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【漫画原作】『ALL HALLOWS EVIL』【ハロウィン】

さくっと読める短編の漫画原作です。
複製、自作発言、無断転載、許可なき作画はNGです。


ジャンル

すこしふしぎ。
ハロウィンがテーマなのでファンタジー要素も。

あらすじ

ハロウィンの日。
ショッピングモールで働く大嗣は、先輩の佐倉井と共にクリスマスの飾りつけをしていた。自身が考えた展示だと上司に自慢する佐倉井。然しその案は大嗣が考えていたもので、密かに佐倉井がパクっていた。売れ残ったハロウィンのお菓子の処分も押し付けられ、イライラが募る大嗣。
帰り道、公園でお菓子を欲しがる子供達に出くわして…

登場人物

・岸生 大嗣(きしお・だいすけ)
 20代前半の青年。茶色の短髪、耳にピアス穴、ファッション指輪を付けていたりと、チャラ目な外見で、口調もぶっきらぼうな感じだが、根は優しい。
・佐倉井(さくらい)
 30代前半の男性。大嗣の先輩。大嗣とは対照的に真面目そうな印象。
・5人組
 大嗣が出会った子供達。10歳くらいの男女で人間の外見をしている。衣装はいずれも〈本物〉のような外見。
●黒猫:黒猫風の女の子。人間の耳部分がネコミミになっている。尻のあたりから先が二つに分かれたシッポ、両頬からは3本の髭が生えている。
●魔女:魔女の恰好をした女の子。みんなのリーダー。
●紳士:吸血鬼風の恰好をした男の子。赤目で犬歯が鋭い。髪はオールバック、若しくは逆立てている。
●傷男:フランケンシュタインの怪物風の男の子。顔や腕にリアルな縫い傷がついている。
●南瓜:ハロウィンのカボチャ顔の男の子。カボチャがリアル。


本編

〇ショッピングモール(10月31日・夕方)
 催事場。クリスマス展示の準備をする男性店員二人。
 脚立に乗り、巨大なモミの木に飾り付けする大嗣。
 指示書を見ながら指示を出す佐倉井。

佐倉井「大嗣君。それ、もう少し右で」
大嗣 「うーっす」(※ちょっとトゲのある返事)
 様子を見に来た年配のチーフ。
チーフ「お疲れ」
佐倉井「チーフ、お疲れ様です」
チーフ「おお! こりゃ立派なモミの木だ! 写真撮って、ネットに上げたくなる。然し勿体ないな、展示これしか使い道が無いってのは」
佐倉井「御心配無く。クリスマス後は、業者に依頼して、御守りに加工します。間に合えば、年始の営業で配布出来るかと」
チーフ「SDGsってヤツだな。流石、佐倉井君! 良い仕事するじゃないか!」
佐倉井「ありがとうございます」
 仲良く談笑する二人。
 佐倉井の言葉に眉を顰める大嗣、小声で呟く。
大嗣 「偉そうに語りやがって。オレのアイディア、パクったくせに」
 台車を引く女性店員が通り掛かる。台車には様々なメーカーのハロウィン菓子。
 溜息を吐くチーフ。
チーフ「今年も売れ残ったか。発注抑える訳にもいかんし、社販に回しても結局残る。仕事とは言え、飲食物の処分は気が引けるな」
佐倉井「それでしたら…」

 〇帰宅(21時過ぎ)
 イライラ気味に車(ジムニー)を走らせる大嗣。助手席やトランクに菓子が詰まった段ボール箱。(後部座席は折り畳み、トランクの一部になっている)
大嗣 「〈今夜はハロウィンなので、大嗣君が近所の子供達に配ってくれますよ〉、じゃねぇ! 先輩のテメェがやれよ! 大体なぁ、こんな夜中に菓子欲しい子供居るかよ。親がとっくに買い溜めしてんだろ。ったく、展示の件と言い、マジムカつくわ。やらかして怒られろ、佐倉井! …ん?」
 公園を通り掛かる大嗣、何かに気付く。

●公園
 薄暗い園内に五人組の子供達の姿。子供達の周りをホタルのような灯が飛び回っている。
 泣きじゃくる黒猫。落ち込む四人。
黒猫 「お~~~が~~~じぃいい~~~!!! ほじいほじいほじぃぃぃ~~!! なんでもらえないの~~!」
魔女 「しょうがないじゃん。この国のハロウィンは、あたしたちのとはちがうんだから」
紳士 「買いたくても、この国でつかえるお金もってないし」
傷男 「店に忍び込んで、パクっちまうか!」
南瓜 「この国のお菓子、すごくおいしいってパパ言ってた。一度食べてみたかったなぁ…」
大嗣 「ヒッヒッヒ~、君達~、お菓子が欲しいか~い? お兄さんが特別にあげちゃうよぉ~?」
 ハロウィンの菓子を持つ大嗣。額にカボチャのお面を付け、膝を曲げ、子供達の目線になる。足元に菓子が詰まった段ボール箱。
大嗣 「トリック・オア・トリート! 好きなだけ持ってきな」
 泣き止む黒猫。
黒猫 「…いいの?」
大嗣 「おう! チョコにクッキー、グミ、キャンディー。まだまだあるぜ」
 公園の駐車場。電燈に照らされた車。バックドアが開き、段ボール箱の山が覗く。
 目を輝かせる子供達。
傷男 「すげぇ! お菓子の山だ!」
紳士 「ねぇ、みんなも呼んでいい?」
大嗣 「どんどん連れてこい! 今夜はお菓子パーティーだ!」

  園内。
 二十人くらいの子供達。遊具やベンチに座ってお菓子を食べる。
 東屋。大嗣と五人。知育菓子(〈ねるねるねるね〉みたいな自分で作る菓子)で食べて遊ぶ五人。優しそうに様子を見る大嗣。
南瓜 「すげぇ! 色かわった!」
魔女 「うわぁ! もこもこしたよ。ママが作るおくすりみたい」
傷男 「これ、めっちゃうめぇ! 毎日くいてぇ!」
大嗣 「もしかして初めてか? これ食べるの」
紳士 「うん。ぼくらの国にはないんだ」
傷男 「キイチゴゼリーに、ホネのミルクケーキ、イモムシのシロップ漬けとかだよな」
大嗣 「虫ならオレも食うぞ。イナゴにハチノコ、ザザムシ。バァちゃんが佃煮にして作ってくれるんだ」
子供達「へぇ~~~」
 和気あいあいと話す大嗣達。
 魔女のバッグから鳴き声。カエルの人形を取り出す魔女。ゲコゲコと鳴る人形。園内の子供達に向かって声を掛ける魔女。
魔女 「みんなー! 時間だよー!」

 お菓子をバッグに詰めたり、両腕に抱える子供達。園内の一角。不自然に黒い靄が掛かる。歌いながら、ホタルの灯と共に靄の中へ駆けていく子供達。
子供達『―――せいなるよるには、せいなるあくまが、おかしをたべにやってくる。ぼくらにおかしを、わけてくれたら、かならずいいことおきるから―――』
 同じように帰りの支度をする五人。
黒猫 「お菓子のおにいちゃん。これ、あげる」
 何かを手渡す黒猫。黒い毛玉に眼球(猫の目)に似た宝石が埋め込まれたキーホルダー。
黒猫 「おまもり。おねがいごとがあったら、この目に言って。かなえてくれるから」
大嗣 「こりゃどうも」
 嬉しそうに手を振る五人。
黒猫 「お菓子ありがとー!」
大嗣 「気を付けて帰れよー。クリスマスも用意しとくから、楽しみにしとけよー」
黒猫 「ごめーん。クリスマスは〈じゃきょう〉だからやらないのー」
 靄の中に消えていく五人。
 嬉しそうな大嗣。
大嗣 「良かった、菓子がムダにならなくて。にしても、気合入った仮装だな。あのカボチャ、絶対モノホンだし。外国から来てるっぽいから、仮装もガチなんだろうな」
 ストラップを見つめる大嗣。宝石と目が合う。
大嗣 「願いを叶えるお守りか…」
 ゴホン、と咳払い。宝石に向かって叫ぶ。
大嗣 「佐倉井! やらかして怒られろ、いや、職場出禁になっちまえ! …なんてなー。さーて、オレも帰るかぁ」
 冗談ぽい大嗣。駐車場に向かう。
 ストラップの宝石。一瞬、瞳孔の大きさが変わる。

*****
〇ショッピングモール(後日)
 催事場。
 賑わうツリーの周辺。スマホで写真を撮る学生のグループやカップル達の姿。
 食品売り場。入口付近。展示の準備をする大嗣と女性店員。土台の上にコタツや座椅子。コタツの台の上にIHコンロと鍋。鍋物(すき焼きやおでん等)を売り込む展示。〈一人鍋〉〈カップル鍋〉〈家族鍋〉など、用途に合わせた具材やメーカーのスープを紹介するパネルも。指示書を見ながら指示する店員。
店員 「岸生さん、それ、もう少し右の方が見やすいかも」
大嗣 「うーっす」(※好意的な返事)
 様子を見に来た年配のチーフ。
チーフ「お疲れ」
店員 「チーフ、お疲れ様です」
チーフ「おお! こりゃ見事な展示だ! メーカーの推し商品はきちんと宣伝してるし、何より今夜は鍋にしようって気にさせてくれる」
店員 「岸生さんのアイディアなんです。クリスマスのケーキとチキン、お正月のおせちの販促も面白いもの考えてるそうで」
大嗣 「絶対バズりますよ。期待してて下さい」
チーフ「ほう、そりゃ楽しみだ。佐倉井君が居なくなった今、岸生君が新たな展示リーダーだな」
大嗣 「えっ? 居ないって、佐倉井さん辞めたんすか?」
 きょとんとするチーフと店員。
店員 「知らないの?」
チーフ「コレだよ」
 苦々しい顔で、喉を掻っ切るポーズをするチーフ。
大嗣 「マジっすか!? 何で?」
チーフ「不倫だよ、相手は店長の嫁さん。始末書出して終わり、ってレベルの不祥事じゃないね」
店員 「驚きましたよ。そんな事する人とは思えなかったので」
チーフ「ああいうタイプ程、裏の顔があるんだよなぁ」
 眉を顰めて話す二人。
大嗣 「アイディアパクるだけじゃなく不倫とか、マジでクソかよ…」
 小声で呟く大嗣。ふと何かを思い出し、顔色が変わる。
大嗣 「願い…、まさか…」
チーフ「そう言うことだから、これからは頼むよ」
 立ち去るチーフ。
 作業を続ける店員。
 真剣な顔で佇む大嗣、ズボンの尻ポケットからスマホを取り出す。毛玉のストラップを見つめる。
大嗣 「やらかして怒られろとか出禁になれ、とは言ったけど。…偶然、だよな」
店員 「岸生君、コレお願いできる?」
大嗣 「ハイ!」
 スマホを仕舞う大嗣、手伝いに向かう。
店員 「私、この展示好きなんだ。人気出るといいね」
大嗣 「そうっスね。バズって欲しいっスね」
 ズボンのポケットから覗くスマホと毛玉のストラップ。宝石が意味ありげに妖しく輝く。

『ALL HALLOWS EVIL』  終

画像のネコちゃんは
とあるショッピングモールにあったハロウィンフォトコーナーの壁布です。

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