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Web zine #8 透明に近づく命

おばちゃんが入院した。
おばちゃんといっても、祖母の妹、
御年89歳のおばあちゃんだ。
癌も患っており、もう先は長くないらしい。

私の祖母は4年前に他界したので、
その年齢と並んだようだ。

祖母とおばちゃんは仲が良く、
私が両親と帰省した時にはよく顔を出してくれ、
新鮮な魚をくれたり、
お年玉をくれたりしていた。

時間がある時には一緒に祖母宅で畳に座り、
みんなでゆるりと過ごした。

たまにしか会わないが
会えば可愛がってもらっていたものだ。

そんなおばちゃんが入院したが、
面会は制限もあり、離れているので会いには行けない。
会いに行ったところで、何もできるわけではないので自己満足だ。

何にも返せないなぁ、と
与えてもらってばかりの自分に天を仰ぐ

子供の頃って、
気づかないうちにたくさん与えてもらっていた
当たり前のようにぼーっと過ぎた日々。

命の終焉を感じながら、
悲しみと、そういう年齢だもんな…という諦観を抱く。

祖母は最期、病院で人工呼吸器に繋がれていた。
今おばちゃんも管がついている。
あの時の祖母のように、
おばちゃんも昔よりうんと小さくなって
しわしわになって
色んな色素も抜けて透明に近づいているだろう。

成人しても、おばちゃんにお礼をするなんて思いもつけなかった私は、
今更になって何も返せないなぁなんて思う

今更だが、命というのはそういうもので、
血というのはそういうもので、
私ができるのは上の人がしてくれたことを
下の命にしてあげることだけなんだろう

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