21.江の浦測候所 「冬至光遥拝の会」
2021年12月22日、1年のうち最も日が短くなる冬至の朝、小田原にある、大好きな江の浦測候所で日の出を迎えた。
江の浦測候所は、写真、建築、古美術、舞台演出まで幅広い現代美術作家 杉本博司さんが、自らの集大成として構想10年、自ら財団を設立してさらに10年の工期を経て2017年にオープンした「測候所」と名付けられた"アートサイト"、人と自然、そして日本文化を融合した超大作「杉本博司の究極の作品」。
相模湾を望む1万1500坪の元みかん山に、光学硝子能舞台、茶室、庭園、門、ギャラリー棟、石舞台、待合棟、、、などが配置されているのだけど、何よりも、この施設を特徴づけるのは、人間の意識が誕生して、古代人がまずした事は天空の自身の位置を確認することであり、それがアートの起源である、天空を測候する事に立ち戻るという世界観。「測候所」の名にふさわしく、新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点である夏至、通過点の春分と秋分といった天空の重要な節目の太陽の軌道をとりこんで設計されている。
「冬至光遥拝隧道」と「夏至光遥拝100メートルギャラリー」は、それぞれ、冬至と夏至の朝、相模湾から昇る陽光をまっすぐに取り込み、茶室のにじり口や石舞台の橋掛かりは春分と秋分の日の出の方向に向いていて、1年のうちこの4日は、日の出から特別公開されるけれど、激戦の抽選、今年は、特にハイライトといえる、冬至と夏至、その両方を経験する幸運に恵まれた。
6月21日の夏至は、夏至にここまでよい天気は珍しいという話で、ぎりぎりまで期待したものの、結局は、水平線近くに雲がかかりギャラリーを駆け抜ける夏至光をみることはできなかった。初夏の美しい夏の朝の江の浦は本当に気持ちがよかったけれど。
冬至は夏至よりも時間が遅くなることもあり、最も競争率が高いらしいし、自分の中でも、隧道を貫く冬至光は江の浦で最も見たかった。
6:47 日の出。そのわずか3分半ほどの間、相模湾から昇る陽光が70メートルの隧道を貫いて、対面に置かれた巨石を赤く染める。
快晴の冬の朝、真っ赤な太陽がのぞくと歓声があがる。スマートフォンの写真では限界があり、太陽はぼんやり白くしか写らないので、途中で撮影は放棄してしっかり目に焼け付ける。言葉にならない。
6:47 日の出。そのわずか3分半ほどの間、相模湾から昇る陽光が70メートルの隧道を貫いて、対面に置かれた巨石を赤く染める。
快晴の冬の朝、真っ赤な太陽がのぞくと歓声があがる。スマートフォンの写真では限界があり、太陽はぼんやり白くしか写らないので、途中で撮影は放棄してしっかり目に焼け付ける。
この10月には駐車場から正門に通じる参道が整備されていて、入口までこれまでとは違う導線になっていたのだけれど、それと一緒に参道の終点に、カフェもオープン。通常は週末のみ営業のStone Age Caféも今日は特別にオープンしていて、海と朝日を眺めながら、冬至の日の特別メニュー柚子ドリンクで温まる。清見オレンジパウンドケーキが絶品。
8月の週末だけ「朝の部」「午後の部」に加えてオープンする「夕景の部」があり、夏の夕暮れも本当に美しい。季節ごとに何度でも行きたい場所。
「この江の浦測候所は遺作となるもの。死ぬまでずっと作り続けるということだから」「”門をくぐると流れが変わる。空気の流れ、水の流れ、気の流れ。いや、違う。時間の流れだ。僕は時間の庭を作りたいのだ”」 杉本博司
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