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【知財情報】中国最高裁判所 医薬品特許のリバースペイメントについて独禁審査

【知財情報】中国最高裁判所 医薬品特許のリバースペイメントについて独禁審査

先日、中国最高裁判所ある医薬品特許のリバースペイメント(reverse payment)について、独占禁止法審査を行ったことが分かりました。

本件の(2021)最高法知民終388号の「サキサグリプチン(Saxagliptin)錠剤」医薬品特許権侵害に関する上訴撤回案は、中国最高裁判所で初めて訴訟事由は独占禁止法ではない案件に対し独占禁止法審査を行った案件です。

最高裁は本件で、「医薬品特許のリバースペイメントに関する契約」は独占禁止法を審査する必要性を明示し、その審査判断要点を説明しました。

医薬品特許のリバースペイメントに関する契約は独占禁止法に反するか否かの判断要点は、関連市場の競争を排除、制限するかどうかから判断します。

一般的には、契約締結前の状況と契約締結後の状況を比べて、関連市場の競争に対してどのくらいの損害を与えるかを分析します。

また、本件訴訟について、特許は既に満期され、AstraZeneca社とAosaikang社も和解され、関係者のBMS社とVcare社とは本件訴訟を参加しないため、最高裁はAstraZeneca社の上訴撤回申請を許可しました。


事件の経過について、次のように整理しました。

1. 訴外のBMS社は「サキサグリプチン(Saxagliptin)」が請求項に書かれている特許をAstraZeneca社に譲渡しました。当該特許は2021年3月5日に満期しました。

2. 訴外のVcare社は2011年に、当該特許に無効審判請求を提起しました。

3. BMS社とVcare社とは和解契約を締結し、5日以内に無効審判を撤回すれば、侵害行為を不問し、特許の使用行為を継続できることを約束しました。

4. Vcare社の関係者・Aosaikang社は上記契約内容で特許の使用行為を継続します。

5. AstraZeneca社は、Aosaikang社が特許侵害で提訴しました。

6. Vcare社の関係者・Aosaikang社が和解協議に基いて特許を使用する行為は違法ではないと、一審で訴えを却下しました。

7. 不服するAstraZeneca社は最高裁に上訴しました。

8. AstraZeneca社は、Aosaikang社と和解したという理由で、上訴の撤回を申請しました。


リバースペイメント(Reverse Payment)とは、
先発医薬品メーカーと後発医薬品メーカーとの間で特許紛争が生じた場合に、先発医薬品メーカーが、後発医薬品メーカーに多額の金銭を支払い、後発医薬品メーカーが製品の参入を遅らせるような形の和解合意です。
「ペイフォーディレイ」とも呼ばれます。


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