見出し画像

After Effects と他のデザインツールの相性

グラフィックを動かしたい。
そう思ったときに最初に思いつくソフトは After Effects だと思います。
モーショングラフィックスの定番ツールです。

しかし After Effects には相性があります。
他のツールでデザインをした後、After Effects (以下AEと呼称) に読み込もうとすると面倒な問題に直面するかもしれません。
ツールによっては、せっかく作ったグラフィックが適切に読み込めず、もう一度AEで作り直す羽目になるかも。
これでは無駄に工数が増えてしまいます。

もうグラフィック作ったのに。また同じ物作るの?
これ、他のソフト使った方が早かったんじゃない?

そんな💩にならないため、ここに After Effects と他のデザインツールの相性について記します。


何を使うべきか

結論から言うと Figma。もしくは Illustrator が良いです。
理由は以下の点です。

  • ベクターデータをそのまま持ってこれる。

  • 画像や素材を必要なサイズで書き出せる。

  • 複数枚のアートボードでも軽い。

  • デザインを修正しても柔軟に対応出来る。

しかしこれらの機能は全て標準で搭載されているわけではありません。
その点も含めてそれぞれのツールについて解説します。

Photoshop


まずは Photoshop。
Photoshop をグラフィックデザインのツールとして利用される方は多いと思います。しかしAEとの相性は非常に悪いです。

パラメーターが持ってこれない

一番の問題はこれです。
Photoshop でデザインを行うと多くの物がパラメーターとしてAEに持ってこれません。
Photoshop はビットマップを扱うツールであるため、マスクをブラシで描いたり、グラデーションを選択範囲として使うこともあるかと思います。
このような手法はAEにとってただのピクセルとして認識されるので、パスとして持ってくることが出来ません。

データが重い

次にデータが大きいことです。
モーショングラフィックスを作る場合、グラフィック画面を幾つも作ることになります。
Photoshop でアートボードを10枚、20枚と増やすと目に見えて重くなります。更にスマートオブジェクトを用いて入れ子構造にした上、幾つもの色調補正をかけることがあると思います。
こうなると大抵はpsbという重たい拡張子に変わります。
1ファイルが3GBになることもあります。

これではデータの転送や開くだけにも時間がかかります。開いた後のズームやスクロールがカクつくことも。。
これではデータを触るだけで一苦労です。

大量の色調補正、スマートオブジェクト、レイヤースタイルで成れ果てと化したPhotoshopくん。

そのまま読み込むとよくない

Photoshop はそのままpsdファイルとしてAEに読み込むことが出来ます。
一見すると便利な機能に見えますが、これは罠です。
最初に中に入っているデータを全て読み込むので、Photoshop上でいらないレイヤーを削除したり、新たな要素を追加してもAEには反映されません。
そして修正された新たなpsdをインポートすると、また全てのレイヤーを読み込みます。
例えばただ1レイヤーの位置を修正しただけでも、500MBあるpsdの中身を全てインポートすることになります。

よって必要なレイヤーだけをpngで書き出し、読み込むことが適切だと思われます。

1つのpsdを読み込んだだけで大量のレイヤーとプリコンポを展開するAEくん。

じゃぁPhotoshopは何に使うべき?

Photoshop は1画面の作りこみに使用するべきです。
モーションデザインの為に幾つもの画面を1ファイルでデザインをすることはかえってモーションデザインの工程に負荷を与えます。

写真のレタッチやイラストを描く場合など、1つの画面を作り込む際には有効です。
これらはビットマップであるため Photoshop との相性が良いです。
しかしデータは重くなるので、それぞれを別のpsdとして分けましょう。
AEで取り込む際は必要な素材をpngなどで書き出すと良いです。

Illustrator


Illustrator とAEの連携は良いです。
しかしこれはプラグインである Overlord を使ったときに限ります。

そのまま読み込めるけど良くはない

Illustrator のデータはそのままでもAEに読み込めますが、幾つか問題発生がします。
1つは複数のアートボードを読み込めないこと。
Illustrator で画面上に複数のアートボードを作成しても、1つのアートボードサイズで読み込まれるため、別のアートボードのシェイプは全て消えます。これはAE上で選択出来るどのインポート方法でも消えるので、Overlord を使わない場合は画面ごとにaiデータを分ける必要があります。

データは1つのaiレイヤーとして読み込まれます。シェイプごとのサイズでは認識されません。
シェイプとして認識させるには読み込んだ後にシェイプレイヤーに変換する必要があります。
こうして初めてシェイプとして認識されます。
そのままでは工程が多く非常に面倒です。

読み込んだaiデータを1つ1つ「ベクターレイヤーに変換」して初めてシェイプレイヤーになる。

Illustrator を読み込むなら Overlord

Illustrator の良さはベクターデータであることです。
AE上でシェイプレイヤーに変換すると、スケールアップしても画質が悪くなりません。
この恩恵を受け、すぐにモーションに入るためには Overlord を使う必要があります。
Overlord は Illustrator から直接 After Effects にシェイプを転送するプラグインです。
公式サイトなら55$。日本の代理店なら10,120円です。(2024年時点) 

Overlord について

Overlord の良いところはAEにシェイプレイヤーとしてそのまま読み込めるところです。
Illustrator のアートボードサイズとAEのコンポジションサイズが合っていれば同じところにインポート出来ます。
テキストをそのままテキストデータとして読み込むことも出来ます。

1つ注意すべき点はアウトライン化したテキストをパラメトリックシェイプとして読み込まないことです。
アウトライン化したテキストには長方形や円として認識されてしまうシェイプが幾つかあります。
「パラメトリックシェイプを検出」をオンにしたままアウトライン化したテキストを読み込むと、予想外のところへテキストが吹き飛ぶことがあります。テキストを読み込む際はオフにしましょう。

アウトライン化されたテキストは矩形や円の検出をオフにしないと思わぬ位置に吹き飛ぶ。

Illustratorの注意点

Illustrator 側の注意点としてはイラレだけの特別な機能は読み込めないことです。
例えばフリーグラデーションや、ブレンド、線幅プロファイルなどです。
アウトライン化されたシェイプとして表現出来ないものは大抵読み込めません。AEで疑似的に作り直す必要があります。

フリーグラデーション、ブレンド、線幅プロファイル。
こういったものはAEで疑似的に再現する必要があります。

Adobe XD


標準の Adobe 製品の中で最もインポートしやすいツールは XD です。

ほぼそのまま読み込める

XD は After Effects に書き出しが標準で搭載されており、これを押すと選択しているアートボードや選択したレイヤーだけ読み込むことが出来ます。
選択した物だけ読み込めるので、素材を差し替えるときにも便利です。
ただしインポートされた際に新しいコンポジションが作成されます。
ここから必要なデータをコピーし自分のメインコンポに持ってきましょう。

シェイプレイヤーとしてそのまま読み込める優秀なXDくん。

画像もそのままインポート出来ますが、変なところからリンクされることがあります。
AEのプロジェクトパネルから読込先を表示させ、自分の欲しいディレクトリに素材を移動させましょう。

謎のTempディレクトリから画像を飛ばしてくるXDくん。

大きな注意点

AEとの連携に何ら問題の無いXDですが、大きな注意点があります。
それは2023年1月からアップデートが無く、単体販売が終了していることです。
これは Figma との棲み分けや買収騒動と関わってくるのですが、つまるところこのまま開発が継続されるか怪しいツールになっています。
以下の記事により詳しく書いてあります。

よってXDを積極的に利用すべきかと言われると、難しいです。相性めっちゃ良いんですけどね。

Figma


Figma も XD 同様、モーショングラフィックスのような複数の画面編集に適しています。

ベクターデータの読み込みは標準だと面倒くさい

Figmaからデザインデータを読み込む方法は幾つかあります。
画像は必要なサイズでエクスポートすれば良いですが、ベクターデータの読み込みは面倒くさいです。
エクスポートからSVG書き出しを行い、イラストレーターでSVGを開き、aiデータに変換してAEに読み込む必要があります。

SVGデータを理解出来ないAEくん。

これはAEが未だSVGデータに対応していないことが原因です。
SVGは標準的なベクターデータの形式ですが、AEは対応していません。ダサいです。

SVGを取り込めるようにプラグインを使う

楽な方法は ToothPaste などのプラグインを使う方法です。
このプラグインはコピーしたSVGをAEに張り付けられるプラグインです。
よって Figma からSVGをエクスポートする必要もありません。
Figma から必要なシェイプを右クリックし「SVGとしてコピー」を選択し、張り付けるだけです。

このプラグインの利点は Figma に特化して作られているわけではなく、SVGをインポートするところにあります。
よって他のSVG対応をしているツールとも相性が良いです。

paste SVG を押すとコピーしたSVGデータがシェイプとして読み込まれる。

AEUXについて

Figma からデザインを読み込むためには AEUX というプラグインもありますが、これはオススメしません。
このプラグインは2022年で開発がストップしており、最新のAEや Figma と合わない可能性が高いです。
「Figma After Effects 連携」などでググるとAEUX の記事がよく出てきますが、古いので使うのは止めたほうが良いです。

2024年時点の総論

結局のところ、AEと完璧に相性が良いツールは未だ無いです。
それぞれ一長一短はありますが、ベクターのイラストレーションだけならIllustrator。
画像も含めたグラフィックデザインやUIデザイン、画面構成ならFigma。
1枚の絵や素材を作りこむツールとして別で使うのがPhotoshop。
と捉えていただけると After Effects との連携はよりスムーズなものになると思います。

個人的には Figma か Illustrator でデータをくれると嬉しいです。😇

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?