情報処理学会・学会誌「情報処理」

60年の歴史を持つ情報処理学会の学会誌「情報処理」から注目の話題をお届けします.最新技…

情報処理学会・学会誌「情報処理」

60年の歴史を持つ情報処理学会の学会誌「情報処理」から注目の話題をお届けします.最新技術や情報教育など幅広い話題を専門家による質の高い記事でご紹介します. 情報処理学会のWebサイトはこちらです→:https://www.ipsj.or.jp/

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最近の記事

電気通信大学情報理工学域一般選抜前期日程サンプル問題【1】浮動小数点方式の表現を題材にした問題

和田 勉(長野大学) 解説する問題 ここでは,電気通信大学から参考文献1)で令和6年(2024年)7月に公開された,情報理工学域一般選抜前期日程「情報」サンプル問題のうち,【1】の問題を解説します.同大学ではすでに令和5年(2023年)11月に「試作問題」が公開されていますが今回これに続いて公開されたものです.なお先に公開された「試作問題」のうち第3問は本シリーズですでに解説されています²⁾.  今回は,浮動小数点方式を表す方式のひとつ,FP8と呼ばれる方式を題材にしたも

    • 好奇心の力:Human-in-the-Loopベイズ最適化によるデザイン支援

      小山裕己 (産業技術総合研究所) 受賞タイトル Computational Design Techniques and Interactions 受賞の喜びと感謝 このたびは栄誉ある賞にご選出いただき,大変嬉しく思います.これまでの研究活動を評価していただけたということで,改めてこれまで私の研究活動を支えてくださった皆様に心から感謝したいと思います.これからもますます研究に精進し,さらなる貢献を目指して努力してまいります. 研究の転機と新しい挑戦 受賞テーマの「Comp

      • 選定にあたって

        松原 仁 (IPSJ/ACM Award for Early Career Contribution to Global Research選定委員会委員長/京都橘大学工学部情報工学科)  情報処理学会(IPSJ)とAssociation for Computing Machinery(ACM)は,両学会が対象とする研究領域において国際的な研究活動により顕著な成果をあげた若手研究者を対象として,IPSJ/ACM Award for Early Career Contribut

        • AI×圧縮

          孫 鶴鳴 (横浜国立大学大学院工学研究院) 受賞タイトル Research on Neural Network-based Learned Video Compression  このたびは,IPSJ/IEEE-CS Young Computer Researcher Awardを受賞し,大変光栄に思います.選考委員の先生方,推薦していただいた先生,共同研究者の方々に,深く感謝いたします.  私の研究テーマは動画像圧縮です.動画像はインターネットトラフィックの80%以上を

        電気通信大学情報理工学域一般選抜前期日程サンプル問題【1】浮動小数点方式の表現を題材にした問題

        マガジン

        • 教科「情報」の入学試験問題って?
          39本
        • 「情報処理」無償公開記事
          259本
        • 未踏の第30期 スーパークリエータたち
          16本
        • 「情報処理」巻頭コラム
          50本
        • 情報処理学会誌編集長の独言(ひとりごと)
          31本
        • 2023年度 研究会推薦 博士論文速報
          51本

        記事

          人間とAIの協働のための機械学習

          馬場雪乃 (東京大学大学院総合文化研究科) 受賞タイトル Outstanding Research on Machine Leaning for Human-AI Collaboration  このたびは栄誉ある賞をいただき,大変嬉しく存じます.推薦・選考に携わった皆様,ご指導いただいた先生方,共同研究者の皆様,日頃の研究活動を支えてくださっている皆様に,深く感謝申し上げます.  私は,人間の中から信頼できる情報源を見つけ,その判断や知見を人工知能に取り入れる技術の研究

          人間とAIの協働のための機械学習

          自分の可能性をひらくためのバーチャルリアリティ研究

          鳴海拓志 (東京大学大学院情報理工学系研究科) 受賞タイトル Outstanding Research on Human Augmentation with Virtual Avatars  このたびはIPSJ/IEEE Computer Society Young Computer Researcher Awardを賜りましたこと,大変光栄に存じます.本賞へのご推薦をいただきましたエンターテインメントコンピューティング研究会の皆様,ならびに研究室メンバー,共同研究者の皆

          自分の可能性をひらくためのバーチャルリアリティ研究

          選定にあたって

          松原 仁 (IPSJ/IEEE -Computer Society Young Computer Researcher Award選定委員会委員長/京都橘大学工学部情報工学科)  情報処理学会(IPSJ)とIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)は,情報学の分野において国際的にイノベーションの起点となる重要な研究開発の成果を達成した若手研究者・技術者を表彰の対象として,IPSJ/IEEE-Computer

          編集にあたって

          竹内郁雄 (IPA未踏IT人材発掘・育成事業 統括プロジェクトマネージャ)  未踏事業で採択され,優れた成果や成長を示した人たちを未踏スーパークリエータと呼ぶ.数年前から,未踏事業は3つの事業に拡大しており,ここで「未踏事業」と呼んでいるものは正確には「未踏IT人材発掘・育成事業」であり,年度始めに25歳未満の若い人たちを対象とした事業である.  未踏事業は2000年度にミレニアム事業として始まったが,この年次報告は,2012年度から「未踏IT人材発掘・育成事業」(以下,

          月経中のストレス緩和を目的としたショーツ型経血量測定デバイスUnleak

          吉田 紗彩(よしだ さや) 常次 舞(つねつぐ まい) 高安 優多(たかやす ゆうた) 能﨑 直紀(のざき なおき)  生理期間中,多くの女性が感じる最大のストレス─ 紙ナプキンからの経血漏れへの不安.この問題に挑戦したのが,吉田さんたちが開発した「アンリークショーツ」だ.このショーツ型デバイスは,紙ナプキンの状態をセンシングし,経血漏れが起こる前にスマホアプリでユーザに通知する画期的なシステムだ.  従来の生理用品には,それぞれ一長一短があった.紙ナプキンは手軽だが経血

          月経中のストレス緩和を目的としたショーツ型経血量測定デバイスUnleak

          みんなで遊べる競技かるた

          丸山 礼華(まるやま あやか)  競技かるたは,百人一首の札を早く取ることを競うゲームである.百人一首の和歌を覚えているかどうかや,取る動作への慣れの影響によって札を取るまでの時間に大きな違いが現れてしまうため,一緒に楽しめる人が制限されてしまう.  丸山さんは競技かるたにまつわる一連の体験を,VR 空間で本格的に体験することができる「みんなで遊べる競技かるたアプリケーション」を開発した(図-1).VR技術を用いることで,視覚や聴覚の情報をプレイヤごとに変化させることが可

          TEEを用いたセキュアかつ高性能なデータベースシステム

          福山 将英 (ふくやま まさひで)  福山さんは,クラウド環境において機密性と性能を両立させたデータベースシステムCASSA(Cloud-Adapted Secure Silo Architecture)を開発した.  近年クラウドサービスの利用が増加する中,クラウド事業者は管理者権限を有しており,サーバ上のメモリのデータを物理的な手段で読み取ることが論理的に可能である.クラウド事業者や背後の国家が信用できない場合,運用プロセスの監査やソフトウェアレベルの保護だけでは不十

          TEEを用いたセキュアかつ高性能なデータベースシステム

          空間を奏でる電子楽器phonoma

          長谷川 泰斗(はせがわ たいと)  長谷川さんは,空間をリアルタイムに捉え,音に変える機能を持つポータブルな電子楽器「phonoma」を開発した.数カ月単位で何個も試作機を作り,試行錯誤を重ねた.現時点で量産はしていないが完成品は市販品レベルの仕上がりの外装で,実際に誰もが触って演奏できるものを作り上げた(図-1).  この楽器は,カメラのように構えて演奏し,空間の様子をデータとして取得して即興演奏に反映させることができる(図-2).  phonomaは,以下のハードウ

          空間を奏でる電子楽器phonoma

          ロボット記述言語に基づくドローン開発支援ツールTobas

          土肥 正義(どひ まさよし)  近年の産業用ドローン市場規模の急速な拡大の背景には,ドローンの頭脳であるフライトコントローラの発展がある.Pixhawk などのオープンソースハードウェアとPX4 やArduPilot などのオープンソースソフトウェアの発展により,専門知識を持たない人でもドローンの開発が可能になったが,従来のフライトコントローラには飛ばせる機体形状が限られているという課題がある.従来のフライトコントローラで飛ばせる機体と飛ばせない機体を平面図にまとめたものを

          ロボット記述言語に基づくドローン開発支援ツールTobas

          テーマパークでの満足度を最大化するためのプラン作成支援アプリケーション

          竹味 和輝(たけみ かずき) 小島 聡太(こじま そうた) 刀禰 有紀彦(とね ゆきひこ)  テーマパーク好きの多くが抱える悩み─長い待ち時間と効率的な回り方.この課題に挑んだのが,竹味さんたちが開発した「TDL/TDS AIナビ」アプリだ(図-1).東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)の待ち時間を予測し,最適なルートを提案するこのアプリは,パーク体験を大きく変える可能性を秘めている.  アプリの核となるのは,機械学習を用いた待ち時間予測システムだ

          テーマパークでの満足度を最大化するためのプラン作成支援アプリケーション

          手話認識による逆引き検索が可能なクラウド型手話辞典

          髙橋 亮太(たかはし りょうた)  髙橋さんは手話サークルでの活動を通じて,手話の初学者がろう者とのコミュニケーションに苦労している現状を認識した.初学者が直面する大きな障壁の1つが,使われている手話の意味を自分で調べることが難しいということである.英和辞典と和英辞典が存在するように,手話翻訳にも順引きと逆引きが必要である.既存の手話辞典やクラウドサービスには,手話から日本語の意味を調べるための逆引き機能が十分に備わっていない.この逆引き機能を実現する上での課題は主に2つあ

          手話認識による逆引き検索が可能なクラウド型手話辞典

          Pythonにトランスパイル可能な静的型付け言語Erg

          芝山 駿介(しばやま しゅんすけ)  芝山さんはPythonにトランスパイル可能な静的型付けプログラミング言語「Erg」を開発した.Erg言語は,Pythonの柔軟性を維持しつつ,静的型システムによる高い検証能力を提供する新しいプログラミング言語である.  最近AIや教育の分野でよく使われているPythonは,動的型付け言語であるためバグの発見が遅れ,開発効率が低下するという問題がある.このような問題を解決するため,ほかの言語ではTypeScriptやScalaのように動

          Pythonにトランスパイル可能な静的型付け言語Erg