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タローポッターと不気味の谷

 ドールを撮って今年で10年目に突入した私が、ドールを撮影する上で気をつけている事の話をしたいと思う。


 はてさて、

『不気味の谷』という現象をご存知だろうか?

近年、リアルな動きで話すロボットの映像に『綺麗だし凄い技術だけど、ちょっと怖いな…』という感想を覚える人も多い。

“人に近いもの”に対して人間は共感や好感を抱くものなのだが、その“人に近いもの”が人により近くなるその一歩手前で、好感とは逆の違和感・恐怖感・嫌悪感・薄気味悪さといった負の要素が唐突に現れる。だが、さらに人と見分けがつかない状態になるとふたたびより強い好感や親近感を覚える。

“人”と“人ではない”の差異を脳は無意識に判断する。

その好意と嫌悪の間の谷のような部分が『不気味の谷』と呼ばれ、主にリアルな人型のロボットを製作する際の難しい点として挙げられている。

人に近いものだからこそ起こる違和感。

ドールを人間のように撮影しようとする時、私たちはこの谷にぶち当たるのだ。

 ∵

ちなみに、人間は点がみっつあったら『人間じゃん!』と勝手に本能で判断する『シュミラクラ現象』というプログラムが内蔵されている。

 人は他人や動物に出会った場合、敵味方を判断したり相手の行動・感情などを予測したりする目的で本能的にまず相手の目を見る習性がある。人や動物の目と口は逆三角形に配置されていることから、点や線などが逆三角形に配置されたものを見ると脳は顔と判断してしまう。心霊写真によくあるやつ。


つまり

『人間は点が3つあれば生き物の顔だ♡とガバガバ判定をする癖に、人に近いけどなんか違うものに対してはめっちゃ厳しい。』

という、超面倒で厄介な性質がある。

この事を前提に話を進めていきたい。


 『ドールが可愛い写真が撮りたい』


全ドールオーナーの夢と希望である。

その為に必要なのは機材か?

可愛いお洋服か??

それとも可動域か????

否!!!!!!!!


【不気味の谷を回避した自然なポージング】だ!!!!!!

 

※これは『そもそもドールのポージングをなんとかして、お金をかけず手間暇をかける事で写真の完成度を高めよう!』という話です。


人は一枚の写真からも無意識に色々な情報を受け取り、脳内で自動で処理している。

そこで、意図しない違和感は見る人にストレスを与えせっかくの可愛い写真を可愛いと感じない現象がおこる。これが不気味の谷の嫌なところだ。

ポージングの話をすると『うちのこは可動域が…』と答える方がいるのだが、動かない事が問題ではないと私は考える。

逆に、ドールが人間以上に動かせる部位(手首・足首・首・頭・腰回り・腕の関節)を『人間の可動域を超えて動かしてしまう事』によって見る人が無意識に違和感を感じてしまう、つまり不気味の谷現象が表れているという事が多い気がする。

人間の可動域を超えて動かせる分、そこは非常に違和感が出やすい。そういった写真をよく見るし、自分もいまだにやってしまう事がある。ずっと反省とリベンジの繰り返しである。

ドールの可動域の前に、まず自分でもある人間の可動域すら客観的に把握できていないのが人間なのだ。

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ぶっちゃけこれは手首がおかしい。今なら丁寧に直す。

人間の手首、手の甲はその方向には曲がらん!

人の首はそこまで後ろを向けん!などを丁寧に回避しつつ

体重移動や肩の位置も重要、骨格や筋肉の動きも気をつけて。

『顔が可愛いからオッケー⭕️』もわかるが、人も動物も“仕草が可愛い”はマジで重要なカワイイポイントだ。これは譲れない。

服のシワやヨレ、ウィッグも整えておきたい。これもポージングの一種であり、丁寧に仕上げれば違和感を消せる重要なポイントでもある。(写真が上手い人は服と髪の扱いがバカほど丁寧。)

ちょっとした工夫、丁寧さの積み重ねが不気味の谷を回避し“理想のカワイイ”に近付くんじゃないかと思う。

 

ドール写真は違和感と自分の美意識との闘いである。

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最初からは誰もが出来ないが、気をつければ誰でも出来る。お金もかからない、必要なのは美意識と挫けない心。『カメラのファインダーから自然に見えているか』気が済むまで何回でもその場で直す、審美眼と微調整を駆使した己との闘いである。(実物が可愛くても、写真にした時に不自然というのはよくある)

可動域や機材の有無を嘆くより、そのドールの個性とも言える可動域の中でいかに違和感を消して可愛く出来るかはオーナーの手腕にかかっている。その為に出来ることは無限にある。

 

とにかく色んな写真や映画を見たり、自分を鏡で見て動かしてみたり、より細やかに違和感に気付けるように意識したり。

無意識のストレスを丁寧に減らすことが写真を見る人への誠意であったり、自分の写真やドールへの未来に残せる愛であったりすると私は思っている。

 

不気味の谷を越えて、その先にある“カワイイ”を見に行こう。




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