に行ったことない病院の診察券が2枚入ってた。
4月だったのが8月になって10月になった。
ボーッとする。記憶がチグハグになる。
今は、なんの話をしていたっけ?
.
.
──嫌だ、嫌だお
消えないで消えないで消えないで
僕の記憶、消えてなくならないで
持っていかないで頼むよ忘れたく無いことばかりなんだ
.
( ^ω^)「……どこだろうここ」
目を開けると見慣れない天井があった。
病院特有の消毒液の匂いがする。
( ^ω^)「病院……かな、何でいるんだっけ……うーん思い出せない、とりあえずお母さん探そう」
自分が病院に来る理由が全くわからなかった。思い当たる事が何も無い。きっとお母さんの付き添いか何かだと思う。
探さなきゃ、迷子になってしまう。
( ^ω^)「お母さん……」
広い病院だ。
なんだか身体が重たい気がする。
なんで病院にいるんだったか思い出せない。
角を曲がったところで大人たちがヒソヒソ何かを話していた。
よく聞こえない。大人ってなんであんな、聞こえそうで聞こえない声で話すのかな?
「ねぇ、式中に……でしょ?」
「若年健……」
「可哀想にね、新婦さんは……」
「何もわからないのかしら……」
可哀想、可哀想と言ってるくせに口元が笑っているような変な話し方だった。小難しい単語をしきりに発言していて、それだけで気が滅入りそうな話題だ。
( ^ω^)(よくわかんないけど大変な人もいるんだなぁ……)
何かの式中に倒れた人がこの病院にいるようだ。
病院とはそういう場所なので仕方ないけど、早く良くなると良いね。
( ^ω^)(……って人のことより自分のことだよね、お母さんどこだろう…)
他人のコショコショ話に耳を傾けている場合ではなかった。
早くお母さんを見つけて合流して家に帰りたい。
なんだかとても疲れてるんだ。すぐ疲れるなんて言うのは歳を取った証拠なんだってお父さんが言ってて、大人は大変だねって笑ったばかりなのに人のことが言えなくなってしまう。
「ぅ……」
( ^ω^)「?」
人の…泣き声?
小さく泣いてる声が聞こえた。
あの階段の上からかな。そうっと覗き込んで見た。
(;^ω^)「わ……!」
ξ;-;)ξ「う……ううっ……」
白い、真っ白いドレスを身に纏った女神。
……じゃなくて綺麗な女の人が泣いていた。
(;*^ω^)(すごい……すごく……綺麗……)
(;*^ω^)(なんでドレスの人がいるんだろ……っていうかあんなに泣いて……)
(;^ω^)「あ、あの!」
ξ;-;)ξ「!」
(;^ω^)「どうして泣いてるんですか?お、お腹すいてるんですか……?」
ξ;-;)ξ「……!!」
女の人はさらに大粒の涙を流し始めた。止め方がわからなくてアワアワしてしまう。
お腹が空いたのか、お腹が痛いのか。他の大人を呼んできた方がいいのだろうか。
ξ;-;)ξ「……………っ」
ξ;ー;)ξ「お腹……すいて泣いたりしないわ……」
女の人が笑ってみせた。
涙がキラキラ光って、本当に綺麗だった。
こんなに綺麗な人は見た事がなかった。唾をごくんと飲み込んで深呼吸をする。
(;^ω^)「そうなんですか?僕はお腹空くと悲しくて泣いちゃうので……」
ξ;-;)ξ「……うっ、ブーン……」
( ^ω^)「ブーン?」
ブーン?ブーンってなんだろう。
難しい言葉かな?
女の人がまた眉間に皺を寄せてぽろほと涙を流している。
ξ;-;)ξ「ブーン……じゃ、ない…わからないのね…」
(;^ω^)「?」
ξ;-;)ξ「……あなた、名前…」
(;^ω^)「え?僕はホライゾンです。内藤ホライゾン、10歳です」
ξ;-;)ξ「……そう、な の……」
(;^ω^)「お、お姉さんのお名前は?」
ξ;-;)ξ「……」
ξ;-;)ξ「私は…」
ξ;-;)ξ「内藤ツン……」
( ^ω^)「えー!同じ名字だ!何か、嬉しいですね」
( ^ω^)「僕、この名字好きなんです。おじいちゃんと一緒だから!」
ξ;-;)ξ「……」
ξ;-;)ξ「私もこの名字、好きなの。好きな人と同じなの」
( ^ω^)「僕、お母さん探してるんだけど、お姉さんも向こうに行きませんか?美味しいものとかあるかも」
ξ;-;)ξ「……うん、一緒にお母さん探してあげる」
(*^ω^)「いいの!?」
ξ;-;)ξ「…健やかなる時も、病める時も…って誓ったから」
( ^ω^)「?」
ξ;-;)ξ「行こう」
( ^ω^)「うん!」
.
頭の中が真っ白になっていく。
消える。
消えていく。
やめて、嫌だ。
嫌だ、嫌だお。
僕の記憶だ、僕の思い出だ。
消さないで。消えないでくれ。
白い。
真っ白になっていく。
あの人の着ているドレスみたいに真っ白だ。
あの人、あの人って?
えっと、なんだっけ?
誰だっけなんだっけ?
何か忘れてる気がする、思い出せない。
白いドレスの女の人が泣いてる。
いつかの誰かが何か言ってる。
『 来世も君を忘れないお! 』
消えていく、あの人のドレスみたいに、頭の中は真っ白になっていった。
終
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