地獄でなぜ悪い
午前中、妻は近所のカフェに行ってもらって、自分は子どもたちが起きるまで読書など、起きてからは上の子は全家研のポピー、下の子はお絵描きや塗り絵など。上の子の勉強をみながら、下の子が積んだ積み木を褒めるなど。
11時半ごろになって、このところ毎日観ている『ソードアート・オンライン』を1話だけ観ようとみんなで寝室へ。布団に入りながら観たから、1話観たら眠たくなった。妻はそろそろ帰ってくるかな。子どもたちはリビングへ戻って行ったけれど、自分は目をつむる。ガシャガシャ音が聞こえてくる。ああ、レゴで遊んでるな。このままちょっとうとうとしても大丈夫かな。そんなことを思って寝かかっていると、タチタチタチと下の子の足音が近づいてくる。布団を頭までかぶる。でも下の子は宅配の配達人のようにやってくる。荷物を下ろすように枕元に座る。「宅配ボックスにおねがいします」と行ったところで通じない。「ママ、ママ」といって布団をめくるのである(親のことをどちらもママと言う)。
光の中に目をやると、キティちゃんのカスタネットを持ってきている。手にはめてほしいのだと思って、輪っかを指に通してやる。ほらできた、とカスタネットを叩いてやると、違う違うと首をふる。こちらがカスタネットを叩く真似をして見せても違う違うをする。
「じじ、じじ」
何がしたいのか、
「じじ、じじ」
と言う。
ああそうか、と思い出した。「じじ、じじ」は、星野源の「地獄でなぜ悪い」をかけろと言っているのだった。そこでアレクサに、
「アレクサ、星野源の地獄でなぜ悪いをかけて」と言う。するとアレクサが、
「アマゾンミュージックで 星野源の 地獄でなぜ悪い を再生します」と言ってミュージックスタート。同時に下の子の手元でもカスタネットがスタート。どうせ曲が終わればまたかけろと言われるからリピート再生にする。曲とカスタネットの調子が合っていればいいが、息子のカスタネットは星野源の地獄にはどうしても入り込まない。
右脳と左脳か前頭葉と後頭葉か知らないが、とにかく眠いと言っている脳の隙間に下敷きでも挟まれたような感じだ。片方には星野源が聞こえ、片方にはカスタネットが聞こえる。ばらばらのむちゃくちゃだ。
それがずっと続けばやがて混沌も催眠効果となって眠りに落ちることもできたかもしれないが、ほどなくして息子は飽きて去っていった。寝室に地獄でなぜ悪いだけがかかって軽くナップしたいだけのぼくが取り残される。アレクサに話しかけたら目が覚める気がして、そのままウトウトすることに。
そこへ妻が帰ってきて、
「お父さんなんで寝てるのに地獄でなぜ悪いかけてるの」
と言うので、ことの顛末を説明すると、妻がアレクサを止めてくれた。しょうもないことだが久々にこのことをnoteにでも書いておこうかとスマホを手に取る。
結局寝てないし、子どもの面倒も見ないまま、宅配ボックスの中の荷物のようにひきこもっている。
地獄でなぜ悪い。
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