アーティストになる
5年ほど前、中国系アメリカ人で、『ミスターウォン』と、私たちが呼んでいたアーティストの、水彩画のクラスをとった。当時、ミスターウォンは、90歳近くで、パンデミックの前の年に、なくなった。
私は、水曜日の夜の、モデルを水彩で描くクラスにいたのだが、ミスターウォンは、月1回20分のデモ(みんなの前で、モデルを描くのを見せる)をする以外、だいたい、座って、自分のスケッチブックにモデルを、筆ペンで描いているか、お気に入りの生徒と話してるだけ。私は、「先生、サボってる〜」と、一人で怒っていた。
それも、今は、良い思い出である。
人物画も、水彩画も、ほぼ初心者だった私が、ミスターウォンのクラスに、1年以上、時に怒りながらも、ずっといたのは、彼が水彩画のマスターで、こともなく美しい風景画など描くからであった。どうやったら、彼のように描けるようになるのか、知りたかった。
私が、「どう描いたら良いか」と聞くと、「自分の好きに描けば良い」と言われたことがあった。その後、何人か、別の水彩の先生の授業もとったが、どのように絵の具を使って描くかなど、教えられるものでもないと、今は思っている。多少の基本はあるが、あとは、自分で描いてみて発見するしかない。
ただ、鉛筆で下絵を描かないというのは、このミスターウォンのクラスで身についた。今は、このクラスの鉄則も、破ってる私であるが、そういう描き方で、描くときもある。
ところで、先日、モデルのスケッチに行ったら、ミスターウォンのクラスにいた若い男性が、モデルであった。当時から、彼は、学校にある画材屋やらで働いていたが、今年の9月から、モデルをやってるらしい。
彼は、前に話した時、漫画家になりたいと言っていた。パンデミックが開けて会ってみると、格段に絵が上手くなっている。多分、ここ4、5年、ずっと毎日数時間、練習してきたのではないか。努力家である。彼も、ミスターウォンのように、マスターになって行くのかもしれない。
彼を、描きながら、どんな世界が好きかといえば、色々あるけれど、努力が報われる世界かな、と思ったりした。
↓ 左手で描いたスケッチ。
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