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【同時通訳演習 第12回振り返り】通訳者 村&C

こんにちは!
今回は、3月19日に同時通訳演習、第12回にて通訳ペアを組んだC、村で演習の振り返りをさせていただきます。こちらの同時通訳演習は関根マイクさん主催の英語通訳塾の授業の一環として行われたものです。

Introduction to Paintings Through Impressionism

今回の同時通訳演習では受講生Mさんの英語でのプレゼンを日本語へ通訳しました。タイトルは「Introduction to Paintings Through Impressionism:印象派からの絵画入門」です。早いもので2月から始まった同時通訳演習も今回で最後となりました。

今回の演習を振り返って

村: 今回の同通演習は個人的には昔、油絵を習っていたこともあり美術は好きなので馴染みやすいテーマでした。ただ、今回のプレゼンターのMさんがあえて「スライド資料は事前に共有しない。マインドマップだけにする」と言っていたときにはどうなる事かと思いましたが、結果的に最近の自分の課題であった資料にベタ訳(訳出を事前に作っておくこと)をつけすぎてしまうという傾向から強制的に離れられたので準備のやり方を見直す良いきっかけになりました。

C: 資料にとらわれない準備の重要性はとても共感します。村さんがあげているように、あえてイレギュラーな形式だったからこそ、自分に合う準備のやり方が分かったのが収穫でした。今回の私の目標は、最初から最後まで自信のある声で話す、メインメッセージを逃さない、最寄りの訳を意識する(ピンポイント誤爆を避ける)の基本の3つでした。ここを基本に振り返ります。

良かった点

・声と沈黙への対応(C)
についてはかなり改善できました。実は、今回は村さんの自信のあるしっかりした声に負けないようにしようという目標を立てて臨みました。村さん→私という順番だったことも幸いし、村さんの声のトーンを真似するつもりでやってみました。ばらつきはありましたが、今回は過去の自分の演習と比較してもかなりどっしり構えた状態でできましたし、声だけでかなり印象が変わることがわかりました。
また、先生からは「真面目な題材が似合う落ち着いた声」とコメントをいただきましたが、プレゼン最後の部分で本を紹介する箇所では、自分としては感情を乗せた声で話せたと思います。
沈黙に関しては、意識的に言葉を入れていって間が開かないように気を付けました。以前は、原発言が聞けていなくて何を話すべきかわからないときには黙ってしまっていましたが、今回はなんとなくこの話をしているんだなというレベルの理解の部分は諦めて、準備してきた知識からそれらしきことを話しました。また、一瞬ネットの回線がおかしくなって声が聞こえなくなったパートでは、前回のパートナーMさんへの先生からのコメントを参考に、スライドに表示されていた絵画の情報を話しながら通信状況が回復するまでしのぎました。全体的に聞くと間が開いている部分もあったのですが、正しく飛び込む度胸がついたことは大きい成長だと思います。

・思い切った情報の切り捨てができた(村)
Cさんに自信のあるしっかりした声と言っていただいてとても嬉しいのですが、同通演習をやっていくにつれて最近は自分の足りない部分が見えすぎて自信よりも不安の方が強くなってしまっていました。情報が取れるということだけが最後の砦のようになってしまい、強迫観念のように聞いた情報をすべて入れ込むことに重点をおいてしまっていた部分があります。過去二回の同通演習で関根先生に「リスナーフレンドリーでない」というコメントをいただき改めて「メインメッセージを捉える」ことを意識して聞きやすい訳出しようと同通演習に臨みました。もちろん聞きやすいトーンで情報が多く入っていればいるほど良いとは思うのですが、今回はスライドの事前共有もなかったのでわからない部分があって当然と半ば開き直って印象派とその歴史背景の知識を深めるという準備をしました。その甲斐あって上手く重要な部分と枝葉のような情報(重要度の低い情報)の選別をすることができました。結果、まだ声のピッチには課題は残りますが全体的には聞きやすい訳出ができたと感じました。

悪かった点

・コミットまで待ちすぎる、スライドの情報を活用できなかった(C)
村さんが冒頭で触れている通り、今回はマインドマップのみが事前共有されていて、スライドは本番で初見の状態での通訳でした。準備の側面から行くとスライドにとらわれないのはよいのですが、やはり事前に内容や話の流れがクリアでないとしんどいなという印象です。
この前提が原因で、原発言を待ちすぎて沈黙ができたり、フィラーが気になる訳出になりました。また、スライドの英文を読むのに脳のリソースを使ってしまい訳出の文章構成がかなりおろそかになり、Pre-Impressionism(印象派以前)を印象派初期と訳すなど凡ミス誤訳もありました。プレゼンターがスライドの英文を丸読みしている部分は、普段であればベタ訳を用意しているので省エネポイントなのですが、今回はそうではなかったので、録音を聞いていてもかなり苦しそうな声になっていました。こういうときこそチャンキング+FIFOで早めにリロードできればよかったのですが、苦しすぎて実行できませんでした。無意識にチャンキング+FIFOで早めにリロードをできるようになるまで練習します。

・交代のタイミングでバタついてしまう(村)
スライドの事前共有がなかったため、プレゼンの展開が全く分からなかったということも多少あるかとは思うのですが、スピーカーのMさんの発言スピードが速かったのもあって共有タイマーで交代のタイミングが来てもMさんは弾丸のように喋っていて「交代すべきかまだ続けるべきか…?」と自問自答状態になってしまい、自分のターンの終わり間際の訳出が少々やっつけ仕事になってしまったと反省しています。パートナーのCさんにも私が終えて交代するタイミングが分かりづらかったと思います。現状では自分の中でベストな解決策が見えていないのですが、まだ余裕が少ないのが一番の要因かと思います。先日のゲスト講義で講師の巽さんが「通訳をしながらクライアントが送ってくるチャットに対応することもある」とおっしゃっていたのが非常に印象的だったのですが、そのくらいのバッファを自分の中に残しながら訳出できるようになるというのがこれからの大きな課題です。また、語尾が上がってしまうという個人的な課題もこの「余裕がない」という点につきると思います。

パートナーとの比較

・チャンキング+FIFOで早めにリロード が徹底されている(C)
演習中にとても印象的だったのは、村さんは、原発言が聞こえたところから(いい意味で)ちぎって捨てる、ちぎって捨てる、を繰り返して遅れないようにしているという点です。ご自身でもよかったところで書かれている通り、落ち着いて少しずつ処理しているので必要な情報が盛り込まれた訳出になっているのもこういうところに理由があるのかなと思いました。また、センテンスがきちんと着地しているのと村さんの声との相乗効果で、終始安定的なパフォーマンスはこういう風に構築されているのだなということが分かってとても勉強になりました。

・安定して聞きやすい訳出(村)
今回の演習でのCさんのパフォーマンスは関根先生の講評でも「MVP!!」と評価されていたように非常に安定していて聞きやすかったです。以前にご自身でフィラーが多いのが悩みと言っていたと思いますが(悪かった点でCさんも上げていますが私は気になりませんでした)意識してほぼフィラーを無くしていて改善するにはまず本当に意識するところからなのだな、とわかりました。確かにCさんの振り返りにも書いてあるように少々苦しそうな部分はありましたが、全体的に訳出として非常に説得力のある聞きやすいパフォーマンスでした!

これからに向けて

C: 同時通訳演習全6回が終わってしまいました!演習が始まる前の1月末は、自分が同時通訳などするなんて想像するのも怖くてどうしようもなかったのですが、始まってしまえば腹をくくって前回の自分と戦うことだけを考えてひたすら準備と勉強の日々でした。勉強自体は時間も方向性も手探りでしたが、先生の講評では、「あなたのやっていること(勉強の方向性)は間違ってないよ」というコメントをいただき、これから進む道に携えるかがり火をもらったような気持ちです。貴重な機会を用意してくださった関根先生、またプレゼンテーションを用意してくれた受講生のみなさんに感謝します。当面はJACI同時通訳グランプリに向けて、今後も努力を怠らず精進します。

村:私もこんなにがっつりと同通演習をやったのは人生初めてだったので、始まる前はどうなることやら想像もつかなかったのですが毎週準備をして演習をするというサイクルができると内容によっては思ったよりも楽しむことができたので驚きました。やればやるほど成長できるということを身をもって実感することができました。まだまだ逐次通訳も覚束ないのですが、これからもコツコツとベイビーステップで勉強を続けていきたいと思います。同通演習全体を振り返って見ても受講生全員が全く違う内容でプレゼンを行っていてこのような個性豊かな仲間と出会うことができたのも素晴らしい経験となりました。また、この演習を通して自分では気づいていなかった強み(声の使い方を褒めていただくことが多かったので驚きました)に気づくこともできました。最後になりましたが、関根先生には本当に感謝しています。足を向けて寝られません。今週で講義も最終回となりますがこの熱い英語通訳塾で学んだことを生かして、いつの日かブースで関根先生とご一緒できる通訳者となれるよう頑張っていきたいです。

村&Cの振り返りは以上です!
お付き合いいただきありがとうございました!


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