見出し画像

【同時通訳演習 第11回振り返り】M & C

みなさんこんにちは、Cです。同時通訳演習は今回含めあと2回となりました。今回は、Aさんの「ものづくりと安全管理」のプレゼンテーションを題材に、日英同時通訳演習を行いました。パートナーのMさんとともに、今回の演習を振り返ります。

1.よかった点

(C) 今回のトピックは私が普段仕事で扱う分野と隣接しているので、演習本番をとても楽しみにしていました。製造業の管理業務に関する基本的な考え方は勉強したことがあったので、いつもより消耗が少なくできたと思います。比較的余裕があるときは、私でもこういうパフォーマンスができるのだなあと嬉しかったです。またいつもと異なる発見もありました。個人的な特筆すべき点を以下に挙げます。

・うまく回避できるようになってきた
原発言から遅れていて、また原発言の形式上、訳文の構造を変えなければいけなかったとき、原発言そのものの形式から離れて自分なりに言い換えることができました。今までは原発言から遅れたときはばっさり捨てていた部分も、今回は耳で聞いたことを当たらずとも遠からずなところに収めた訳出ができました。これは事前準備の助けもあって、自分で原発言の本質的な意味を捉えることができたから成功したのだと思います。このときの脳みその動きみたいなものを忘れずに、訳出に反映させられる時間を長くできるように練習します。

・準備とうまく付き合えるようになった
今回は準備のやり方を変えました。前回まではスライドを印刷してベタ訳を付ける、わからない表現は端に書き込む方式だったのを、今回は頭から自分で発表を行いつつ、うまく表現できない箇所やベタ訳を読むべきところを用語集としてまとめる程度にとどめました。この方法で準備することで、手元の資料はメモ程度の意識で通訳に取り組み、原発言を聞くことにより集中することができました。今までは手元の資料にかじりついて話していたので、雪崩のように話したり早口になりすぎたりしていたので、原発言を再表現することに主眼をおいて訳出できました。意識的に変えたのではなくプリンターが壊れたからという情けない原因なのですが、怪我の功名ということで次回もこの方式で準備するようにします。

・フィラーと沈黙が減った
初回から悩み続けていたフィラーですが、ここにきて気にならないレベルまで減りました!うれしい!!!私の前回の反省ブログのパートナーとの比較のところで、Nさんが「私がやっていて楽だと感じた訳し方は、とにかくチャンキングとリロードを頻繁に行うことです。私も、長い文章で訳出をしている時はフィラーをついつい言ってしまうので、やっぱり秘訣は短いチャンクにすることなのだと思います。」と書かれていたのが身に染みていたので、なんとか意識してやってみようと思ったのが功を奏したように思います。沈黙についても同じ理由だと思います。

(M) 今回が最後の同時通訳演習でした。これまで課題に感じていた、FIFO、声の使い方だけでなく、同日の講義で教わった予測を意識しながら本番に臨みました。声に関しては、前回の演習では改善があまり感じられなかったので、いつもより声を高くして大げさに抑揚をつけることを意識した結果、前回よりもかなり聞きやすい声で通訳することができました。センテンス内の核となる単語は通常よりも高めの声で発声したこともり、通訳の録音を聞いたときにどこが重要な部分なのかを理解することができました。また、準備の段階でスライドに記載されている単語はすべて暗記したので、労働安全衛生法などの単語も即座に英訳することができ、単語レベルで訳に戸惑う部分はほぼなかったと思います。
今回の同通では、自分の理解が浅い部分と深い部分がはっきりわかっていたので、内容理解に不安を感じている部分は慎重にFIFOで通訳しました。逆に内容理解が深い部分は、スピーカーの話を予測しながら、自分の言葉で再構築しながら大胆に訳すことを意識できたと思います。また、一言で表現するのが難しい言葉を自分なりに解釈して、説明しながら通訳できたのは良かったと思います。例えば、「横展開」という言葉を"share measures with other departments"と訳しました。しかし、演習終了後に関根先生が指摘してくださったように、「横展開」という言葉がプレゼン内で何度も出てくる可能性を考えて、最初は"horizontal rollout"のように訳してから、上記のような説明を加えた方が良いと思いました。こうすることで、「横展開」という言葉が何度も出てきたとしても、二回目以降は"horizontal rollout"で統一して訳出時間を大幅に短縮することができます。ちなみに、準備段階で「横展開」の逐語訳を考えていたのですがなかなか良い訳が思い浮かばず、本番はコンテキストに合わせて説明しながら訳すことにしたのですが、講評のときに関根先生が上記の"horizontal rollout"という訳をさっと出してくださり痺れました。今後この訳を忘れことはないと思います。


2.悪かった点

(C)基本的なところがまあまあできるようになってくると、細部の気を付けるべき点が浮き上がってきました。特に気になったのは、文法の細かいミスや文章の言い直しが多いということです。
改めて録音を聞き直すと、冠詞や時制が甘いことに始まり、単数形の主語で話し始めたのに名詞が複数形、などなど粗がぼろぼろありました。また訳文の構造が決めきれないまま見切り発車していて、2,3語話した後に言い直して初めから文章を始めていたところが数か所ありました。文法のミスは訳文が稚拙に聞こえるし、文章の言い直しは聴衆を混乱させるのでここは新たな課題だなと思いました。このことを同日の勉強会で受講生に相談したところ、「文法に気を付ける、だと範囲が広すぎるから、意味に影響を与える部分にまずはフォーカスして意識していくのはどうでしょうか」という的確なアドバイスがもらえたので、今後の当面のテーマはこれに決まりです。

(M) 僕のインターネット接続の問題で10秒間ほどスピーカーの声が聞こえなくなり黙ってしまったのですが、演習終了後に関根先生が指摘してくださったように、「ネットの接続トラブルで音声が聞こえていません」と一言説明したほうが親切かつ、通訳を聞いている人も混乱せずに済むと思いました。
また、今回はフィラーが目立ちました。フィラーが気になることはほぼないのですが、今回の同通では"So"でセンテンスを始めている場面が多かったです。フィラーを完全に無くすと逆に聞きづらい通訳になってしまうので少しは入れてもいいと思いますが、今回は自分でも気になるほど多かったので意識的に改善していきたいと思います。
フィラー以外にも、前回同様に不自然な表現文法ミスが目立ちました。内容理解が深く、自信を持って通訳できている部分はミスがあまり多くないのですが、内容理解が薄く、スピーカーの言葉をなんとか英語にしようとしている部分は、表現的にも文法的にも雑になってしまいました。これは内容理解や通訳技術だけでなく、その土台となる言語運用能力が低いことが原因だと思うので、通訳技術と平行して基礎的な言語能力の向上にも継続的に取り組んでいきます。

3.パートナーとの比較

(C)Mさんの録音を聞いて抱いた全体の印象は、Mさんが「よかったところ」で挙げられているとおり、内容を先読みして訳出していく場面と慎重にFIFOで進む部分を適切に切り替えて取り混ぜながら訳出しているということです。当日のプレゼンは予想よりハイペースで進んでいっていたので、時間的に私のターンであろうと予測していた部分がMさんの持ち時間内に入っていった箇所がありました。通訳中は、ビデオ通話で互いの姿が見えているのですが、その部分では私の目には若干慌てるようなMさんの姿がありましたが(Mさん、こんなこと書いてすみません!)、録音を聞き返すとFIFOで慎重に進んで情報を取りこぼさないようにしていて、慌てている(ように見えた)素振りは声に影響していませんでした。
エネルギーの使い方の切り替えができていれば全体のクオリティが損なわれないということがよく分かったので、素晴らしい切り抜け方を見せていただきとても勉強になりました。

(M) Cさんとパートナーを組むのは初めてでしたが、Cさんの声の安定感に驚きました。スピーカーから遅れている場面でも、早口になったり表現の質を犠牲にせずに、一定の速度とトーンで淡々と通訳していました。ピンチの状況でも焦りが声に現れることなく通訳ができると、聴衆も安心して聞いていられるので、この安定感はCさんの通訳者としての強みだと思います。また、難しい概念や言葉が多く出てくるプレゼンだったにも関わらず、間をほぼ開けることなく滑らかに訳出していたので、準備を徹底してきたのが伝わりました。

4.今後に向けての抱負

(C) 次回が最後の同時通訳演習です。文法などの細かい点に加え、基本に立ち返って以下の3点にフォーカスして取り組みます。
・最初から最後まで自信のある声で話す
・メインメッセージを逃さない
・最寄りの訳を意識する(ピンポイント誤爆を避ける)
3か月である程度できるようになってきましたが、どれもまだまだ改善の余地があります。苦しいときは声が細くなったり発音が不明瞭になったりするし、文意が分からず飛び込んで誤爆するのは過去何度もやってしまいました。また、今回の演習では、原発言を這うようについていって少しずつ処理するときの脳の感覚が分かったので、上記を意識しつつ脳の感覚を再現できるようにしたいです。泣いても笑っても最後ですので、後悔のないように準備して全力で取り組みます。

(M) 今回が僕にとって最後の同時通訳演習でした。このような実践に限りなく近い環境で練習できる機会をくださった関根先生と、プレゼンを準備してくれた他の受講生の皆さんに感謝したいです。同時通訳演習はこれで最後ですが、5月にはJACI主催の同時通訳グランプリが控えています。演習を通して発見することができた自分の課題や強みを意識しながら、今後も練習に励んでいきたいと思います。

以上、M&Cペアの振り返りでした。ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?