見出し画像

インドネシアからの技能実習生に、鉾田市での暮らしを楽しんで欲しい【ほこたワガママLab/アプリ開発ストーリー#03】

茨城県鉾田市で取り組んでいる「ほこたワガママLab」。鉾田市出身の高校生・大学生・大学院生が”地元で暮らす人たちのワガママを叶えるアプリをつくる挑戦”を通じて、地域に関わり続ける仕組みをつくるプログラムです。

2ヶ月間の活動の成果を発表するために2023年3月14日に開催したWagamama Awards(ワガママ・アワード)にて、学生たちが発表したアプリをご紹介します。

▼Wagamama Awards全体をレポートした記事はこちら

今回ご紹介するチームは、自分が生まれ育った環境や、日々の課題意識にもとづいて「これに取り組みたい!」というテーマをはっきりと持っているメンバーたちがいたので2つのアプリをつくりました。

発表の内容をぜひご覧ください。

私たちのチームは高校生・大学生・大学院生の3人で構成されています。私たちは「外国人技能実習生」と「空き家」という2つのテーマで発表させていただきます。

ギリギリまでどちらかひとつでいくか、それともどちらも 掛け合わせて発表していくかを話し合ったんですけれどチームメイトのふたりが明確にテーマを持って参加されたので、せっかくなら両方をつくってしまおうということで2つ発表させていただきます。

昔から身近な存在だった、外国人技能実習生の困りごとを解決したい

僕が困りごとを解決したい人は、外国人技能実習生です。僕の家で両親や祖父母がいちご農家を営んでおり、インドネシアからいらっしゃった外国人技能実習生が働いています。

鉾田市は茨城県の中で3番目に在留外国人の割合が多く、人口の5%を超えいます。その背景は、鉾田市は野菜の産出額が日本一ということもあり、その農業を支えてくれているのが技能実習生の存在だと考えられます。

僕は時々、技能実習生の方の付き添いでスーパーへ行くことがあったり、近くに住んでいるので日常生活を見ていると、言語や文化の壁があることを感じます。

日常生活を送ること自体に課題を感じている技能実習生が多いのではと思い、せっかく縁があって鉾田市に来てくれた技能実習生たちに、地元の文化や自然を紹介して魅力を伝え、鉾田での生活を豊かに送ってほしいなと感じていました。

また、技能実習生の皆さんはみんなスマートフォンを持っていて、SNSをとてもよく使います。アプリをつくれば使ってもらえるのではないかと思いました。

インドネシアからの技能実習生のためのアプリ「Selamat datang di Kota Hokota」

僕の身近な技能実習生の皆さんは、インドネシアからいらっしゃってます。

皆さんをみていると、例えば茨城特有の茨城弁でのコミュニケーションがスムーズにいかなかったり、イスラム教でムスリムとしての食事の悩みだったり。自転車で道を走るうえで交通ルールがわからないなど、いろいろなシーンで困っている様子でした。

そんな課題を解決したいと思い、つくったアプリ「Selamat datang di Kota Hokota(ようこそ、ほこたへ)」の機能は主に4つです。

機能1:ハラルフードを提供するお店を伝える

1番上のボタン、こちらは「makanan halal(ハラル食品)」と書いてあります。

ハラルフードを手に入れられるお店や、ムスリムの食事ができる飲食店をGoogleマップにマッピングしたものを見ることができます。

機能2:日本のルールやマナーを伝える

次のボタンは「Taka krama dan aturan orang Jepang(日本のルールとマナー)」です。日本の食事などのマナーや交通のルールについてまとまっているサイトにアクセスできます。

なかなかこういう情報を得る機会がなく、また教えてもらえる機会もないように見えるので掲載してみました。

機能3:茨城弁の解説

3つ目のボタンは「dialek Ibaraki(茨城弁)」の解説です。 独特な茨城弁に、皆さんなかなか苦労している様子で。数はもっと増やしていきたいのですが、例えば1番上は「あっけ」について説明しています。

「Ibaraki」を押すと「あっけ」と言い、「Jepang」は標準語で「ありますか?」と言います。「Bahasa inggris」を押すと英語で「Do you have ?」と言います。

今は「だっぺ」と「あろう」を用意しています。地元に人たちと会話する時のサポートにつながればと思いのせました。

機能4:鉾田市の観光スポット

4つ目のボタンは「Tempat wisata di Hokota(鉾田の観光スポット)」です。僕がぜひ技能実習生の皆さんに行ってほしいところをまとめてスマホにアクセスできるようにしたものです。

Googleマップのマッピングして、下にインドネシア語で解説を入れています。

例えば、とっぷ・さんて大洋だったら鉾田市の温泉施設でプールがあるというのを解説しています。なかなかホームページでは伝わりにくいところだと感じているので、外国人技能実習生の方にも行っていただける機会となるのではないかと考えています。

他にも深作農園だったら、いちごやさつまいもメロンの直売所でもありながらカフェを営んでいることを説明していたり。鹿島灘海浜公園であれば鉾田市にある県立の海浜公園であるというということをインドネシア語で説明しています。

このアプリのポイントをまとめると、ムスリムのためのフードやスポットを伝えること、理解が難しい茨城弁のサポート、生活をする上での注意点、日本のルールや文化・宗教的なこと食事のルールを伝えることです。

また機能をアップデートしていきたいです。先ほど説明した部分はWeb Viewerを扱っているのですが、本来であればActivity StarterというMIT App Inventorの機能を使って、スマホに入っているブラウザにアクセスしてそこから自由に飛べるようにしたいです。

そうすることで履歴が残るかもしれないので、後の操作がスムーズになったり操作性を上げられると思います。

「Selamat datang di Kota Hokota」からつくりたい未来

今回のアプリは、鉾田市に来るインバウンドの観光客であったり、お客さんであったり、旅行・観光としてくるインドネシアの方へ観光案内所の役割となってハラルフードやマナー、観光を伝えられる存在になれるのんはないかと考えています。

今後は僕の家にいらっしゃる技能実習生の方々にさらにヒアリングをして、必要な項目を増やしてより実用性の高いものをしたいです。

さらに鉾田市にはインドネシアだけでなくたくさんの国から働きに来る方がいます。例えば、中国やタイからなど。大勢いるので他の言語や宗教に着目し改良を重ねていきたいと思います。

デザインは時間がなくてこだわれなかったので、アイコンやアプリ内のデザインをこだわりたいと思います。

いつか空き家を相続する子どもや孫世代の役に立ちたい

続いて、2つ目のアプリのご紹介です。私が今回、鉾田市にある課題のうち、注目したのが空き家です。

うちの親とかも、そろそろ家の相続の話をしていたり、実家の近くに空き家が多くなっていたり。いつか私も空き家について困る時がくるのかな、というのをリアルに感じています。

鉾田市で生まれ育った人は大学で東京出た後、そのまま東京で就職する方も多かったり。

大学へ行っていなくても鹿島市や茨城県外で働くような人が結構多いです。その結果、親も住んでないし子どもたちも戻ってこないという理由で空き家になるケースがあります。

鉾田市の空き家の件数を調べると、2013年時点で3410件、2018年で4550件と年々増えていっています。

手入れをされてない家はどんどん朽ちていってしまって、まちの景観を損なう原因にもなります。それはやっぱり鉾田市を活性化させるうえで見逃せない問題なんじゃないかと思います。

また大学で空き家について学ぶ機会もあったのですが、親の世代に家を建てた本人たちが年老いて、老人ホームに入ったりあるいは亡くなったりして家の所有者がいないことが日本全体の課題となっているのだと知りました。

ここで注目したのが、鉾田市の空き家バンクという制度です。

鉾田市が平成30年10月30日に開始したサービスで、空き家の所有者が空き家バンクにいろいろと書類を書いて、条件を満たした家が登録できます。

今16件目が出ているのですが、成立件数は今のところ15件。平成30年から15件で鉾田市の空き家は4450件とどんどん増えてるわけで全然追いついてない状態です。

でもこの空き家の制度って全国で行われていてすごく期待できるんじゃないかなと私は思っていて。実際に茨城県は自然も住みたい方がたくさんいらっしゃると思うのです。もう活かしていくしかないです。

空き家バンクの活用をサポートする

これが私がつくったアプリのトップページと、ブロック画面です。トップページは可愛らしく、ほこまる君をつけてみました。後ろの写真が鹿島灘海浜公園というところです。

ボタンは上から「空き家バンクとは」「用語説明」「空き家バンクに登録するには」「空き家バンクの現在」を置きました。

アプリの内容は、まず空き家バンクの説明と書類を書くために必要な専門用語の解説、そして空き家バンクに登録するにあたって、詳しい情報を掲載しています。

こちらが登録する資料なのですが、私自身が最初見たときにめんどくさいと思っちゃいました。なので記入例をつけて、少しでもわかりやすくなるように解説してみました。

このアプリのポイントは、用語と空き家バンクの登録方法について実際の例を出して自分でつくったところです。

最後は購入した利用者の方の声やその後の利用状況などを載せたかったのですが、プライバシーの関係もあってなかなか情報が入らなかったので載せられませんでした。

アプリのターゲットは、両親が他界してしまったり老人ホームに入ってしまった結果、自分は東京とか別の県にいて家に住んでない方。手をつけてないのに空き家があって壊すのにもお金がかかる、どうしたらいいんだろうっていう風に悩んでる方です。

他の住宅登録サイトのほうが、もしかしたら買い手は見つかるかもしれませんが、公共事業として鉾田市が支援してくれてる条件を満たせば、補助金ももらえて空き家を改修できたりします。そう考えると、活用したほうが良いのではと思いました。

本当はメルカリのようにフリーマーケット感覚で、家の売買をできたらなって思ったんですけど。やはり不動産の売買ってなると権利書とかややこしい話も多いことを知ったのと、技術力も足りず断念しました。

今回はただの空き家バンクの紹介、という形で終わっちゃったので今度は実際に空き家バンクのようなものを自分でつくりたいなと思いました。

私からの発表は以上です。

最後に、2つのアプリ企画制作をサポートしたメンバーからもコメントさせていただきます。

私はまちづくりに関する勉強を大学院までしてきたので、今回はお二人の強い気持ちにすごく動かされて、その気持ちをどうにか形にできないかなと思って微力ながらサポートさせていただきました。

実際に扱ったのは非常に大きな課題だったと思うんですけれど、身近に感じていたおふたりが深く向き合う機会に携われて、本当に良かったなって思います。

壮大な課題に対して、あきめない

発表、ありがとうございました。

先ほどご覧になっていただいたように、こちらのチームは外国人の技能実習生の方、さらに空き家という確かに非常に大きなテーマを扱っていました。

正直、僕ら大人たちは「壮大なテーマに行くね」って思っていました。それが経験を積んだ大人たちから見えた景色ですけど、このチームはやっぱり情熱を持って本当に何とかしたいんだという思いで、とにかくあきらめずに活動していました。

そして生まれた外国人技能実習の方たち向けのサービス。おそらくそんなに充実してないと思います。どこのエリアもですね。本当に感動しました。

さらに先ほどの空き家も、鉾田市では非常に空き家が多かったりするんですけど、やはりどんな大人に聞いても「いや、難しいよ」っていうくらいしか出てこないのが正直なところだと思います。

そこに若い視点で切り込んでってるってところに、僕は本当に可能性しか感じません。

自分の身近な人たちの幸せや、自分の地域がよくなる方法について徹底的に考え、それをかたちにするキッカケをつくることで、大きな課題も解決できるのではないかと本気で信じることができました。本当にありがとうございました。

▼ほこたワガママLabの活動レポートはこちら

主催:鉾田市まちづくり推進課
運営:ほこたワガママLab事務局(Modis株式会社 株式会社IRODORI)