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営業利益40%、「勘定奉行」シリーズのオービックビジネスコンサルタントのビジネスについて考える

会計ソフトで有名な「勘定奉行」シリーズを販売するオービックビジネスコンサルタント(以下OBC)について見てみます。OBCは「オービック」グループの一員で、「オービック」同様に親子上場している会社です。

DXというとAI、IoT、ブロックチェーンのような華やかなワードを打ち出す会社が思いつきますが、会計のパッケージERPからコーポレート業務を変革してきた老舗のDXの会社としてみることは可能だと思います。

会社概要

OBCは1980年12月に設立された40年を迎える企業です。売上300億円、経常利益140億円の規模で、経常利益率40%を超える非常に高い利益率を誇ることが特徴です。

OBCはパッケージソフトとして奉行クラウド、奉行i11シリーズ、奉行VERPシリーズを販売しています。最も有名なものは財務会計・管理会計に活用される「勘定奉行」シリーズですが、給与奉行、人事奉行など周辺業務ドメインのソフトウェアも販売されています。奉行VERPは内部統制などの機能を持った上位互換バージョンです。

奉行クラウドはAzureクラウドで提供されているラインナップ、奉行iシリーズはオンプレミスやプライベートクラウド、ベンダーに用意される環境のクラウドに設定できる提供形態のものになっています。

会計・給与・人事労務などのコーポレート業務を中心としたラインナップのパッケージソフトに加え、内部統制など企業規模が大きくなるとほしい上位のVERPシリーズを提供しています。また、Azure上で提供される奉行クラウド、企業によっては求められるオンプレミス、プライベートクラウドなど向けの形態でも製品を提供しています。

OBCの会社規模

こちらはOBCの過去5年の売上と営業利益の推移です。業績は19年3月期までは伸長しています。19年3月期に大きく売上を伸ばしていますが、前年の決算説明会資料によると、19年4月に「奉行i/V ERP」製品がサポート終了となるため、バージョンアップ需要が大幅に増加したと説明されています。

20年3月期にも売上微増していますが、「奉行i/V ERP」のバージョンアップ需要に加え、消費税増税対応のためのバージョンアップ特需が発生したことが要因としています。

「サービス」、「ソリューション」に見るOBCのビジネスモデル

OBCは自社ビジネスを「フロービジネス」、「ストックビジネス」に分けて説明しています。奉行VERP, iシリーズなど販売パートナーによって売切型の製品をフロービジネスと呼んでいます。OBCは多くの販売パートナーが存在し、導入を行うSIerも多く含まれています。その中にはOBC子会社のオービックオフィスオートメーションも含まれます。

一方、OBCが直接クラウドサービスを提供したり、保守契約を結ぶ形態をストックビジネスと呼んでいます。導入は販売パートナーと協力することもあるようですが、売切りでなくサービスを継続的に提供しています。

OBCでは製品の販売を「ソリューション」セグメント、ストックビジネスとして位置づけられている保守契約やサポートなどの提供を「サービス」セグメントと呼んでいます。

こちらはOBCのセグメント別売上です。ストックビジネスである「サービス」が6割弱を占めており安定的な収益基盤が存在しています。

時系列でセグメントの売上高推移を現した図では、ソリューションは、19年3月期にサポート終了時の特需、19年9月期に消費税対応の需要増があって一時的に売上増していますが、サービスは安定的に右肩上がりの増加になっています。

ソリューションとしての販売はタイミングに左右されますが、サービスは安定的なストック収入になっていることがわかります。このグラフからはソリューションの販売でユーザーを増やし、保守契約料でストック収入に転嫁するモデルであることが推測できます。

綺麗にストック収入を積み上げていくことで、人件費がかかる個別対応を減らし、高い営業利益率を実現しているのでしょう。

「サービス」セグメントの保守契約料の中身について

では肝のサービスセグメントの保守契約料について見てみます。会費制のOMSS(OBIC Membership Support & Service)ではプログラムサービス、サポートサービス、メンバーシップサービスなどが提供されています。

プログラムサービスではアップデートプログラムの提供、郵便番号、銀行支店、市町村辞書データの毎月更新、制度改正に応じたメンテナンスなどのサービスが提供されています。(※大規模な制度改正の場合は有償となる、と書いてあるのPLに影響のあった消費税対応などはソリューションの売上として別途計上されているのかもしれません)

これらについて、現在ではSaaSでは一部当然にサポートされているものもあるかもしれませんが、クラウド以前のパッケージソフト時代から着々とメンバーシップサービスを拡充していったのでしょう。その他、メンバーシップサービスとしてはOffice連携サービスがついていたり、マイクロソフト製品との連携を重点に置いていることがわかります。

OBCの今後の事業戦略と方針

最後に、20年3月期の決算説明会で、今後の事業戦略に書かれていたスライドと、OBCの方針を見てみましょう。

OBCは奉行クラウドを打ち出しており、専門家とユーザーがコミュニケーションをとるスタイルを打ち出しています。会計ソフトのFreeeでは仕訳情報を共有して税理士などの専門家とユーザーがコミュニケーションをとれるのですが、そのスタイルと近いものといえると思います。なお、料金体系のページを見ると専門家ライセンスによって年額の料金が上がるモデルのようです。

また、奉行クラウドでは多くの奉行シリーズが存在しており、それらと連携していくことができる世界観を出しています。奉行クラウドは勤怠管理システム、社員情報管理システムなど他社サービスとのAPI連携も発表しており、これからAPIでつなげていく方向に行こうとしているように見えます。

OBCは中堅・中小規模のコーポレート業務にフォーカスし、パッケージERPを提供してそれを保守サービスのストック収入にしていくことで拡大してきました。

現在では、Freeeをはじめ多くのクラウド会計ソフトが存在していますが、OBCはこれまでのラインナップを資産として用い、クラウド業態への転換を図ることで、これからもDXを推進していくでしょう。

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