SEP, Personal Identity, §1

Olson, Eric T., "Personal Identity", The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Summer 2022 Edition), Edward N. Zalta (ed.), URL = <https://plato.stanford.edu/archives/sum2022/entries/identity-personal/>.

*このエントリーは、1節でpersonal identityにはどのような問いがかかわっているかを概観し、次節以降でそれぞれの問いについて外観するという構成になっている。
*個人のnoteの公開です。各自、元をあたってください。

1. The Problems of Personal Identity

personal identityについての問いはいくつかあり、それらは混同されてはならない。

  1. 私は誰?Who am I ?
    ある特定個人をその人たらしめている特徴は何か?という問い。哲学外で「個人のアイデンティティ」と言ったら普通はこれのこと。

  2. 人格性personhood
    何が人格を人格にしているか?人格と非人格を分けるのは何か?という問い。より具体的には受精卵から成長する過程のどの時点で人が生まれるのか、チンパンジーや火星人、電子計算機が人になるには何が必要なのか、もしなり得るとしたらどうなのか、ということが問われる。

  3. 持続性
    特定の人格がある時点と別の時点で、消滅することなく存在し続けるためには何が必要か?という問い。「時間を通じた人格のアイデンティティの問題the question of personal identity over time」と呼ばれることがある。

  4. 証拠
    何によって、個人の同一性を知るのか?という問い。
    この証拠問題は、1950年代から1970年代にかけて、個人のアイデンティティに関する英米の文献を支配した。
    この証拠の問いを持続性の問いと区別することは重要である。時間を通じて持続するために何が必要かということと、関連する証拠をどのように評価すべきかということは別のことである。

  5. 人口
    ある時点における人の数はどれだけか?現在、地球上に70億人の人間がいるとしたら、生物学的、心理学的、あるいはどんな事実がそれを正しい数にしているのか?という問い。

  6. 私は何?What am I ?
    人間の人human peopleとは、形而上学的に言えばどのようなものなのか?私たちを人間peopleたらしめているものに加えて、私たちの基礎的な性質は何なのか?という問い。この問いにコンセンサスはなく、支配的な見解さえもないが、以下の7つの立場が紹介される。
    ・私たちはbiological organismsである(「animalism」:Snowdon 1990, 2014, van Inwagen 1990, Olson 1997, 2003a)。
    ・私たちはbiological なものによって「構成された」物質的なものである:人は動物と同じ物質でできているが、持続するために必要なものが異なるので、両者は異なるものである(Baker 2000, Johnston 2007, Shoemaker 2011)。
    ・私たちは動物の時間的なtemporal部分である:幼少期には動物の側に立ち、全体としては人生の側に立っている(Lewis 1976)。
    ・私たちは動物の空間的なspatial部分であり、おそらく脳(Campbell and McMahan 2010, Parfit 2012)、あるいは脳の時間的な部分である(Hudson 2001, 2007)。
    ・プラトン、デカルト、ライプニッツが考えたように(Unger 2006: ch. 7も参照)、私たちは分節のない非物質的な物質ー魂であり、あるいは非物質的な魂と物質的な身体からなる複合物(Swinburne 1984: 21)である。
    ・私たちは、心的状態や出来事の集合体である。ヒュームが言ったように、「知覚の束」である(1739 [1978: 252]; Quinton 1962, Campbell 2006も参照)。
    ・私たちは実際にはまったく存在しない(Russell 1985: 50, Wittgenstein 1922: 5.631, Unger 1979, Sider 2013)。

  7. アイデンティティについて何が問題なのか?
    私たちの持続性の実践的な重要性は何か?という問い。心理的操作の許容性や責任などとの関係が問題になるかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?