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王の夢《iquotlog:天才的一般人の些細な日常》

 夢のことを書いて、夢分析をされてしまうと、どんな恥ずかしいことが出てしまうかわからないのだが、ヨセフやダニエルに夢の説き明かしをさせたエジプトのファラオやバビロンの王のように(いや、そこまでではないが)心がざわつく。なので誰か賢い人がいたら説き明かしてほしいと思う。
 ぼくはどこか知らない街のビジネスホテルにチェックインしようとしている。もろもろの手続きを終えたあと、フロントの人が「前が開いてますよ」と言うので、ぼくは、「え、どこですか?」と言って、少しも広くないロビーを振り返った。講演会でもしているのかと思ったのだ。しかしフロントは、「いえ、前が」と言い、少しにやついて視線を落とす。ぼくはやっと事態に気がついて、自分のズボンの前を見た。チャックが開いていた。
「ほんとですね」
と言って、ぼくは少しフロントで世間話をした。恥ずかしい思いを押し隠す魂胆がみえみえだった。
 これが数日前の夢。
 そして今朝。
 寮のような場所だったはずなのだ。ものすごくオンボロの部屋にぼくは住んでいて、その駐輪場では、電動の一輪車と自転車に同時に乗って帰ってきた学生を目撃した。
 それなのに寮に入ると、先日見たのと同じホテルのフロントがあり、フロントは今度は手続きより何より先に、「前が開いてますよ」と言った。
 二度目なので、ぼくは恥ずかしいというより不思議で、
「2回目ですよね。前も言ってくれたの覚えてます?」
と話しかけた。フロントは微笑んでうなずく。
「客に単刀直入に前が開いてることを伝えるってどんな気持ちなんですか?」
と単刀直入に聞いた。前が開いていることを隠さずに伝えるのがホテルマンシップなのか。フロントは謎の微笑を浮かべたまま答えない。
 ヨセフよ。
 ダニエルよ。
 ぼくの前途が開けているのか、今のぼくの振る舞いがスキだらけなのか、教えてくれないだろうか。

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