国立長寿医療研究センター 島田裕之先生インタビュー③
インターリハ開発部です。
今日も私たちの記事を読んでくださいまして、ありがとうございます。
今回も、
国立長寿医療研究センターの島田裕之先生のインタビューを掲載します。
前回の記事では、認知症予防プログラム「コグニサイズ」についてお話を伺いました。
今回は、認知症予防プログラム「コグニサイズ」を通した未来や、
開発の過程におけるご経験などについて、話を伺っていきます。
Q、「コグニサイズ 」を通して、どのような社会を創られたいですか?
私が「コグニサイズ 」を通して創りたい社会は、「健康長寿で幸せな社会」です。この役割を一端でも担えたら、私は幸せです。
このような社会を実現するためには、みなさんが重度な病気にかからないようにしていただくことが、基本であると私は思います。
病気になったからといって、全てがダメになることはありません。
実際に病気になっても、イキイキと暮らすことはできます。
病気にならないこと。病気になったとしても、その重度化をできるだけ抑制していく。これらのことが私の専門分野ですので、さらに研究を進めて行きたいと思います。
現代は100歳まで生きる人が本当に多いです。一人でも多くの人が元気に生きられるようにしたいですね。
そのためには、私たちの取り組みが研究で終わってしまうと、残念ながら役に立ちません。
民間活力との連携によって、具体的なサービスに繋がっていくことが重要です。そうでなければ、研究の意味がなくなってしまいます。
「健康サービスに繋がるより良いもの」を市場に出すための研究開発に取り組んでいき、「健康長寿で幸せな社会」を目指します。
Q、「コグニサイズ 」を開発する中での様々なご経験を聞かせください。
「コグニサイズ 」の開発においては、本当に様々な経験をしました。まさに地道なことの積み重ねの連続でした。
嬉しい経験は、日本全国で「コグニサイズ 」が親しまれていることです。
一つのプログラムが日本全国に広がるということは、それほど多いことではありません。その中も「コグニサイズ」は、日本全国で親しまれています。
研究に携わるものとして、本当に嬉しく思っています。
今後も、より良いサービスやプログラムを皆さんに提供してきたいです。
「コグニサイズ 」の開発においては、苦労した経験もあります。
特に「コグニサイズ 」の研究開発における知見を集めることにおいては、苦労をしました。
研究開発を進める中で、実証試験に取り組みます。実証試験には当然ながら研究費がかかります。
国からの支援もありますが、その支援がなかなか潤沢ではないこともありました。そのような状況で、自分たちの手作りで実証試験を進めることが多かったです。仲間と苦労しながら、どうにか知見を集めてきました。
何かを解析するにしても、他者からもらったデータは、何の苦労もしないで手に入れたものです。なので、少し取り組んでダメだったら、すぐに諦めます。
その反面、自分たちで全て企画し、一つずつ作り上げて集めたデータというのは非常に貴重です。貴重なデータをどうにか形にしたいという思いがあるので、一歩一歩、着実に進めてきました。
その結果が、現在に繋がっていると思っています。
一番大事なことは、現場の生の感覚をきちんとつかめた上で、製品化・サービス化しているかどうかです。
私たちは、ご協力いただいた高齢者の皆様と一緒に、「コグニサイズ 」を作り上げてきたという経緯があります。なので、的外れなものにはなっていないと思います。
Q、そのようなご経験をされて、「コグニサイズ 」が完成した時はどのようなお気持ちでしたか?
「コグニサイズ」 において、完成形というものはないです。
「コグニサイズ」というのは概念であって、「こうでなくてはいけない」というのはないのです。
みなさんに取り組んでいただくために、テキストは用意しました。
これは「コグニサイズ」 の入門として、誰でもやり始められるものになっています。
テキストどおりに取り組んでいただくとやりやすいですが、テキストの内容にとらわれていただきたくないと、私は思っています。
みなさんには、どんどんアレンジしてもらいたいです。「コグニサイズ 」のパターンは無限にあります。なので、完成形がないのです。「コグニサイズ 」は常に進化しています。
「コグニサイズ 」がユニークなのは、サービスを受ける側が進化させるところです。通常はこの進化はサービスを提供する側が行います。
私の構想ですが、「コグニサイズ甲子園」というようなものを開催するというアイデアがあります。
全国から色んなグループが参加して、YouTube などに自分たちの「コグニサイズ 」の映像を投稿する。その映像をみんなで共有する。
このようなことをやっても、面白いと思っています。
このようなものを サービスを提供する側が全てをやろうとすると、どこかで行き詰まります。しかし、サービスを受ける側と一緒に取り組むことで、発展していくと思います。
Q、認知症の方にとって、「コグニサイズ」はどのような存在であると思われますか?
私は「コグニサイズ 」は、認知症の方にとって、「人と人とのつながりを生み出すもの」であり、その繋がりを活かしていただいて、「常に前向きな姿勢で生活をしていくもの」、そのような存在になれるかも思っています。
みなさんの中にも、「認知症予防」という言葉を聞くと、明るくない印象を覚える方もいるのではないでしょうか。
予防という考え方は広いので、「コグニサイズ 」を通して、「こういった考え方もあるんだ」という前提に立つと、少し前向きな気分になれるのではないかと思います。
今でも、認知症という言葉には、暗い雰囲気があります。実際に大変な部分もあります。その中でも、認知症になってもたくさんのことができます。「認知症になって、むしろ幸せです」と言う方も沢山います。
認知症にならないために取り組めることもあります。
みなさんには、そのようなことを知ってもらいたいです。
認知症になられても、すごくイキイキと生きている方が沢山います。
そういう方々と出会った方々は、認知症に対するイメージが変わったと言います。
認知症になられても、すごくイキイキと生きている方々が言うのは「出会いの大切さ」です。
私は、人と人とのつながりが大事だと思います。
人と人とのつながりの中で、いろんなことを感じ、ポジティブな方向に進んでいく。
「コグニサイズ」も、人と人とのつながりを生み出すものです。
だからこそ、「コグニサイズ 」は、認知症の方にとって、「人と人とのつながりを生み出すもの」であり、その繋がりを活かし、前向きな姿勢で生活をしていく。そのような存在になれればいいなと思っています。
インタビュー④に続く。
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