AIで描いた「ウォーキングビーム事件」が出来るまで
1. はじめに
話題の画像生成AI、Midjourneyを使って「ウォーキングビーム事件」のイメージ画を作成したところ、そこそこの反響がありました。
「ウォーキングビーム事件」とは、昭和61(オ)454の最高裁判決「ウォーキングビーム式加熱炉事件」のことです。特許の先使用権が認められる要件を定義した重要判例であり、ウォーキングビーム式加熱炉というものを知らない人にとっては名前のインパクトから勝手なイメージをしてしまうものです。実際のところ、ウォーキングビーム式加熱炉は、長方形、正方形等の金属材料を高温の炉内で移動させて圧延する装置のことです。
<参考>ウォーキングビーム炉(日本ガイシ株式会社)
2. Midjourneyで「ウォーキングビーム事件」が出来るまで
Midjourneyを使ってみたいという動機が最初で、題材として上述の名前のインパクトが強い判例である「ウォーキングビーム事件」を選びました。なんとなく、「歩きながら目からビームを出している人」のような絵が出てきたら面白いなと思いました。
Midjourneyの使い方については詳しい解説がネット上にたくさんあるので割愛します。簡単にいうと、Discordというソフトを使って、チャット形式で「/imagine」というコマンドの後に英単語を入力すると、1分後くらいに4種類の絵が生成される仕組みになっています。
最初に作成したのは上の絵です。命令文をキャプションに書いています。「目からビームを出す人が、歩きながら街を破壊する」想定でしたが、ビーム要素が全くなくボツにしました。
今度は男性からビームが出ていること、男性が破壊していることをより強く結びつけるために一部修正をしましたが、なぜか鉄の棒のようなものを引きずっている絵が生成されました。これもイメージと違うのでやり直しです。
男性が後ろ姿ばかりだったので、こちらを向いていることを意図するために「walking toward here」と入れてみました。あとbeamをlaserに変えたところ、サイバーパンクなお爺さんが生成されました。
一度発想をリセットして、シンプルなフレーズにしてみました。「walking, beams, incident」の3単語だけです。すると少しイメージに近づいた気がします。特に右下は中央の人の手あたりから懐中電灯の光のような、ビームのような何かが出ている雰囲気がでています。
ビームをレーザーに変えただけでイメージが変わりました。右下の絵が一番良かったと思ったので、右下の高解像度版を生成しました。
最終的に完成したのがこちらになります。「目からビーム」よりこちらの方がインパクトがある気がします。自分で絵を描こうと思ってもこんな構図は思いつかないし、思いついても描けません。
一方で、最終的な一枚の絵に到達するまでワードを工夫したり、4つの中から1つを選んだりという試行錯誤があります。AIを使ってみたいという興味と遊び心で作成した絵なので、ここでは著作権について深堀りするつもりはありませんが、利用者にも著作権が認められる余地はありそうです。
弁理士法人シアラシア
代表弁理士 嵐田亮
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