Brassed Off: I thought that music mattered.
お風呂に入っていたら、突然頭にチャンバワンバのTub thumpingが流れてきて、気持ちよく歌っていました。そしたらアルバムバージョンではイントロ部分にある映画のセリフが使われていたのを思い出しまして、ある意味今の社会情勢にしっくりくるので1人お風呂でしんみりしてしまいました。
その映画とは「ブラス!」
懐かしい。1996年制作のイギリス映画です。サッチャー政権下に始まった炭鉱閉鎖問題の渦に呑まれた実在の炭坑夫ブラスバンド「グライムソープ・コリアリー・バンド」がモデルになった作品。音楽に情熱を燃やし、ブラスバンドコンテストを勝ち進むも、町の炭鉱に閉鎖の危機が忍び寄り、メンバーや家族、町の皆の心が離れていく...そんな葛藤を描いた作品です。ユアンマクレガーとか、若いし!
この後の文章は若干ネタバレを含むので、えー観たーい、内容これ以上知りたくなーい、という方は今すぐ読むのをやめて下さいまし。
(しかし酷い予告編だなこれ笑・・・。映画の雰囲気台無しだ!)
とにかく音楽が華やかで、厳しい現実とは裏腹に明るくホーン隊が音色を響かせてくれるもんだから、余計に切なくなっちゃうのですよね。
名優ピート・ポスルスウェイト演じる指揮者のダニー。誰よりも音楽に情熱を燃やし、街がそれどころではなくなっても、とにかくリハーサルだ!と団員に要求しひんしゅくを買うほど。でもそんな彼の導きにより、なんとバンドはコンテストで見事優勝し英国1位の栄誉を勝ち取ります。憧れのロイヤルアルバートホール。感動的な授賞式。ところがダニーは、思いもよらぬスピーチをして、会場を、そしてメディアをも驚かせるのでした。
‘Truth is, I thought it mattered, I thought that music mattered, but does it bollocks, not compared to how people matter’
音楽が、音楽こそが大切なんだと、ずっと思っていました。でもそんなのは嘘だ。本当は音楽なんかより、人間そのものの方がずっと大切なんですよ。
うまく訳し切れていないのですが...bollocksはイギリスのスラングで、アメリカ英語だとbullshit、てとこ。どちらもだいぶ下品な言葉ですので元の意味は自分で調べて下さい(笑)ニュアンスとしては「嘘」とか「くだらない事」「ナンセンスな事」といったところでしょう。
この台詞は、この後に続く名スピーチのほんの冒頭に過ぎず、この名スピーチが本当に本当に素晴らしい。というか聞いていて苦しくなる。わたしは当時のイギリス炭鉱閉鎖問題をリアルタイムでは知りませんでしたが、「進歩という名の下にどれだけの人が苦しんできたか。もう1オンスの希望も残されていない」という鬼気迫るスピーチには泣かされました。ぜひ全部見て欲しいなー。
スピーチの最後に絞り出す言葉。
Oh aye, they can knock out a bloody good tune. But what the fuck does that matter?
そりゃ彼らは最高の演奏ができるさ。でもそれがなんの役にたつって言うんだ?
役に立たないのよ。何の役にも立たないの。リハーサルしている間にも、仕事はなくなり、家族は去り、友人には見捨てられ、命まで断とうとするものがいる。この映画の登場人物にとって、音楽なんて、演奏はおろか聴いて楽しむ余裕すらないのですよね。
それなのに、この映画は美しい音楽で溢れている。ロドリーゴのアランフェス(オレンジジュース)協奏曲。ダニーボーイ。ロッシーニのウィリアム・テル序曲。どれもが、美しく、哀しく、華やかに響き渡る。
全て失った彼らは、それでも演奏を続けた。
音楽に救われたからなんかじゃない。
音楽こそが大切だからじゃない。
他に声を失ってしまったから。
最後に残ったのが、音楽しかなかったから。
だからこそ、胸にずしりとくるのだなぁ、と
お風呂で1人しんみりしてしまった。
ラジオDJとして、最近は音楽って、エンタメってなんだろうって考える事が増えた。
答えは分からないけど、それでも音楽は流れ続ける。作品は生まれる。今年はどんなものが生まれるのでしょうか。
あー、ブラス!いい映画だったなぁ。
ヨークシャー訛りで何言ってるかよく分かんなかったけどねっ
あとお風呂で思ったのは、外出せずにずっと食べてるから太るよね。あー