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対面授業とオンライン授業②      ー春学期の授業を終えて

総合大学で、教職の科目である教育心理学と教育相談の授業を担当しています。コロナ禍、結果的に、春学期はすべての回の授業をオンラインで行いました。小・中・高校が「通常授業」に戻る中、大学は全国的にほぼオンライン授業が継続されていて、そのことに関する記事が目につくようになりました。学生が書いてくれた最後のリアクションペーパー(以下、RP)から授業に関する声を拾いながら、オンライン授業をめぐる大学の状況について考えてみたいと思います。(長文になります)

オンライン授業をめぐる大学の状況に関する記事

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私のオンライン授業の様子

年度始め、大学からは、①資料配布型 ②動画で教材を配信するオンデマンド型 ③コミュニケーションツールを使ってリアルタイムでオンライン型のいずれかでとの方針が出されたが、、私は、①②③すべてを提示し、学生が自分で選択できるようにした。学生の通信環境への配慮と、すべての授業がオンラインになる中で学生の日常がどうなるか予測が立たず、学生が自己調整して学べるようにと考えたからである。

始めの頃の様子については、対面授業とオンライン授業① を読んでいただきたい。

春学期は教育心理学。土曜日1限目、8時50分からの授業。51名の学生が授業登録し、毎回、45名ほどが③コミュニケーションツールを使ってのリアルタイムの授業(以下、ZOOMでの授業)に参加した。5、6名は②動画で自学自習(以下、動画学習)、①資料で自学自習(以下、資料で学習)の学生はほとんどいなかった。③ZOOMでの授業で参加したものの通信の状況が悪く、やむを得ず、途中から②動画で学習や①資料で学習に切り替える学生もいた。また、グループセッションが苦手なので②動画で学習にしたいと申し出る学生もいた。

ZOOMでの授業は、間にグループセッションを入れながら、15分ほどの講義を3回に分けて行うというスタイルで進めた。後半の授業では、グループセッションの後に全体での交流も入れてみた。

学生の声から、学生の苦労がみえる

Aさん:オンライン授業全体にいえることですが、パワーポイントや資料をそのまま載せるだけで大量の課題を出すというスタイルは先生が思っている以上に学生の負担になっています。先生の授業はリアルタイムでの講義があったり、後から動画を掲載していただけるなどの幅広い受講スタイルを用意してくださっていたので、自分が今季受けた授業の中でもとりわけ良い授業だったと感じています。

Bさん:授業をZOOMで受けることが出来るのは、理解度が高くなると実感し、とても助かりました。ただ、ネット環境が不十分で、ZOOMの接続が切れてしまうこともあり、悔しい思いをしました。

Cさん:他の授業でzoomでの参加を必ずしなければ成績を出してくれない科目があり、その授業の方に通信量を取られてしまったので、結局最後までzoomでの参加ができませんでした。申し訳ございません。意味のわからない資料を山のようにばらまいて大量の課題を押し付けてくる教授が何人もいました。先生は初期の段階からオンライン授業という縛られた状況の中でできることを模索し続け、快適な学びの場を提供してくださいました。

Dさん:他の教職の授業が資料を出されて、感想や考えたことを書くという完全受け身型の授業が多かったことから、(時期が時期なのでしょうがないですが…)春学期ではこの教育心理学の授業が1番楽しみながら、考えながら受けられた授業だったと思います。

Eさん:対面が難しい中、大学にも行けていない、同級生にも会えていない、大学の授業がどのようなものなのかもわからない1年生の私にとって先生のzoomでの授業はありがたかったです。

Fさん:学校に行けず誰にも会えず資料と課題だけの授業も多い中、先生の顔が見え、声が聞こえ、他の学生と会話ができるこの授業は自分が思っているよりずっと安心感が大きかったです。

Gさん:課題提出型やオンデマンド型が多い中で、zoomを使ってグループアウトセッションの時間を多くいただけたので、先生方や同級生と会えない中でひとつの楽しみになりました。

Hさん:ほかの科目は大量のプリントや教科書やパワーポイントを読んで大量の課題をこなすシステムで混乱が多かったですが、教育心理学の教科書や先生作成の資料を読んでzoomで学びつつ討論をして、その日中に感想をまとめて提出する、という授業スタイルは今期履修していた科目の中で最も勉強しやすかったです。

Iさん:何も分からない状態で始まったオンライン授業でしたが、個人的な感想としてはとてもつらかったです。仕方のないことだとはわかっていますが、あまり外にも出られず毎日課題をこなすだけの日々はかなり体力を使います。しかし、その中でも先生は毎回提出したリアクションペーパーにコメントを返してくださるなど、丁寧な対応をしていただきとても嬉しかったです。

Jさん:授業があまり苦じゃなかったです。やはり対面に近いZoomを使った授業が良いです。学生的には(おそらく)。毎日毎日課題に追われてたまっていくので、その日のうちにすべて終わる授業スタイルがとても楽で学ぶ気になれました。

Kさん:一人暮らしをしている私にとって、コロナ禍で人と会えない状況の中で、週に1度のグループセッションは貴重な会話の時間でした。考えを共有するのはもちろん、雑談としての時間までとってくださっていたことに感謝しています。ありがとうございます。(私の中で、)オンライン授業でなかなか「楽しい」と思える授業がありませんでしたが、この授業は「楽しい」授業でした。先生にもよりますが(授業の規模にもよるかもしれません)、現状、ほとんどの授業で課題やRPは「出しっぱなし」の状況で、寂しさがありましたが、毎週、RPにコメントをつけて返却してくださったことも非常にうれしかったです。毎週定時に始まることであったり、質問できる環境が整っていたりしたことも「楽しく」授業を受けることができた要因かもしれません。

学生同士のつながりや双方向を大事にした

Lさん:すべての回の授業が本当に有意義で、1週間の授業の中で1番楽しみな時間でした。土曜日の朝から行うグループセッションは本当に心地良かったし、Zoomではなく、直接講義を受けているような感覚になることもあるくらい、授業内容は充実していたように思います。

Mさん:ZOOMを用いたグループセッションは、グループによって活発さは異なるが、対話の授業と遜色なく行えていた印象が強いです。

Nさん:このような状況にあってもZoomという形で様々な学生と対話したりしたことで、自分の学んでいる専門分野以外の話も聞くことが出来たので、対話も含めたこのような形の授業が、対面授業が出来ない中で自分にとって吸収できる授業だったので素晴らしいと感じました。

Oさん:毎回の授業にあった、グループセッションの時間はその日の授業内容をしっかり復習でき、いろいろな人の意見を聞けて非常に楽しく授業を受けることができた。誰かと話すことが好き(得意ではない)なので毎回の授業がすごく楽しかった。

Pさん:リアクションペーパーの返答が先生からない授業もたくさんあるけど、一言あるだけでも嬉しかったです。

Qさん:毎回のグループワークも15分という短い時間の中ですが他者の意見を聞き取り入れ、自分の意見を見直したり、新たな意見を作り出すといった力が以前よりも身についたと思います。私は自分の意見を言うことが苦手でいつも他者と合わせて自分の意見を出さずに他者に合わせていました。しかしこの授業を受けて自分が他者と異なる意見でも発信する重要性を知り、以前よりも自分の意見を発信しやすくなりました。

Rさん:今学期、教育心理学に関しては快適に、そして主体性を持った学びをすることができたと感じています。そう感じるのも、先生が毎回のグループセッションのたびに「天使ことば」を使うことを注意喚起してくださっていたために、お互いの意見を尊重し合う「学級風土」が流れていたからだと思います。

Sさん:グループセッションがあったおかげで回を重ねるごとに自分の意見を言うことに慣れていきました。それを他の授業に活かすこともできました。

Tさん:ズーム授業でグループセッションがあり、学校にいけない中、学んでいる実感を持たせてくれた貴重な授業でした。全部ズーム授業で対話があるというのはこの授業くらいしかなかったので、有意義な時間を過ごせましたし、とって良かったと思えました。グループセッションがあるおかげで自分は何を話そうかと考えながら講義を聞けたので、学習効果が高かったと個人的は思っています。

Uさん:毎回の授業が本当に楽しみで今日はどんなお話なんだろうと割とワクワクしていました!また授業も参加型だから頭に残るし課題もコメント付きで返却してくださるのでやる気が出る!

Vさん:グループセッションで他の人の意見を聞けたり、自分の意見を伝えたり、前回の授業の補足という内容があったことで、理解が深まったと思う。私は、人前で話すことやグループセッションなどがとても苦手だけれどこの授業を通じて少し克服できたように感じる。

Wさん:コロナ禍の影響で教室での授業ができない中、出来る限り教室に近い環境で授業をしてくださったことはとても良かったと思います。私たちが将来教師として現場に出て、オンラインで授業をすることになった時、この経験は必ず役に立つと思います。
リアクションペーパーを読んで、丁寧なコメントをつけてくださったことも、「双方向の授業」をしている感覚で良かったです。

Xさん:毎週のグループセッションの時間がある点、先生が毎週リアクションペーパーにコメントを残してくださる点がとても良いと思った。

Yさん:自分はzoomの授業が少なかったため他の生徒との交流の機会がとても少なく、この授業のグループセッションがとても楽しかったです。授業自体もわかりやすく15分で内容が変わるのがとても受けやすいと感じました。

Zさん:リアクションペーパーにも毎回コメントを入れてくださって、対面ではないけれど先生と直接やり取りしている感じがしてとてもうれしかったです。

雑感

最後のRPから、学生の苦労やつながり・双方向に関する記述のみを拾い出してみた。Kさんのように地方から出てきて、一人暮らしを始めた学生にとって、この事態はどんなにか心細いだろうと思う。課題を受け取って、レクチャーなしでレポートを提出する授業が結構あって、負担になったであろうこともわかった。

グループセッションが苦手で②動画で学習を選択する学生や、緊張すると言いながら頑張って参加している学生もいたが、毎時間のグループセッションはいい時間になっていたことがうかがえる。また、毎回、必ずコメントを入れて返却するRPを、こちらが思った以上に楽しみにしていてくれたことがわかった。Lさんの「直接講義を受けているような感覚になることもあるくらい」というのは、ややオーバーな記述かもしれないが、オンラインであっても、つながりが感じらるような工夫を最大限することが大事であると強く思う。

秋学期はどうなるだろうか。大学は規模が大きく、調整が難しいかもしれないが、できることならば、オンラインも併用しながら、オフラインで学生に会える時間がつくれるといいと思う。学生の記述にも、そのような声が複数あった。リアルで学生に会えることを強く願いながら、秋学期の授業(教育相談)の準備を進めようと思う。




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