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ドアが開かんくなってピンチになった話

悲劇は私と1歳半の娘とネコと家でくつろぐ平日におこった。

悲劇より数日前のこと。

娘は近頃、飼っているネコの部屋に入りたくてしょうがないらしい。
私の目を盗んでは、ドアノブのレバーに一生懸命手を届かせドアを開けようとする。

娘の好奇心と意欲は応援したい。
しかし、ネコの部屋には、ネコ用のトイレや夫のロードバイクなどなど娘に触られたくないもがあり入ってほしくない部屋である。
どうにかしなければ。

そこで、頼りになるインターネットの出番。

「子供 ドア 開けないようにする 賃貸」と検索。

私と同じ悩みを持つ親は多いようで、さまざまなグッズや方法があることが分かる。便利な世の中である。

その中でも私が目を引いたのは、ドアノブを縦にする方法。ドライバーさえあればその場ですぐにできるし、傷や跡をつけることなく問題解決!よかった、よかった。

と思ったのもつかの間で、我が家のドアノブは縦に固定することができない。
仕方ないことだ。誰もドアを作る時に
ドアノブを縦にすることもあるだろう、なんて考えない。どうしたものか。

ただ、固定することはできなかったが、片方のドアノブだけを外し、鍵のようにはめてドアを開けるということはできた。

部屋に入る時以外、ドアノブは近くの棚に置く。
1歳半の娘に開けることはできない。これは中々の名案だ。

ネコの部屋に入る時はドアノブの鍵を使うという妙な生活が続いたが、突然おわりを迎える。

悲劇のあの日がやってきたのだ。

ネコにキャットフードをあげるために、 私は何気なくネコの部屋に入った。
すると、窓から風が吹いて

バタン!

勢いよくドアが閉まる。


この時は、まだ事態の重さを飲み込めていなかった。

ネコ用の皿にキャットフードを盛りつけ、
娘のいる場所に戻ろうとするとドアが開かない。

あれ?おかしい。鍵はかけていない。
普通にドアノブは回せば開けらるはずなのに。
いや、これは普通のドアではなかった。

向こう側のドアノブは今現在「鍵」として使われており、今このドアを開けるには鍵となるドアノブをはめなければいけない。

しかし、その鍵となるドアノブは…

私のすぐ手元にあるではないか!

無意識のうちに持ってきてしまったらしい。なぜ。
これは悪い冗談だろうか。もう一度、ドアを開けようとするが、そこはもはやドアではなくなっていた。壁だ。

ドアノブとドアノブの真ん中にあるペコペコするやつ(ラッチ)が最大限のパワーを発揮している。
〈ここは誰も通らせねぇ!〉
手で触るとなんでもないのに、威力が凄まじい。

なんてこった!!!

あろうことか、私は娘とスマホをドアの向こう側に残し、飼い猫と共に閉じ込められているのだ。

窓はあるが面格子と呼ばれる頑丈なシマシマが取り付けられている。
防犯上のためのもの。
しかし閉じ込められた今、この部屋は檻(おり)だ。

私は風によって捕えられた気分だった。そもそも、仕組んだのは数日前の私。情けなさが込み上げる。

今は何時だったか…確か、お昼すぎ。
夫が帰ってくるまでにはまだ数時間。

しばらくすると、私の姿がなくなったことに気付いた娘が開かずのドアの前で大泣きし始めた。

「お゛か゛ーーさ゛ーーん゛!!!!!!!」

こ、これは、さすがにあかんやつ!!
どうすればいいんだ!!

「おかあさん、ここにおるよー!!!!!大丈夫よーー!!!!」

とりあえず、娘に私の声を聞かせる。
しかし、全く大丈夫ではない。
どうしよう…どうしよう!


ふと、不用心であるが玄関の鍵をかけ忘れていることに気づく。
この緊急事態ではチャンスだ!


私は覚悟を決める。
誰かに助けを呼ぶしかない!

「誰か!!誰か、助けて下さい!部屋に閉じ込められましたー!!!!」

「〇〇号室の〇〇です!!!助けて下さい!!!!」


自分の出せるありったけの大声。
しかし、窓の向こうには住んでいるアパートの通路と大きな畑と離れた所に国道があるのみ。通行人ゼロ。田舎なのでほとんどいない。

シーン

よくある漫画で使われる「シーン」は本当に存在した。虚しい。

自分一人ならこんな大声は出さないし、あきらめてネコと時間を潰すだろう。
しかし、私は母親。娘の為にも、何とかこのドアを開けないといけない。必死である。

「すみませーん!!!!助けて下さい!!!!」

「お願いします!!!!!!小さい子がいるんです!!!!!」


かれこれ、15分ほどは叫んでいるだろうか。
娘は泣き続けている。
どうなってしまうだろう。

その時、隣の部屋に住む女性がなにごとか!?と飛び出してくれた。


あぁっ!助かった!!!!


私は女性にこの、のっぴきならない事態の説明をしてから、窓から鍵となるドアノブを渡す。

「これで、開けてください!お願いします!!」


ドアノブをバトンのように手渡されたのは
きっと初めてであろう女性は「???」だったと思うが、すぐ行動にうつしてくれた。

ドアは開かれた。

目の前には、涙で顔がぐしょぐしょに濡れた娘と鳩に豆鉄砲とはまさにそのことの女性。

娘よ、びっくりしたね、怖かったね…ごめんね!
母が変なことを思いついてドジしたばっかりに…。

そして、隣人様ありがとうございます!!
このご恩は一生、忘れません!!!

隣人の女性は丁度仕事が休みで、私の声が聞こたえたそうだ。
もしこの方が仕事に行かれていたら…私はあのまま誰にも気付かれなかった可能性もある。

あのまま誰も気付かなかったら?ドアを壊すしかないだろか。
あの映画とかでよく見るシーン。
修理代どえらいこっちゃになりそう。恐ろしい。

とにかく、よかった!困っている人を助けてくれる優しい世界、バンザイ!

私はすぐさまドアノブを横に固定して鍵としての役目を終わらせた。
こんな思いは二度とごめんだ!自分が悪いのだけれど。

物にはちゃんとそれぞれに、相応の使い方と仕組みいうものがあり、それを理解しなければいけない。ドアノブはひとつではなくふたつあって成立するもの。

決して、鍵として応用するものではなかった。

ドアを開けるためには、目の前にあるドアノブを回せばよかった。
その向こう側のドアノブの重要性など生きていて一度も考えたことなどない。
しかし、ふたつの存在が私たちの生活を守っていたのだ。

ドアノブを縦にしてしまう方法自体はカンタンでお金もかからないし有効的である。
ただ、うまくできない場合は潔くあきらめるべきだ。
私のようなとんでもない目にあってしまう前に。

一人暮らしの方や小さい子がいる家では特に、
密室になりそうな部屋にはドライバーを常備し、スマホを持つことを強くオススメする。
そうすれば、閉じ込められるというピンチも乗り切れるはず。

また、昼間でも玄関の鍵を忘れずに閉めたい。
ドアや鍵にはご用心!

ちなみに、私はあれから元に戻したドアノブに
弁当箱をはさむという独自の方法を思いつき、見事に成功した。

ペンネーム:io
年齢:20代
これを岸田奈美さんが読んで下さるのだろうか…恐縮ですが、嬉しいです。

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#エッセイ


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