ハノーバー 下

⭐️⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

皆さんこんばんは
フリックフラックの髙橋壱歩です。


いつも僕の記事を
お読みいただきありがとうございます。


さて、今日は昨日の続きです。


今日の記事から読んでいただいても
多分わけがわからないと思うので
是非お時間ある時に
昨日のこの記事からご覧ください


それではスタートです。




2018年の夏、
僕は前のコンビである
シンプルテンプルの第2回単独ライブの
準備をしていました。

単独ライブをするのは2回目でしたが
前回である去年と今年とでは
単独に対する姿勢は違っていました。


なぜなら僕たちは
2019年の春に解散することが
決定していたのです。


解散が決定してから
コンビの方針を
「好きなことをする」
に変更していた僕たちは
それぞれにネタを作り
ネタ合わせをして本番に備えました。

ゲストに何組かを呼び
MCは去年同様ハネウマにお願いしました。


ハネウマの2人は快く了承してくれました。




準備やゲストの方々の力もお借りして
単独は無事終わりました。

何事もなかったように


しかし僕には引っかかることがありました。

その時、まだ誰にも解散することを
告げていないどころか
仄めかすことすらしていなかったのです。

親交が深かった
メンバーにすら何も伝えていませんでした。




そして数ヶ月経ち、
その年のハネウマと僕たちの
M-1が終わりました。

ハネウマは2回戦敗退
僕たちは1回戦敗退でした。

前年の結果が完全に逆になったのです。

僕はいつからこうなったのだろうと
葛藤しながらも答えは出ず、
空虚な半年間を過ごしました。



あっという間に時は過ぎ、2019年の4月

僕たちは主催ライブを行い、
そこで正式に解散を発表しました。


その時ゲストとして出てくれた
ハネウマはもちろんのこと


一緒に出てくれた
キイロイゾウサンの2人と
ナックラーの2人も
僕らの解散および
僕の元相方の引退を悲しんでくれました。

会場である日本橋UPsで
寂しいな、なんて言いながら
元相方が近くのスーパーで買ってきた
ビールをみんなで飲みながら
話しました。

事前に解散を知っていたのは僕だけ

それが理由なのかもしれませんが
僕以外の人たちが僕以上に
とても寂しがってくれていたのを
覚えています。



そこから更に時は流れ、
5月になりました。

僕がフリックフラックを組み、
再出発を目論んでいた頃
ハネウマの2人からある物を
渡されました。


それは彼らの初単独ライブの
チケットでした。


そうか
単独をするのか


僕はそのチケットを握りしめ
会場であるZAZA HOUSEに向かいました。



一番後ろの席で彼らの単独を見ました。


その単独で2人は結婚を発表しました。

最後部で見ていた僕は思いました。

そうか
結婚するんだな


不思議なことは何もありませんでした。


出会った時から僕と彼らとの間には
5歳という
年の差があったからです。


自分の同級生ですら
何人かは結婚しています


5歳も年上の同期が結婚することは
何も不思議なことではないのです。

でも


何か最初からの同期が
少し遠い存在になってしまったようで
寂しい気持ちになったのでしょうか


僕はライブ終わり
誰にも見つからないよう
すぐに会場を後にしました。


会場を出てすぐの場所にある喫煙所で
タバコを吸いながら
少し考え事をしました。

タバコを口に当てる間隔が
いつもよりも短かったように思います。


僕はそこで悟りました。


もしかしたら
僕は前までのように

もうそこまで
ハネウマと深く関わるようなことは
ないのかもしれないと


最初に知り合った同期と
距離ができるのは少し寂しいけれど

その時にはもう既に
僕には認識しあった同期が何人かいました。


別に同期はハネウマだけじゃないし…


その日見たハネウマの
何本かのネタを反芻しながら
僕は帰路につきました。




そこから半年ほど経ちました。

2020年2月


Twitterを見ていた僕の目に
あるtweetが飛び込んできました。

ハネウマが松竹に入り、
コンビ名がハノーバーに変わる。

これを見るより前から
入るかもしれないという事は
風の便りでなんとなく把握していたので
それほど驚くことはありませんでした。


ちょうどその頃
フリックフラックとしての活動の幅を
広げていた僕には
少しだけ心境の変化がありました。

それは
もっと自分たちのライブをして
そこにハノーバーを積極的に呼ぼう

と言うものでした。


別にハノーバーを呼ぶためにライブを
しようという
わけではありません。

しかし今までの僕には
前のコンビで仲良くしていて
解散を事前に報告せぬまま
少しだけ疎遠になっていた同期に対して
新しいコンビになってからも
積極的に関わろうとすることに
一種の遠慮のようなものがあったのです。

その考えを変えていこうと決意したのです。




そして2020年の3月

BAR舞台袖にて
僕たちの昼寄席がはじまりました。

第1回には僕ら以外に
5組の芸人が出演してくれました。


その中にはもちろんハノーバーも
いました。


そして記念すべき第1回目の昼寄席で
ハノーバーはトップバッターを
務めてくれたのです。


そこから数ヶ月間、
ハノーバーは何度も僕たちの昼寄席に
出演してくれ、
そして何度もトップバッターで
会場を沸かせてくれました。




それから何ヶ月か経った頃でしょうか

『二足のわらじ』と言うライブが
はじまりました。

そのライブの内容は
この記事にも書いているのですが



このライブはBAR舞台袖の加藤さんが作った
兼業芸人だけのバトルライブで
僕たちも何度か参戦させていただきました。


順位はお客さん、加藤さん、
そして専業芸人であるMCの
票によって決まります。



そして2020年の10月18日


その日の『二足のわらじ』にも
僕たちはエントリーしていました。

何度か出場を繰り返して
なかなか勝てず、
前回の『二足のわらじ』で
2位だった僕たちは
次こそは1位を取ろうと
肩をブンブン回していました。


しかし、心に引っかかる要素が
一つあったのです。


そう

その日のMCがハノーバーだったのです。

ライブの直前、
着替えをするスペースで
2人と話をしていると
良元が言いました。

「絶対お前ら1位にせんからな!」


普通はこんなこと
票を持っている人間は
言ってはいけません


しかし僕は僕で

「なんでやねん!」


としか返せませんでした。


ただ1位を獲りたかったと言う
シンプルな理由ももちろんありますが

この様子を他の演者に
見られたくなかったのです。

ライブを取り仕切る人間の一人であるMCと
特別な仲である演者が他にいると知って
なんとも思わない人はいないと
思ったからです。


喫煙所に行き、
複雑な感情を整理しました。

今日、あいつらに採点される。



僕たちが出会ったグ○ッチェは
その時にはもう既に無くなっていました。



彼らは僕らのネタをどう評価するんだろう

そもそもずっと前から見てきた人間と
初めて見る人間を
平等に評価できるのだろうか

そんなことを考えながら
本番を迎えました。


自分たちがネタをする直前、
前日の夜のライブ終わりに
井口から言われた言葉を思い出しました。

「そろそろ勝たんと
お前らのメンツ立たんもんな」


どういう意図で言ったのかは
わかりませんが
本当にその通りでした。


何度も負けている僕たちにとっては
喉から手が出るほど欲しい1位

本人にそこまでの意図はがあったかどうかは
わからないですが
MCとしてあまり言うべきではないことと
同期へ伝えるべきメッセージを天秤にかけ
前日のライブ終わりに
腑抜けた顔をしていた僕に
改めて尻に火が付くような
声をかけてくれたのではないかと
僕は勝手に解釈しました。



舞台の後ろから 
彼らのオープニングMCを
聞きました。


その時に思い出したんですよ。

そうやった、
こいつらMC上手いんやった

って


二足のわらじは
出場する兼業芸人たちに
お客さんを1人は呼ばないと失格になるという
1つのルールを課しているため
知り合いを呼ぶ人も多く、
客席のほとんどが
初めてお笑いライブに来るお客さん
という状況も珍しくありません


ハノーバーの2人は
そのような方々に
ライブ趣旨を伝えるとともに
少しでも全体が見やすくなるよう
立ち回っていたのです。


決して演者という主役を崩すことなく
コンスタントに会場を沸かせていました。


全組のネタが終わり、結果発表


このライブでは
3位から1位までがMCから発表され
1位だけが舞台に上がることができます。


舞台袖裏の入り口近くで待機していると
良元の声が聞こえてきました。

「第2位!フリックフラック!」


僕たちはまたしても2位でした。




その後、
僕が大阪に引っ越しをしたことから
よくハノーバーが家に来るようになり
僕の家で一緒に鍋をしたり
2人が勝手にネタ合わせをするようになりました。




それからまた数ヶ月経ち、
2021年に入った頃でしょうか

僕たちは4月から東京に行くことが
1年以上前から確定していました。

なのでこの残りの3ヶ月間は
一旦最後の大阪ということで
最後らしいライブというか
自分たちを中心とした大きめのライブを
何本か打とうという
話し合いをコンビ間で行っていました。


その最中に僕が
ずっと考えたいたことがあります。


それは
ハノーバーとツーマンをしたいと言うことでした。

ハノーバーとフリックフラック

2組だけでライブをしたいと
その頃考えていたのです。


しかし、自分たちの単独や
トークライブなどで
ほとんどの予定が埋まり、
なかなか日程を決めることができず


結局ハノーバーの2人に
ツーマンの話など
全くできないまま
時間が過ぎて行き、

とうとう3月になりました。


僕たちフリックフラックが大阪で過ごす最後の1ヶ月


3月6日


その日は僕たちにとって
最後の『二足のわらじ』の日でした。


僕がこの3月で
大学の卒業が確定し、
兼業芸人では無くなることで
出場資格を失うことが
決定していたからです。

前日の3月5日

良元からあるLINEがきました。

「明日のMC、俺らに変わったから」

驚きました。


当初の予定では
違う人がMCのはずだったのですが
急遽ハノーバーに変更されたのです。


僕は思いました。

そうか


最後の『二足のわらじ』


あいつらが判定するのか


どっちにしろ最後だったからか
不思議と前回ほど抵抗感はありませんでした。


同じ日の夜に60分漫才のライブが
入っていたことで
気が紛れたのかもしれません。


そして、最後の二足のわらじ

僕たちフリックフラックは3位でした。



終わってから井口が
珍しく
ご飯に行こうと誘ってくれました。

会場近くのラーメン屋に
僕と相方であるりつき、
そして井口の3人で入りました。


入店し、
すぐそばにある券売機に
お金を突っ込んだ井口

「好きなん押せよ」


と彼は言いました。


ちょっとカッコつけてんなこいつ

と僕は思いました。




彼にご飯を奢ってもらうのは
ほぼ初めてのことでした。

なぜ急に奢る気になったのか

ラーメンを食べながら
僕は理由を聞いてみました。

「今日のギャラ良かったからなぁ」


と彼は言いました。


精一杯の照れ隠しに感じました。

これはその日のライブで負けた
同期への慰めなのか
それとも東京へ行ってしまう
同期への一種の餞別なのか


理由はハッキリしませんが
妻子持ちの彼に
同期にご飯を奢るような余裕は
ないはずです。


何かを感じずにはいられませんでした。



ただ、嬉しかったのです。



どんな気持ちであれ嬉しかったことは
間違いありませんでした。



そして3月半ばになり、
僕たちは自分たち主催での最後の昼寄席の日を
迎えました。

その日のトップバッターも
ハノーバーでした。

つまり最初の最初も
最後の最初もハノーバーということになります。


出番終わり、
次のライブがあるからと
足早に会場を去る2人の背中を見ながら
僕は思いました。


出てもらって良かったと

この昼寄席が
フリックフラックとハノーバーとの
大阪での一旦最後の共演でした。


確かにツーマンできなかった後悔は
少しありました。


でもこれでとりあえずは良かったと
そう思えたんですよ。



ここまで読んでくださった皆さん
ありがとうございます。


長いでしょ?


でもね、しょうがないんですよ


ハノーバーの事書くって決めてからは
僕中途半端な状態では
絶対投稿したくなかったんですよ。

完全な状態で良いもの書きたいなと
思ってたんで

まあでも全部書いてると
キリがないんで
そろそろ終わろうとは思ってますけど




でもね、彼らとは他にも色んな
思い出があるんですよ。

いくつかは昨日のことのように思い出せます。


僕の家で全くネタを考えずに遊んでた井口とか

その井口に対して
お前なんか考えてるか?って
ちょっとイライラしながら聞く良元とか

うんって嘘つく井口とか

嘘つけって怒る良元とか



僕みたいなフリーの芸人にとってね


まあ、今は養成所生なんで
厳密には
フリーだった芸人にとってね、

同期っていう存在は
ありがたいものなんですよ。


普通はいないですからねそんなん


自分で勝手にライブにではじめて
自分で勝手にフリー芸人と名乗って
自分で勝手にライブ企画して色んな人に出てもらって
色んな人に観に来てもらって

してるだけですからね


そんな僕をハノーバーは
5年間同期として扱ってくれたんですよ


はじめて出来た同期やからなぁって






ちょっと前でしょうか


良元と2人でいる時に
彼からこんなことを言われました。

「お前らが東京行くのももうすぐやな」


僕はそうやなと答えました


「せっかくやったら行く前に
ツーマンでもやっとけば良かったな」



その「せっかくやったら」には
色々な意味が込められているように
思えました。


そして

そう言われた時、僕は思いました。




なんや


同じこと考えてたんか


俺だけじゃなかったんや


それなら



それならもっと
はやく言ってくれれば良かったのに


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