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【漫画原作】『ボーイ・ミーツ・カッパ』【すこしふしぎ】

読切用の漫画原作です。
短編なのでさくっと読めます。
複製、自作発言、無断転載、許可なき作画はNGです。
(某所に応募したお話で、投稿にあたりちょっぴり書き直しました)

ジャンル

すこしふしぎ

あらすじ

 高校生の少年・京介(きょうすけ)は自宅近くの湖周辺でランニングをしている。休憩がてら立ち寄った公園でジュースを買うも、空き缶をあろうことかポイ捨てする。一部始終を見ていた湖の主・カッパ様は大激怒、京介をカッパにしてしまう。元に戻るには、湖に捨てられたゴミを全て拾わなければいけないそうで…。

本編

〇公園(春頃・早朝)
 遊具、ベンチ、自動販売機(その横にゴミ箱)があるごく普通の公園。
 自販機の前に人影。ランニングウェア、小さめのワンショルダーバッグ、耳にイヤホンを付けた京介。腰に手を当て、仁王立ちで缶ジュースを一気飲み。(なお、園内には京介一人)。
京介 「(ごく、ごく、ごく)…っぷはーっ!!! 走りの後の一杯は最高だぜぇ!!」
 スマホを見る。画面に〈4月*日(日)、6:30、晴れマーク〉。
京介 「今日は日曜だし、天気もイイ。このまま御諏訪湖おすわこ一周すっか!」
 自販機に背を向けたまま、空缶を肩越しに投げる京介。缶はゴミ箱に入らず、自販機から離れた植え込みに飛ぶ。カツン、と何かに当たる音。(京介はイヤホンを付けており、音には気付かない)。
???「イテッ!」
京介 「つかさぁ、いい加減、スマホで買える自販機にしてくんね?? 小銭持つのメンドイんだよ」
 何事も無く走り去る京介。
 植え込みの中に佇むカッパの石像。その足元に転がる空缶。

〇ジョギングロード
 湖の周り、整備されたジョギングとサイクリングロード。犬を連れて散歩する人や、自転車を走らせる人の姿がちらほら。ジョギングロードを軽快に走る京介。
京介 「はぁ、はぁ、はぁ」
 不意に立ち込める霧。周囲の人の姿が消え、電燈や街路樹の輪郭がぼやけていく。
京介 「霧? 今日は晴れるんじゃねぇのかよ。…うわっ!!!」
 突然、目の前に現れる人影。
 思いっきりぶつかる京介、ぼよよ~んとバウンドし尻餅をつく。
京介 「痛ってぇ…。…すんません、余所見してて…。!!?」
 しゃがんだまま、視線を上げる京介。驚きのあまり目を丸める。
 京介の前に立つ、ゆるキャラ風のカッパ。額に大きなたんこぶが出来ている。丸い目を吊り上げ、京介を睨む。
京介 「かっ…、カッパ…!? 何でこんなとこに。もしかして映画の撮影 ?」
 たんこぶを指さすカッパ。
カッパ「アキカン、イタカッタ。ポイステ、ダメ」
京介 「ポイ捨て? 知らないっすよ、そんなの」
カッパ「ウソ、イケナイ。ボク、オスワコノカミサマ。ゼンブオミトオシ。ワルイヒト、コラシメル」
 頭を下げるカッパ。京介の目の前にカッパのお皿。カッとお皿が輝く。
京介 「うわっ!?」
 顔を腕で隠す京介。そのまま眩しい光に包まれる。

 暫くした後。
 ベンチに仰向けになる人影(京介)。目を覚ます。
京介 「(はっ!)」
 視線の先には、青空と優雅に飛ぶ鳥。
京介 「(…夢か。走り疲れて寝ちまったんだな)」
 ふと周囲に目を向ける。興味深げに京介を見つめる人々。京介にスマホを向け写真を撮ったり、笑いながら話をしている。
京介 「(なんで俺の事撮んだよ。しかもニヤニヤ笑って…)」
 離れた場所に親子連れ。京介を指さす女児。
女児 「うわぁ! カッパしゃんだぁ!」
京介 「(カッパ…?)」
 目の前に両手をかざす。ゆるキャラカッパの手。
京介 「(!? なんだァ、この手ェ!!! …まさか!)」
偽京介「ソウダヨ。キョウスケ、カッパニシタ」
京介 「!?」
 京介(カッパ)を覗き込む人間体の京介(顔や服装は京介のまま。唇だけが黄色いくちばし)。スマホを京介に向ける偽京介。画面に写るゆるキャラのカッパ。
京介 「クワワッ!?(俺がカッパ!?) クワッ! クワワッワッ!(うっ! 声まで変わってる!)」
 ビクとトングを京介に渡す偽京介。
偽京介「ゴミヒロイ。オスワコキレイニスル。ソシタラ、モトニモドス」
京介 「クワァ?? クワッ! クワワワッ!!(ゴミ拾ぃ?? なんで俺が!)」
偽京介「シナインダ。ジャア、キョウスケノカラダ、モラッチャウ。キョウハイイテンキ、スッポンポンデ、ハシリタクナルネ」
 意地悪そうな笑みを浮かべ、ランニングウェアを脱ごうとする偽京介。
 ベンチの上でじたばたと腕を動かし、焦る京介。
京介 「クワワーッ!!! クワッ! クワッ!(やるやる! やらせていただきますぅ!!!)」

〇湖沿い
 湖面に浮かぶビニール袋やプラスチック片のゴミなどをトングで拾い、ビクに入れていく京介。落ち込んだ様子で元気が無い。
京介 「クワァ…。クワッ…、クワワ…(御諏訪湖のゴミ全部拾えって、俺一人じゃ無理に決まってんだろ…)」
 水面に写るゆるキャラカッパ。悲し気な顔で、涙を浮かべる。
京介 「クゥゥ…、クゥ…(うぅ…、早く戻りてぇ…)」
女子 「居たっ! ゴミ拾いカッパ!」
京介 「!! クワワッ!!(あの声!)」
 振り返る京介。私服姿の女子が数名、スマホを向けている。
京介 「クッ…! クゥゥ…!(ヤベッ! クラスメートの女子! どうしよう…、俺だって気付いたら…)」
 京介に近付く女子達。顔を強張らせる京介。リュックやショルダーバッグから、軍手や市指定のゴミ袋を取り出す女子達。
女子 「私達も手伝います!」
京介 「クエッ!?(えっ!?)」
女子 「SNSで見たんです。カッパがゴミ拾いしてるって」
   「人間が捨てたゴミは、人間がちゃんと片付けないと」
   「こんな感じで、みんなも手伝ってくれてますよ。一緒に頑張りましょう!」
 京介にスマホを見せる女子。SNSの投稿で、# かっぱのごみひろい、カッパ風の恰好をしたり、カッパのスタンプで顔を隠した人達の写真。
京介 「クゥゥ~(みんなぁ~、ありがとなぁ~)」
 嬉し涙を浮かべる京介。
女子 「その前に、その体触っても良いですか?」
京介 「ク、ワワッ(おっ、おう)」
 子供がゆるキャラの着ぐるみに触れるように、京介(カッパ)の腕や頬を撫でる女子達。
女子 「スゴイですね、今時の着ぐるみって。まるで本物みたい。本物のカッパ触った事無いけど」
京介 「クフッ、クフフッ、クワッフフ(まさか女子に触られるなんて。こう言う事してもらえんなら、このままでもイっかなぁ)」
 ニヤニヤ、デレデレする京介。
 少し離れた場所で、その様子を見つめる偽京介。

〇冒頭の公園
 分別されたゴミ袋が数袋。その傍に立つ偽京介、女子達。
 偽京介の手に人数分の缶ジュース。
偽京介「ミンナ、ゴクロウサマ。ボクノオゴリ、ノンデネ」
女子 「ありがとう、京介君」
 ビクを背負い、トングをカチャカチャ鳴らしながら、園内を歩く京介。どこかご機嫌な様子。
京介 「クワワ~、クワワワ~(楽しいなぁ~、ゴミ拾い~。汚れたところがキレイになるとスカッとするなぁ!)」
 植え込み。カッパの石像の傍に京介が捨てた空缶。 
京介 「クワッ! クワワッ!!(おっ! こんなとこにも!)」
 トングで器用に拾い上げ、自販機傍のゴミ箱に入れる。
京介 「クワワワッ! クワワワワッ!!!(ゴミはゴミ箱に捨てましょう!)」
 その様子を見ていた偽京介、嬉しそうに微笑む。
偽京介「キョウスケ、チャントデキルジャン」
京介 「? 何か言ったか? …あれ!?」
 突然立ち込める霧。周囲の景色がぼやけ、偽京介や女子達の姿が見えなくなる。
京介 「おいっ! カッパ!!! みんな!?」

 暫くした後。
 公園内のベンチに仰向けになる京介。目を覚ます。
京介 「はっ!」
 視線の先には、オレンジ掛かった空と飛行機雲。
京介 「…夢か。走り疲れて寝ちまったんだな」
 起き上がる京介。
京介 「にしても、変な夢だったな。カッパになってゴミ拾うって。うぅ、寝すぎて全身痛ぇ~。ノドも乾いたし。ジュース飲むかぁ」
 バッグからがま口の小銭入れを取り出す。
京介 「ん? 妙に軽い気が…」
 がま口を開ける。一円玉と五円玉だけが入っている。
京介 「かっ…、金がねぇ~~~!!! どっかに落としたのか!? まさか寝てる間に誰かが盗んで…」
 ポケットやバッグを勢いよく漁る。ポロリ、とスマホが落ちる。スマホの画面が目に入り、京介の顔色が変わる。待ち受け画面。女子達に触られ、鼻の下を伸ばす京介カッパの写真。
京介 「こっ…、この写真…。まさか…」

 水門の橋の下。人が座れそうな出っ張った場所(死角になっているので橋の上からはよく見えない)。缶コーヒーを飲むカッパ。
カッパ「プヒュー。オシゴトノアトノイッパイ、サイコウダネ」


     『ボーイ・ミーツ・カッパ』  終

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