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【民法】無権代理行為と相続

1 条文の確認
・無権代理行為は,本人が追認しないと,本人に対してその効力を生じない(113条1項)。
→無権代理行為が本来無効であることを前提としている。
→追認拒絶権によって本人を保護する。

2 無権代理人が本人を相続した場合(本人の追認拒絶ないとき)
・単独相続のとき
→当然に有効な法律行為となる。
→本人の地位でもって追認拒絶することは不可(∵信義則?)。

・共同相続のとき
→追認権は共同相続人に不可分に帰属するから,無権代理行為の追認は共同相続人全員がしないといけない(全員で追認しないかぎり)。
①他の共同相続人ら全員が追認しているとき
→他の共同相続人らが追認していることを踏まえ,他の共同相続人らの追認拒絶権について考慮する必要はない。
→無権代理人が本人の地位でもって追認拒絶することは不可(∵信義則)
→相続によって当然に有効となる。
②他の共同相続人(の全員又は一部)の追認がないとき
→無権代理行為の効果が無権代理人(の相続分相当部分)について当然に有効な法律行為となるわけではない(単独相続の場合とは異なる)。
→追認拒絶は全員でしないと効果が生じない。

※他の共同相続人の追認拒絶権を無視することができないという発想をもとにしている。
※本人の追認拒絶後に相続が発生した場合は,無権代理行為の効果が本人に帰属しないことがすでに確定しているため,無権代理人が追認拒絶をしても信義則違反にはならない。

3 本人が無権代理人を相続した場合
・単独相続のとき(百選Ⅰ35)
→追認拒絶しても信義則違反にはならない(追認拒絶が可能)。
→相続によって当然に有効となるものではない(資格併存説)。

・共同相続のとき(最判昭48.7.3)
→無権代理人の責任(117条)が「相続の対象となることは明らかであって,このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならない」。
→「本人は相続により無権代理人の右債務を承継し,本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといつて右債務を免れることはできない」。
→無権代理人を相続した共同相続人のうちの一人が本人であるからといって,本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか,債務を免れることができると解することもできない。

※他の共同相続人らは,本人の地位を相続するわけではないから,本人の「追認拒絶権」とは無関係。
※単独相続の場合と同様の考え方が本人については当てはまる(追認拒絶しても信義則違反にはならない)と思われる。しかし,117条の責任が相続によって包括承継されてしまう結果,結局のところ,本人も含めて共同相続人らが117条の責任を負うことになってしまうと考えられる。

4 第三者が本人&無権代理人を両方相続した場合
・無権代理人を相続後,本人を相続したとき(最判昭63.3.1)
→本人の地位でもって追認拒絶をすることはできない。本人自ら法律行為をしたと同様の法律効果を生ずる。
※考え方としては,無権代理人を相続した時点で「第三者≒無権代理人」という関係になり,「無権代理人が本人を(単独)相続した」という上記「2」の単独相続の事例と同視できて,追認拒絶ができないという結果になる(?)。

・本人を相続後,無権代理人を相続したとき(判例なし)
→本人が無権代理人を(単独)相続したという事例と同視して,追認拒絶しても信義則違反にはならない(追認拒絶が可能)ということになる(?)

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