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大学共通テスト「情報」サンプル問題,「コミュニケーションと情報デザイン」領域の問題を見てみよう

 高等学校では,2022年度より新学習指導要領が学年進行で適用され,情報の科学的理解を基軸とした「情報I」が必履修科目となります.「情報I」は「1. 情報社会の問題解決」「2. コミュニケーションと情報デザイン」「3.コンピュータとプログラミング」「4.情報通信ネットワークとデータの活用」から構成されます.さらに,大学入学共通テストでは,2025年から情報Iの内容を試験範囲とする教科「情報」が導入される方向です.そこで今回は,大学入試センターが公開している,大学入学共通テスト「情報」サンプル問題(以下,サンプル問題)の中で特に「<2>コミュニケーションと情報デザイン」の領域について見てみたいと思います.

 サンプル問題では,大問1が小問群,大問2が「プログラミング」,大問3が「データの統計処理」に関する問題になっています.「コミュニケーションと情報デザイン」の領域の問題は大問1の設問2, 3で扱われています.

 設問2は,図解に関する設問です.問題を上記リンクページのpdfファイルから引用します.

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 解答群は,それぞれ「(0). ピラミッド型図表,(1). ベン図型図表,(2). 2軸マトリックス型図表 (3). 放射型図表,(4). 組織図,(5). サイクル図」です.[ オ ] は,重複し得る並列要素を表現するので(1)のベン図型図表が正答です.[ カ ]は,PDCAがPDCAサイクルと呼ばれるように,Plan(計画),Do(実行),Check(評価),Action(改善)を繰り返して継続的に品質を管理していく手法であることを知っていれば(5)のサイクル図が正答と分かります.[ キ ]は,価格と重量の2要素をぞれぞれ2分類して表現するということですから,2軸マトリックス型図表の出番です.正答は(2)となります.それぞれの図解の適用領域を知るだけではなく,図解する内容を理解している必要があります.一方で,逆にそれが日常の活動の中で体得されていれば特段問題なく正答が導けるでしょう.高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)では,学習9 「情報をデザインすることの意味」の内容にあたります.

 設問3は,情報のデジタル化に関する設問です.アナログデータをデジタルデータに変換する方式とデジタルデータの特徴について問うています.

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 図1中の手順1が標本化,手順2が量子化,手順3が符号化にあたります.よって[ ケ ]の正答は(1)の「量子化」になります.量子化とは,アナログ信号を離散的な値で近似することですので,本文の場合は(0)の「区間の濃淡を一定の規則に従って整数値に置き換えており」が[ ク ]の正答となります.デジタルデータは,複製,伝送,時間経過によってデータが劣化しないという特徴があります.よって[ コ ]の正答は(0)の「コピーを繰り返したり,伝送したりしても画像が劣化しない」となります.実際にさまざまな情報コンテンツがどのようなデータ形式によりコンピュータ上で保存されているかを知っていることは非常に重要です. 高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)では,学習6 「デジタルにするということ」の内容にあたります.

(情報処理学会 情報入試委員会 伊藤一成(青山学院大学))

(2021年8月17日受付)
(2021年9月30日note公開)

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