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2021年度 東証IPO審査の状況(JPX自主規制法人の年次報告2022より)

こんにちは! 公認会計士/IPOコンサルタントの丸谷です。
このnoteでは、IPOの実務で役立つケーススタディなどを中心に書いていきます。
今回は、2022年6月16日に、JPXから「JPX 自主規制法人の年次報告 2022」が公表されましたので、2021年度のIPO審査件数などをまとめたいと思います。

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2021年度の上場審査は192件(前年度比▲1件)

2021年度(2021年4月~2022年3月)の上場審査は192件と前年度比で概ね横ばいの結果でした。
一方で、この件数は申請日ベースでの集計であり、2022年4月4日に行われた新市場区分への移行を踏まえた新市場区分での上場申請も含む過渡期の件数といえ、市場変更や一部指定申請をほとんど含まないことからマザーズ上場申請を中心にIPO審査件数は実質増加の傾向にあったものと推測できます。

(注)審査件数は、IPOのほか、テクニカル上場/ノンファイナンスのTokyo PRO Market/市場変更/鞍替えを含みます。

なお、2021年3月からは、新規上場審査を中心に、日経新聞社のデータやNECと共同で開発したAIを用いた財務分析が上場審査で利用されているとのことです。財務状況をAIがスコアリングし評価根拠と共に審査担当者へ提示する仕組みのようで、上場申請書類の提出が(紙面ではなく)電子データでの提出が原則となって数年が経ちますが、財務分析の点でDX推進がされているようです。

「JPXからのお知らせ 上場審査業務での人工知能の活用について」より
” 財務分析に限らず、上場審査における各判断は、審査担当者が行うことに変わりはありませんが、人工知能を活用することで、審査担当者に対して財務的な観点からの気付きをより早く提供できることで効率化が図れるとともに、更に深度のある審査を行うことが出来るものと期待されます。”

新規上場は120件(前年度比+32件)

2021年度の新規上場は160件(前年度比+54件)で、テクニカル上場25件(前年度比+20件)とTokyo Pro Market(TPM)15件(前年度比+2件)を除いても120件(前年度比+32件)と大幅増加。特に、新市場区分移行を前に、マザーズ市場開設以来最多の88件(前年度比+26件)がIPOするなど大幅増の結果となりました。件数だけでなく、東京以外の地域に本社を置く企業のIPOなど全国的な広がりの一面もあります。
また、テクニカル上場が25件(前年度比+20件)の結果も顕著な増加といえます。前田建設による前田道路の敵対的TOB後の経営統合によるインフロニアHDの上場、地銀の超低金利下における脱銀行・収益構造多様化に向けたHD化が相次いだこと等が要因でした。

JPX報告書2022

新規上場申請者の上場適格性に関する情報受付数は引き続き増加傾向

東証では、新規上場申請会社の上場適格性に影響がある情報について受付窓口を設けています。
これには様々な情報が寄せられ、内容によっては上場延期や申請を取り下げせざるを得ないケースもあるのですが、2021年度は審査件数が増加していることもありますが、基本的に情報提供は増加基調にあるといえます。

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今回はこれまで。また次回お会いしましょう!

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