もう呼ぶことのできないその名前で私を呼んでほしかった
「推しは推せるうちに推せ」という言葉も、「自分がほんとうに必要とするときにアイドルとは出会うものだよ」という言葉もどっちも信じているけど、この言葉は必ずしも両立するものじゃない。必要なのがいまだったとしても、もう推せる状況じゃなかったら?そのときはどうすればいいの?
ワナワンと聞いて浮かぶのはWANNA。KPOPの沼にいる身だけれど、この曲しか知らなかった。そんな自分を私は数日後に死ぬほど後悔することになる。ワナワンが2021MAMAで再結成すると聞いた私は、その知らせに喜んでいるワナブルの方々の「ENERGETIC最高だよね」のツイートに触発され、どんな曲なんだろうというちょっとした興味でエムカを見た。3分ちょっとの曲は、私の世界を揺るがした。3年越しに見ても、画面越しだとしても、むせかえるほどの熱気とエネルギーと魂の煌めきになぜか自然と涙が出た。限られた時間の中で必死に"いま"を生きる、デビューという夢のチケットを掴んだ少年たちの姿はまぶしいくらいに輝いていた。
なんでいまなんだろう。もう活動は終わっているのに。11人それぞれが違う未来へと歩いているのに。私が焦がれる11人の完全体を見れない可能性が限りなく高いのに。
ワナワンにのめりこんでいきながら、そのような大きな葛藤を感じた。私はワナブルではなかった。彼らをリアルタイムで追えていなかったから。解散してから3年後にものすごい勢いで彼らに魅了された私に、どんな名前を付ければいいのだろうか。ワナブルなんて名乗れるはずがない。3年、冬のような時間を耐えたワナブルの方々の気持ちも時間も、私が簡単に推し量っていいものではない。そんな宙ぶらりんな私が、彼らを愛してると言っていいのか。だって私と彼らの間にはなにひとつ、共有された思い出がない。現在進行形で続いているグループのペンになるのとはあまりにも置かれた環境が違う。これから先を考えても、私の人生と彼らの人生がほんの一瞬でも交わるのかすらわからない。いや、その可能性はほぼ0に近い。
ワナワンを当時応援したかったというやるせないもどかしさ。それと同時に感じる、メンバーが"ぼくたちが一緒に過ごしたこれまでの時間"と話したときにひりつくような心の痛みはどうやって治すことができるかな。きっとできないな。だって私にはなにもない。ワナブルとワナワンが、心の中に固く閉じ込めた、封印された、大切な思い出のかけらひとつひとつ、たとえそのかすかな香りを感じることはできても、その思い出の味まではどうあがいてもわからないのだから。
過去の輝いているまぶしい11人の姿を見て、ずっと苦しかった。どこにもやり場のないもどかしさ。もう応援できないという現実に対してバキバキに割れた心。キリキリ痛む胸。終わりが来ないことを望んでいるのに、終わりがあるからこそこんなにも美しく輝けるのだとしたらなんて残酷なんだろう。こんなにも美しくて儚く、切ない別れを私は知らない。大切に大切にとっておいたラスコンの動画を見たら涙腺はいとも簡単に崩壊した。私が見るべきものじゃなかったかもしれない。泣くなんておこがましいのかもしれない。でも、ああ、私もあの頃の彼らに出会いたかった。喜びも悲しみもやるせなさも、すべての感情を分かち合いたかった。限られた時間の中、前だけを見てひたすらに走り続ける、誰よりもかっこいい彼らと人生を共有したかった。もう呼ぶことのできないあの名前で呼ばれたかった。
すでに知ってしまったこの悲しみもしんどさも、多分一生私の心に後悔とともに強く刻まれるだろう。ワナブルの方々が3年かけて、もしかしたらいまも、心にぽっかりとあいた大きな穴を埋めようとしているのに、私の心の穴が一朝一夕に埋まるはずない。いまさら知った、そんな私に対する罰のようなものだと思って、甘んじてこの心の苦しさを受け入れるよ。
でもね、出会えたことに一ミリも後悔なんてしてないの。だって、命を削って生きるかのように魂を燃やす11人の姿が私の脳裏に焼き付いて離れない。こんなに輝いてるひとたち、簡単に見つからない。どれだけ心がバキバキに割れようと、この輝きを知らないまま生きることのほうが多分ずっとつらい。だから私は今日も、彼らがちりばめた煌めきのかけらをかき集めながら生きている。
私が自分をワナブルと定義することは絶対に絶対にできない。でも、ワナワンが大好きだ。大好きで愛おしくて恋しくてたまらない。それだけは確かなのだ。愛してるなんて大きなこと言えないけど、でも、あなたたちみんなを本当に心から大切に思っています。私の心の根っこのひとつになってくれてありがとう。どうか11人それぞれが花道を歩けますように。悲しみの涙を流すことがこれ以上ありませんように。そしてどうか、元気でしあわせで、心を許せる大事な人たちと笑っていてくれたらいいな。あなたたちには笑顔がいちばん似合うから。
211219.
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