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合成生物学シリーズ①:ゼロからはじめる合成生物のお勉強

はじめに

合成生物が、今までに聞いたことのない、非常に面白く夢のある分野である一方でいまいち難しくて理解しづらい分野でもあると思い、今回その調査を行い記事にまとめました。

いくつかの情報を調査し、まとめる形で記事としています。非常に多くの情報を集めることができたので、ここではそれらから初心者でも理解しやすくそしてまた投資を行う場合に比較的に重要であろうところを取捨選択し、ようやくする形で記事にしています。

信頼できると思われる情報に基づき記事にしていますが、私の理解に誤りがある場合などが考えられますのでご注意ください。誤りに気づかれた場合はコメントいただけると幸いです。

合成生物とは?

細胞などを分解するのではなく、逆に細胞などを部品として組み立てることで生物を理解し、応用するアプローチです。
高効率で、自然環境に左右されず、また自然環境を破壊しない方法で役立つ化学物質などを作ることが将来的にできると思われます。

参考
合成生物学(Synthetic Biology)は、組織、細胞、遺伝子といった生物の構成要素を部品と見なし、それらを組み合わせて生命機能を人工的に設計したり、人工の生物システムを構築したりする学問分野のこと。従来の分子生物学では、生物を個体から組織、細胞、分子、遺伝子へと細分化し、その機能を理解しようという解析的なアプローチが取られてきた。それに対し合成生物学では、分子生物学などで蓄積された知見を生かしながら遺伝子を設計し、目的物質を生産するための代謝経路を構築し、それが機能する細胞や生物システムを作り出すという、構成的なアプローチを取る。

合成生物学は、機能性物質の生産などへの応用が進められている。従来、機能性物質の多くは、植物などから抽出されるか、化学合成されてきた。ただ、植物からの抽出では、抽出できる量が微量であるために生産効率が低くかったり、天候など自然的要因の影響を受けたりする。また、化学合成では、石油を利用するため、環境に対する負荷が高く、合成可能な天然由来成分の種類も限られるという課題がある。合成生物学を応用し、遺伝子などを人工的に設計した微生物や細胞などで機能性物質を生産すれば、これらの課題が解決できると期待されている。
引用:日経バイオテク

合成生物の貢献により安全なワクチンを短期間で作ることができた

一般の人にとってもっともホットと思われる合成生物利用の例はコロナウイルスのワクチンかと思います。
下記の引用によるとCOVID-19のワクチン開発でも合成生物が貢献により、短期間で比較的に安全なワクチンの設計・製造を行うことができたそうです。

合成生物学の発展によって、バイオテクノロジーは私たちに身近な様々な分野で活用されている。
例えば、今般の COVID-19 における新しいタイプのワクチンである、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を活用したワクチンは、新型コロナウイルスのゲノム配列さえ分かればワクチンの設計・製造が可能であり、従来のワクチン開発で一般的であった、危険性の高いウイルスそのものの扱いは必要がない。また今回、mRNA ワクチンを開発してから実用化に至るまでの期間がわずか1年程度であったことは、例えば、麻疹ワクチンが開発から実用化に9年、ポリオワクチンでは 20 年の歳月を要したことを考えると、新型ワクチンに用いられている合成生物的手法がいかに革新的なものであるかが分かる。しかも、こうして開発された新型の mRNA ワクチンの有効性は 90%強とされ、従来の方法で製造されたインフルエンザワクチンの 40~60%を大きく上回っている 。
引用:産業構造審議会

合成生物は他にどんな良いことがあるのか?

ガソリンやプラスチック、繊維、食品などの様々なものを、従来の方法よりも安く簡単に環境に優しい方法で作れるのみでなく、新しい機能を持たせることもできます。

ただし、詳しくは後述しますがこれはケースバイケースであり合成生物の方が生産コストが高い場合も多分にあり、また安全性の問題に関する指摘もあります。

合成生物の製品例:低カロリーのために需要の高い甘味料であるステビアは苦味がありますが、合成生物を用いて苦味のないステビアを作ることができるようです。

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出所:みずほ銀行

合成生物は具体的に何をしているのか?

先に見てきたように合成生物は、素晴らしい可能性を持ったものです。この章ではこの合成生物とは、何かをもう少し具体的に見て理解を深めたいと思います。

合成生物では、代謝経路・遺伝子配列を設計し、それを微生物などに組み込みます。すると、その微生物が生物工場として発行生産し、目的の物質を作ることができるのです。

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出所:みずほ銀行

チップス1:合成生物をイメージしやすくするチップス

これは合成生物ではありませんが、酵母を使って人は白米から日本酒を作っています。ゲノム編集などの技術を使って酵母をデザインし、日本酒を安く作ったり、早く作ったり、今までにない優れた日本酒を作ろうとする試みが合成生物です。


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出所:比翼鶴

チップス2:ゲノム編集とは?

合成生物ではゲノム編集が行われます。その方法の一つとして、ヌクレアーゼと呼ばれる酵素を使い、遺伝子の配列を改変を行います。

[ゲノム編集]
遺伝子治療の一つとしてゲノム編集治療があります。ゲノム編集は、染色体上の特定の場所にある遺伝子配列を部位特異的なヌクレアーゼ(切断酵素)を利用して、思い通りに改変する技術です。代表的な技術に第一世代のZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、第二世代のTALEN(タレン)といった旧来からの技術とともに、第三世代となるCRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)が挙げられる。

下図ではゲノム編集で異常のある配列を改変し、人の治療を行なっています。このようにゲノム編集は合成生物のみでなく治療目的でも使えるものです。

ぬくれあーぜ

合成生物が今盛り上がりを見せている理由

合成生物は、産業構造審議会が作成したレポートのように、ゲノム分析技術や編集技術、そしてIT/AI技術の発展により、急速に発展し、そして$AMRSなどの企業が登場し、株価上昇等によって、投資家の間でも強い注目を集める分野となりました。

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引用:産業構造審議会

ちなみに、合成生物という言葉を最近初めて知ったという人が多いかと思いますが、実はこの合成生物はそれほど新しいものでもなく、2011年ですでに日本語での解説もなされている。

そこでは下図のように合成生物がが一枚の絵でわかりやすく説明されていました。従来が、生物を分解して解析するのみであったのが、合成生物は分解したパーツを組み合わせて生物をつくるようなアプローチで生物を理解するものである、といったことを説明しています。

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出所:酵母を用いた合成生物学

合成生物の技術俯瞰

前章では、合成生物が発展するには様々な技術が必要であったことを述べました。ここでは、その技術の俯瞰し整理します。

下図のように合成生物は様々な技術を用い、データ・ドリブンな開発が行われており、バイオ技術のみでなく機械学習のようなIT技術もその重要な一翼を担っています。また、その研究サイクルを効率化する等の目的からロボットなどの利用もあります。

以上から、一朝一夕で真似できるものではなく、そのために早くから合成生物に取り組んできた企業が注目を集めているのが、今の株式市場ではないかと捉えています。

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出所:バイオ生産・合成生物学研究の俯瞰と潮流

合成生物の制約と課題

ここまで合成生物の良い面を主に扱ってきましたが、合成生物にも多くの制約と課題があります。ここではその一部を紹介します。

合成生物は高分子をつくるのが得意な反面、毒性のある成分や低分子を作るのが苦手

タンパク質などは複雑な構造をもっており、こういったものは合成生物は得意としています。タンパク質は工場ではなく、私たちの体内で作られてることを考えると納得しやすいかと思います。

反対に低分子医薬品などは苦手分野です。現在、作られている多くの医薬品は低分子医薬品です。

また、毒性のある成分を作ろうとすると、その毒性のために生物が死んでしまうなど、により苦手な成分となっています。

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出所:産業構造審議会

安全性に関する懸念からネガティブキャンペーンや規制がある

遺伝子編集によってつくられた成分の安全性に対する懸念などからネガティブキャンペーンが行われていたり、政府による規制がされていたりします。

これらは、今後合成生物が乗り越えなくてはいけないハードルの一つです。

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出所:みずほ銀行

合成生物のエコシステムと主なプレーヤー

合成生物のエコシステムは下図のようになっています。

大手企業が出資や量産化の支援などの業務提携を行い、ベンチャー企業が合成生物の技術開発から製品開発製造までを担っています。

バイオベンチャーは大きく三つに分かれています。まず①DNA合成などの技術を開発する会社があり、そして②微生物株(酵母など)を設計し製造するバイオファウンドリーと、③微生物株を利用して製品開発製造を行う企業があります。

バイオファウンドリーが現在資金調達額も多くもっとも注目されているようです。

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出所:みずほ銀行

テック界の巨人たちが投資する合成生物の可能性

これがトウシドリが合成生物に投資している理由のひとつです。

現在までの大きなIT技術の発展とそれによる株価の急激な上昇を実現させてきた$MSFT, $GOOGL, $PYPLの大物たちが皆、合成生物(Synthetic Biology)に今投資をしています。

魅力を感じない方がトウシドリに難しいです。

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出所:Forbes

最後に

トウシドリは$AMRSに現在投資していますが、ここまで見てきたように、$AMRSに限らず合成生物全体がこれから発展し、人類に大きな利益をもたらしてくれるように思います。

色々な資料を見ましたが、こちらのみずほ銀行の資料が一番わかりやすく良いと思ったので紹介します。

まだまだこの他にも書くべきことがありますし、今回は主に日本語情報のみからまとめているので、英語まで見ていけばもっと面白い情報が見つかるのではないかと思っています。

この記事の反響がよければ続編も書こうと思っているので、ぜひいいねやリツイートをしていただけると嬉しいです。

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以上になります。最後までお読みいただきありがとうございました。

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