２０２６年　ＺＺ音楽

半世紀前に活躍したロックバンド
大型トラックと長いヒゲが似合う男たち
小気味よく繰り返されるエレキギターのフレーズ　また繰り返す
人間の体のリズムと同調する音楽は
簡単に時代を超越する　簡単に国境を超越する
二〇二六年の日本で聞かない日はない

人工知能がＺＺトップらしく作曲して流す
朝昼晩　古今東西　四則演算の組み合わせが新曲を作る
数学と電気で複雑極まる計算を繰り返し
単純明快なリフを生み出す　繰り返す
一人も友達のいない日本の女子高校生が
祖母のＣＤコレクションから作ったアプリ
学者がバッハやビートルズでＢと格闘している間に
彼女はスエットにサンダルでＺまで駆け抜けた
やっとロックが死んだ　正にＺＺ
ヒゲの友達は今日も元気そうだ　ロックだ

祖母の首にかけられた白玉の連続　真珠の首飾り
見事なカルシウム結晶と光の干渉　絵の中でも輝いている
ロックの波　音に削られて真珠が小さくなっていく
結晶の積層が一枚ずつ剥がされていく
祖母の時間が戻っていく
ロックの波　音に囲まれて真珠が大きくなっていく
カルシウム原子が一つずつ結合し真珠を輝かせていく
祖母の時間が戻っていく
ヒゲの友達は今日も元気そうだ