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プールと男の子

あれはいつのことだっただろう
二人の男の子がプールで泳いでいた
屋外の広い競泳用のプール
真ん中が深くなっていて足は届かない

一人はとても泳ぐのが上手で楽しそうに泳いでいる
もう一人は上手く泳げない
そう、僕は泳ぎ方を知らなかった

手を動かしてみる
足が沈む
底を蹴って水面に上がろう、そう思って僕は足を下へ伸ばした
足は届かない
思ったより深いみたいだ
少し潜ってもまだ足は底に届かない
でも底を蹴らないと上がることもできないので思い切ってぼくは下へ沈み、
やっと届いた底を蹴って水中でジャンプした

パァーッと水面に顔を出して息継ぎをした
しかしホッとしたのもつかの間、また沈み始めてしまった
しょうがないので僕は潜っては底を蹴り、水面に顔を出すことを繰り返した

何度目の時だったか、上手く顔を水面に出すことができなかった
息継ぎがうまくできない
苦しい
そしてまた沈んで行く
やばい、そう思って無我夢中で底を蹴ろうとしていた時、誰かが僕をすくい上げた

サンタさんに似ている外国人の太ったおじいさんだ
助け出された僕はおじいさんに片脇をかかえられたまま、少し足をひきずって一緒に歩いた
ジャングルジムの横まで行った時、上からみんなが見ていた

一緒に泳いでいたもう一人はもう戻っていた
僕も室内に入った
その子の母親はなんだか心配そうに彼を見ていた
彼はへっちゃらそうだったが、座ったまま両手をめちゃくちゃにぐるぐる回している
あれ?あれ?泳ぎ方がわからなくなっちゃった
全然泳げなくなっちゃった
どうやるんだっけ?
ふざけているような感じでもあった
母親は複雑な表情でその子を見ていた


少し離れたところから見ていた私は、隣にいた息子に聞いた
「それでこの後はもう二度と泳げないんだっけ?」
「うん、そうだよ」
溺れている間に何があったのだろう
どうしてあちらの子が泳げなくなったのだろう

いつの間にかサンタさんのようなおじいさんは居なくなっていた

まだまだ未熟ですがサポートしていただけたら本当に嬉しいです。 より充実した内容を目指してがんばります!