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編集にあたって─DX or Die?:読者の皆様へのメッセージ─

特集「DX(デジタルトランスフォーメーション)」より

青山幹雄(南山大学)
位野木万里(工学院大学)
和泉憲明(経済産業省)

 本特集はDX(Digital Transformation)[デジタル変革]に関する包括的な解説である.DXは顧客や社会の課題の解決,事業価値の増大を目的として,デジタル技術の研究開発と活用,経営と組織,人材育成と企業文化など多面的な変革の総称である.そのため,DXにかかわる立場でさまざまな捉え方ができる.本特集では,DXに取り組まれている研究開発部門,経営部門,IT/デジタル技術ベンダ,行政,教育,それぞれの立場からDXの実像を解説する. そのため,次の4部からなる.


第1部 DXとは何か,我が国の現状は?

 まず,DXの意味と提起する課題,DX推進のアプローチと情報処理研究の機会など,DXの全体像を示す(青山).次いで,政府におけるDX推進の政策展開を紹介する(和泉).DX推進の尺度であるDX推進指標を企業で適用したデータの分析から国内におけるDXの現状を紹介する(岡村ほか).

第2部 DXの技術と教育,人材育成

 DXでは顧客と直接接点を持ち,顧客の問題発見と解決による価値創出が期待される.この技術として,要求工学,デザイン思考などを紹介する(位野木).一方,DX推進の大きな阻害要因としてレガシーシステムがある.これをリエンジニアリングするための分析技術などを紹介する(松尾).さらに,DX が提起する人材,教育,雇用の問題とアプローチを解説する(青山).

第3部 DXの実践

 (株)三菱ケミカルホールディングス(浦本),全日本空輸(株)(三浦),中外製薬(株)(志済)におけるDXの先進的取り組みをCDO (Chief Digital Officer)の立場から紹介する.大企業におけるDX推進の課題,アプローチ,知見を共有できる.また,中小製造業における先進的取り組みとして工場の完全自動化を実現しているHILLTOP(株)の事例を紹介する(山本).

第4部 デジタルプラットフォーム

 DXの基盤となるデジタルプラットフォームの事例としてIoTに着目した価値創出プラットフォームLumada(馬場ほか)とクラウドコンピューティング(岡嵜)を紹介する.

DX or Die?

 ゲストエディタの3名は国や産業界の研究会などにおいてDXの調査研究やレポートによりDXの啓蒙,普及に努めてきた.本特集を企画した動機は我が国におけるDXへの取り組みが欧米諸国から立ち後れているのではないかという危機感にある.一方,DXを先行した組織では顧客や機器から得たデータとデジタル技術を活用した事業創出やデジタルプラットフォームの提供を実現している.
 DXには研究開発,教育,経営とその実践に至る幅広い問題があり,産学官の協力が必須である.皆様が本特集からDXの意義と提起する問題,研究開発の新たな機会を理解いただき,挑戦されることを期待する.
 自動車業界では「100年に1度の,死ぬか生きるか」の変革が進行中といわれている.これは,すべての産業と社会全体にも波及している.私たちは「デジタル革命」の最中にあるといえる.
 最後に,本特集に寄稿いただいた著者の皆様ならびに関係各位に感謝します.また,本特集の実現にご尽力をいただきました会誌編集委員会の河原亮氏はじめ委員の皆様に感謝します.
 なお,著者紹介は執筆している各解説記事を参照願います.

(「情報処理」2020年11月号掲載)

※本特集記事(全体)を入手するには以下の方法がございます。ぜひご利用ください。
1)情報処理学会会員になり(http://www.ipsj.or.jp/nyukai.html)、電子図書館(https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/)に登録する。
2)fujisanで購入する。(https://www.fujisan.co.jp/product/1377/
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