木漏れ日
片耳が聞こえなくなったイヤホンを買い直さずに使い続けていた。
買い直そうとも思わなかった。
全てがどうでもよかった。
薬を飲んで寝て、起きてまた飲んで寝てを繰り返す。世界を完全シャットダウン。
また意識がなくなるまでの間、天井をボーっと見つめては深夜の街の静けさのような心で「どうしたら死ねるか」それだけを考えていた。
人生で一番暗い場所に居た時の話。とても長い間そうだったように感じるくらい、深く暗い。
当時のことは断片的な記憶しかなく思い出そうとしても上手く思い出せない。
そしてなるべく思い出そうとしないようにしていたんだと、時系列を整理したらたった二年程の出来事だったことに気づいて思った。
買い足さないとない日用品を買わなくても、と思う瞬間。
そうする以外どうしようもなく薬を飲んで寝ころび天井を見つめる瞬間。
暗闇に覆われる感覚がある。数年経っても。
あそこにだけは二度と戻りたくない。
固い決意であり強い恐怖でもある気持ちが私を突き動かしてる。
空っぽな毎日でも息はし続けた。だから今があるということ。
暑さは変わらずとも日差しから逃れられる、そんな夏の日陰のようなものにしたい。
text:白栲 霞 / shirotae kasumi
photo:仲秋 揺蕩 / nakaaki tayuta
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