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9.無痛分娩におけるマンパワー問題

 TwitterなどのSNSで盛り上がっている無痛分娩ネタを、専門家の入駒慎吾が解説していくシリーズです。今回は「マンパワーもないまま無痛分娩を導入するのはリスクが高すぎる・・・」を深堀りしてみたいと思います。これは、非常に大切な話だと考えています。

国立成育医療研究センターとは

 私は、実は上の“つぶやき”の中に登場する国立成育医療研究センターで無痛分娩の診療支援をしています。日本国内で無痛分娩を提供している施設としては、理想的な環境だと思います。当センターでは、産科麻酔科医が24時間フルサポートしているだけでなく、産科医も助産師も新生児科医などのマンパワーも潤沢です。しかも、全国から優秀な人材が集まる教育・研究機関でもあります。

理想と現実

 国立成育医療研究センターや一部の大学病院では、産科麻酔科医が24時間いつでも無痛分娩や帝王切開に対応できる体制を整えています。全く理想的な体制だと言えますね。しかし、これらはあくまで一部の施設に過ぎません。日本全国でこのような体制を整えることは、10年や20年というスパンで考えても現実的には不可能だと考えられています。

 このシリーズの3回目でも述べていますが、日本では半分以上の無痛分娩が産婦人科の診療所(開業医さん)で行われています。さすがに、マンパワーが理想的だとは言いにくいでしょう。しかし、これらの産婦人科診療所によって日本の無痛分娩は支えられているのも現実なんですね。もちろん、産婦人科医や助産師がしっかりと麻酔の管理を学び、日々知識をアップデートしている施設もたくさんあります。このような施設では安全に無痛分娩を管理できるのではないでしょうか?

新規で無痛分娩を始める⁉

 「産婦人科あるある」な話ですが、無痛分娩を新規で始める施設には特徴があります。それは、これまでどこかで無痛分娩を修練した先生が、自施設でも始める場合が多いとということです。言われてみれば、ごく当たり前のことでしょう。また、無痛分娩の麻酔手技自体は、帝王切開の麻酔でも用いることがある手技の1つです。この手技は、多くの産婦人科医にとっては、レベルの差はあれ習得しているものなのです。

 ここで、一つ怖い話を聞いたことがあります。経営難に陥った施設が、集客目的でこれまあで一度もやったことのない無痛分娩を始めることがあるそうです。この話を聞いた時には、耳を疑いました。一昔前(昭和?)なら、よくあった話だと思いますが・・・。このことは、外部からでは全くわからないんです。業界内でも繋がりのない場合、その詳細はわかりません。

マンパワー問題は本質か?

 今回の“つぶやき”にあるように、新規に無痛分娩を始める施設では知識・スキル・マンパワーは重要な要素と言えるでしょう。「うちもちょっと始めてみようか?」という安易な気持ちでスタートするものではありません。

 一方で、これまで無痛分娩を提供してきた施設は、知識のアップデートスタッフの再教育が必要になります。その理由は、どのような業界でも当てはまることですが、医学も日々進歩しているからです。もちろん、現在の医療水準に合わせたマンパワーの見直しも検討の余地があると言えるでしょう。

LA Solutionsというサービス

 このように無痛分娩を提供する施設では、マンパワー見直しとともに知識のアップデートおよびスタッフの再教育が必要と言えるでしょう。実は、私は2017年に無痛分娩コンサルティング業としてLA Solutionsを設立しています。このLA Solutionsでは、無痛分娩における知識のアップデートとスタッフの再教育を効率よく提供することで、無痛分娩の安全性向上に貢献することを目指しています。


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