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【インハウスデザイナー時代-1】人生最悪の時間が毎日続くとしたら?君は何を思う?

こんな世界!他人を巻き込んで全部壊れちまえ!
そんな思いで一日を過ごしていた。

朝、ひんやりした空気の中タバコをふかす。
絶対に口に出せない言葉を飲み込んで、毎日過ごしていた。
無表情が張り付いていた。

阪神淡路大震災が起こった後の、九州の空は、鈍色。
必死で更なる不幸を望み、地震雲を探す。

社長が、必死の生き残りをかけて始めた弁当事業部
どうしようかなぁ!工場人員が足らないんだよなー。
聞こえよがしに声高にアピールをする。

やりましょうか?と、言うと、おっ?軍曹!いいねー!
上機嫌になる。

30歳で広報に入って若い奴らの教育してくれる?鬼軍曹みたいに!
は?はぁ…。そんな経緯でついた呼び名。

そんな若手は、死んだ目をして働いている。
睡眠が足りてなくて、車でトラックの背後に突っ込んだ。命に別状なし。
会社の保険は効かない。
まじか…?
そんな会社。
AM3:00 1日のスタートは、工場での弁当製造作業。
300gの熱い飯をエンボス手袋で掴んで、喉から声を上げる。通りかかった社長が背後から俺の後頭部を殴る、足を蹴る。

高圧的に、叫ぶように叱咤が飛ぶ。
飯は冷やすんだよ!なんで殴られたか調べとけ!常識ぞ!

罵られたあと、気持ちを落とさないように感情を殺し配送へ。
AM 5:00 空港の納品に間に合わない。実費で高速に乗る。高速を降りた直後の信号で秒数ちょっとだけ寝る。背後の車のクラクションで起きる。
そこから5分運転で配送終了。
AM 8:30 帰社:いまここでタバコをふかしている。
はらへった。

人生最悪の24時間が毎日続く。
自分で終わらせることができない。

やべぇ、チラシの納品あった、その前に、誰もやらない工場の在庫の確認と…。
くそっ!

圧倒的に時間足りない!
もうすぐ、社長のまかないの時間がはじまる。
彼の動きを先読みして、その瞬間にスパイスを手渡せないと叱責だ。
まかないが恐怖ってなんだよ。(笑)

PM13:00まで。
そして、そこから、社長の訓示。
広報室で、しっかり2時間、だらだらと話し込む。
PM18:00
さて、そこからデザイン。
AM 12:00まで
唯一うまくできるはずのデザインで、朦朧とした頭で入稿を間違えて、印刷物は刷り直し。

朝、ひんやりした空気の中タバコをふかす。
絶対に口に出せない言葉を飲み込んで、毎日過ごしていた。
考えていることさえ許さない雰囲気に無表情が張り付いていた。
無表情のまま、隣に座る広報室の上司に、もう、ダメです。
無理です。と伝えた。言葉にすると、ボロボロと涙が出た。
へたり込んで嗚咽。
それ以来、地震で世の中の崩壊を願ったことは無くなった。
そして、その会社も、呪いが解けたようにこの世から無くなったのはそれから2年後。地震が起こるたびに、最悪の一日を終わらせるために、誰かがどこかで祈ってる結果でなければいいと、鈍色の空をふり仰ぎながら考える。

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