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【読書感想文】お金のむこうに人がいる

いつものように、Kindleでおすすめに出てきたこちらの本を読みました。

気づきも多く、新しい視点も得られ、個人的には読んでよかった良書だと感じていますので、私が学んだことをいくつかご紹介します。

◆学び①:国が税金を徴収する理由

給与明細を見るたび、天引きされている税金の多さに愕然とする。
・・・これは、多くの人が共感してくれるのではないでしょうか?

さて、なぜ国は税金を徴収するのでしょうか?

もちろん、水道や道路などの生活インフラを整えたり、公務員の給与として支払うための財源であるのは確かです。

しかし、本書によれば、そのもっと前提となる理由があります。
それは「通貨を国内で流通させるため」なのです。

日本において、税金は日本円という通貨で支払う必要があります。
そして、税金を支払わなければ、極端な話、逮捕されます。
これらは2つとも、法律で定められています。

なので、日本で暮らす人々は、何かしらの方法で日本円を手に入れる必要があるのです。誤解を恐れず言い換えれば「逮捕されたくなければ日本円で税金を払え」と私たちは脅されているのです。

こうして、すべての人々が日本円を必要とする、つまり日本円を求める動機が生まれるのです。税金の徴収という仕組みのおかげで、日本円が通貨として国内に流通することができるのです。

そう考えると、生活のあらゆるところで税金が徴収されるのも納得がいきます。所得税や消費税、固定資産税など、あらゆる部分で課税されており「生きているだけで罰金」なんて言われるほどに、です。

もしも「こうやって生きれば税金を支払わなくてすむ」という方法があれば、その生活をしている人は日本円を手に入れる必要がないので、その人にとっては日本円はただの紙切れであり、通貨が流通しなくなる可能性があるのです。

残念なことですが、「生きているだけで罰金」なのは、日本円を通貨として流通させるために仕方のないことだと言えます。

◆学び②:お金とは「誰かに働いてもらう」権利書

さて、どうしてそんなに日本円を通貨として流通させたいのでしょうか?

その答えも、本書に書かれていました。
それは「人と人に支え合って生きてもらうため」です。

人は1人では生きていけません。
1人で衣食住を賄うことはできません。
生きるためには、誰かに代わりに働いてもらう必要があるのです。

そして、誰かに働いてもらうには、交渉が必要です。
「働いて魚を捕ってくれ。代わりに野菜をあげるから」
てな具合です。

の交渉方法が、今では「お金」なのです。
お金がない時代では、交渉はお互いの需要と供給が一致しないと成立しませんでしたが、お金があるおかげで交渉がずっとやりやすくなったのです。

こうして、お金を経由して「誰かが誰かのために働く」という動きが連鎖的に起き、人と人に支え合って生きる社会ができるのです。

お金は「誰かに働いてもらうチケット」のようなものです。
だから、日本銀行「券」なのです。

◆お金ばかり見てはいないか

こうなると、お金とは「人と人とが支え合って生きるための社会を実現するための道具」でしかないと考えられます。

しかし、多くの人が「もっとお金がほしい」と願っています。
お金がたくさんあればなんだってできるかのようにさえ語られます。

道具さえたくさんあればいいのでしょうか?
そう、目的と手段が逆転してしまっているのです。

モノやサービスを提供するのは、人です。
コンビニのお弁当も、スーパーの食材も、毎日使う水や電気もです。

人が働くことで、私たちの社会は豊かになっていくのです。
お金があっても、働く人がいなかったら何にもなりません。

お金ではなく、働く人たちに、私たちはもっと着目すべきです。

◆株式投資でみんながFIREできる?

ここからは完全に私の感想ですが、最近注目を集めているFIREも、働く人に焦点を当てると見え方が少し変わります。

巷にはFIREするための指南書を謳った書籍が数多く出版されており、まるで誰でも不労所得だけで生きている生活を得られるかのように語られています。

しかし、働く人がいないと社会も身の回りの生活も成り立たないのであれば、全員が不労所得だけで生きていくことは不可能です。
お金を握りしめてふんぞり返っていても、働く人がいなければ何も起きないからです。

投資による不労所得で生きている人をあえて悪い言い方で表現するなら
「労働の負担を他人に押し付け、その労働の成果であるお金の一部を搾取し、そのお金でまた他人を働かせて生きる人」でしょうか。

個人として豊かになるための戦略として株式投資が有力であるという考え方に変わりはありませんが、本書を読むことで、株式投資が一般的になることで社会全体が豊かになるという考え方には懐疑的になってしまいました。

◆最後に

社会は、人と人が支え合って成り立っている。
誰かの労働が誰かを幸せにしている。
これは、道徳の話ではない。経済の話だ。
なぜなら、人と人とが支え合うことがし易くなるように、経済という仕組みとお金という手段が発明されたからだ。
それなのに、現代では、人を幸せにするための仕組みと手段自体が目的化してしまっていないか?
もう一度、人を中心に、経済とお金を考えてみよう。

本書のメッセージを抽出してみるなら、こんな感じでしょうか。
経済やお金のことばかり気にしている現代社会に警鐘を鳴らし、現代社会が抱える問題の本質を伝える本だと思います。

これが経済の正しい解釈だと押しつけたいわけではありません。
お金のために投資をする人を非難したいわけでもありません。

ただ、このままでは、みんなが幸せになることはできないのでは、と思うのです。

この本で語られていることの1割も私はここに書けていません。
なのでぜひ、この本をみんなに読んでほしい。そう思います。

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