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「情報処理」無償公開記事

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情報処理学会 会誌「情報処理」のバックナンバーから,無料で読める記事の一部を順次紹介していきます.
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#情報教育

2024年度情報関係基礎追試験第1問

安田 豊 (京都産業大学 情報理工学部)  今回は令和6年共通テストの情報関係基礎追試験問題¹⁾の第1問をとりあげます.  第1問は問1,2,3の3つの小問からなり,知識と技能を問う小問および中問の集合,という構成です.これ以降,本稿ではまず問1,2,3それぞれについてコメントし,その後で全体をまとめます. はじめに「情報関係基礎」のこと ここで題材にした「情報関係基礎」は大学入試センター試験(現在の共通テストの前身)に1997年に追加された試験科目であり,内容として

南山大学のサンプル問題

中西 渉(名古屋高等学校) 南山大学のサンプル問題 南山大学は2024年3月26日に「情報」が入試に導入されることについての説明会を開催しました.全学統一入試(個別学力試験型)の理工学部の理科・情報では「物理基礎,物理」「化学基礎,化学」「情報I」から大問ごとに選択できることが発表され,同時にイメージをつかむためのサンプル問題が公開されました ¹⁾(脱稿後の,2024年7月19日に,サンプル問題が追加で1セット公開されました ²⁾).  情報のサンプル問題は情報-1と情報

日本大学文理学部 「情報」サンプル問題 問題IIIの解説

植原啓介(慶應義塾大学環境情報学部)  2025年度入試から大学入学共通テストに「情報I」が導入されることとなり,個別入試にも教科「情報」を出題する大学がちらほら見られるようになりました¹⁾ ²⁾.  日本大学文理学部の一般選抜(A個別方式)においては,2025年度入試から全学科で「情報I」を選択できるようになります.それに向けて,日本大学文理学部は2024年3月27日にサンプル問題³⁾を公開しました.今回はこのサンプル問題の問題IIIについて解説していきたいと思います.

2024年本試験問題 第2問 ついに異星人が地球を訪れた.しかも一度に,トウ星,カイ星,ホク星,リク星という,四つもの星から.

辰己丈夫(放送大学)  今回取り上げるのは,2024年1月に実施された大学入学共通テストの「情報関係基礎」第2問です.この第2問の位置づけなどは,大学入試センターの資料などを見ると分かりますが,手短に書くと「アルゴリズム」や「数量的関係」を重視した問題となっています.2022年からの学習指導要領における「情報I」でも,モデル化とシミュレーションは当然,取り上げられる話題ですから,この問題に取り組んでみることも悪くないでしょう.  この記事では,まず,問題を解く受験生の気持

チェックディジットを計算しよう

久野 靖(電気通信大学)  まだまだ続く「教科『情報』の入学試験問題って?」,2025年の試験開始がいよいよ近づいて,大学入試センター以外に,「情報」の独自入試を実施する大学からの模擬試験問題なども入手できるようになってきました ¹⁾ ²⁾.  その中から今回は,京都産業大学が協力高校において実施した模擬試験の問題のうちの1問,チェックディジットの問題を取り上げます.独自入試の問題なんて難しそう,と思いましたか?  確かに,大学入試センターの試験にないようなタイプの問題

電気通信大学 試作問題 第3問 数字列の並び替え

佐藤 喬(東京都立産業技術高等専門学校)  今回は,2023年11月26日(日)に電気通信大学で実施された個別学力検査「情報」の受験体験会で用いられた試作問題 ¹⁾ の第3問について解説します.この問題は,6桁のある数字列を並び替えて,辞書式順で次にくる数字列を求める手順について考える内容です. 問1の解説 それでは,問1から見ていきましょう.図Aは,6桁の数字列の定義と大小関係について,例を用いた説明です.  問い(1)と(2)は,手を動かせば解ける内容と思われます.

「最小交換貨幣枚数」による上手な払い方

冨澤眞樹(前橋工科大学)  令和7年度大学入学共通テスト試作問題「情報Ⅰ」の第3問を取り上げる.第3問は,釣り銭に関する問題であり,アルゴリズムに関連した問題である.キーワード “お釣り 最適化” や “お釣り 最小” でネット検索すれば,釣り銭に関する問題やアルゴリズムに関するウェブサイトが多く見つかる.釣り銭問題は馴染みのある問題なのだろう.しかし,電子マネーやバーコード決済を使っている受験生には,釣り銭問題は馴染みが薄いかもしれない.試作問題としては良い題材だが,令和

「確率モデルのシミュレーション」は,問題設定を楽しみながら解こう!

林 宏樹(雲雀丘学園中学校・高等学校)  今回は,令和4年(2022年)11月9日に大学入試センターより公開された「情報」の試作問題 ¹⁾ の第2問Bのシミュレーションを扱った問題を解説します.分野としては情報Ⅰ(3)コンピュータとプログラミングの位置づけであり,この分野にはモデル化とシミュレーションも含まれてます.  まず,シミュレーションって言葉を聞くと,難しそうだと感じてしまいます.シミュレーションの問題のポイントは,「問題文の内容が,図のどの部分を表現しているか」

湘南工科大学「情報」のサンプル問題の解説と分析

加藤和幸(金城学院大学) 湘南工科大学では2023年度入試科目より「情報」が開設 神奈川県藤沢市にある「湘南工科大学」では,今年度(2023年度入試)の一般選抜独自試験より「物理・化学・情報」の中からの選択科目として「情報」が出題されている.多くの大学の2025年からの大学入学共通テストでの「情報」の扱いに注目が集まる中,2年早く入試教科で「情報」を取り入れている「湘南工科大学」の取り組みに注目したい.  2024年度の入試はまだ旧課程での科目編成のため「情報Ⅰ」での出題

試作問題「旧情報(仮)」の第4問に見る「ネットワークとセキュリティ」問題の工夫

安田 豊 (京都産業大学 情報理工学部)  連載『教科「情報」の入学試験問題って?』,今回は大学入試センターが公開した試作問題のうち「旧情報(仮)」の第4問をとりあげます.第4問ではネットワークとセキュリティ関連の事項を扱っています.  第4問は9つの小問からなりますが,それらすべてが前文で示される3人の家庭のネットワーク環境(と言っても1つはネットワーク「なし」環境ですが)に関連する形で提示されます(図-1).  実に手描き感あふれる図ですね.こうした具体的なネットワ

2005年度 情報関係基礎 第4問「デジタルカメラのユーザインタフェース」の問題

白井詩沙香(大阪大学)  今回の連載「教科『情報』の入学試験問題って?」では,2005年度大学入試センター試験科目「情報関係基礎」本試験の第4問を紹介します.  この問題は,井手先生の記事「じゃんけんをプログラミングするよ」で触れられていた放送大学の辰己丈夫先生が厳選した「情報関係基礎」$${^{1)}}$$の良問の1つで,ユーザインタフェースの仕様が異なる2種類のデジタルカメラの使い勝手を比較させる問題です. 問1:デジタルカメラX型の設定変更操作に関する問題 第4問

2023年本試験問題 第4問 「表計算でデータサイエンス?」

高橋尚子(國學院大學)  今回は,2023年1月に実施された大学入学共通テストの「情報関係基礎」第4問$${^{1)}}$$です.  第4問は,第3問と対で,どちらかを選択する問題で,内容は表計算ソフトウェアを使ってのデータ処理(一種のプログラミング)を扱っています.プログラミングができない人が選択するとか,たかが表計算かと袖にすることはできません.題材がとても実用的で,一度じっくり取り組んでみる価値があります.  今回の題材は住民活動の情報共有サイトです.4つのカテゴ

ドント方式による議席配分

岩崎英哉(明治大学)  今回取り扱うのは,2021年3月に公開された大学入学共通テスト「情報」のサンプル問題の第2問で,プログラミングに関する問題です.この問題は,比例代表選挙において各政党の得票数から具体的な当選者数(議席数)を決定する方法である「ドント方式」を題材としています.現在の日本の国政選挙における比例代表選挙は,衆議院では候補者に順位のある(ただし同順位の候補者を許す)拘束名簿式,参議院では候補者に順位のない非拘束名簿式が採用されており,いずれも少し複雑なシステ

2023年本試験問題 第2問 文字をどう伝えるか

辰己丈夫(放送大学)  今回取り上げるのは,2023年1月に実施された大学入学共通テストの「情報関係基礎」第2問です.この第2問の位置づけなどは,大学入試センターの資料などを見ると分かりますが,手短に書くと「アルゴリズム」や「数量的関係」を重視した問題となっています.2022年からの学習指導要領における「情報I」でも,モデル化とシミュレーションは当然,取り上げられる話題ですから,この問題に取り組んでみることも悪くないでしょう.  本稿では,まず,問題を解く受験生の気持ちに