現代小動物臨床獣医師の不安
はじめに
このnoteは臨床経験も社会経験も浅い獣医師が、自らの主観と些細な経験を元に、基本的に何のエビデンスもソースも示さずに書き連ねるnoteです。科学学会やセミナーのような形式ばったものではなく、多様な考え方の一つとして捉えていただき、ネット情報を正しいかどうか判断できる方のみお読みください。
なお、ここに記載する日時や内容は、早期に個人や関係病院を特定されないよう少々いじったものを記載しています。何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
背景
2022年7月に2年勤めた動物病院を辞めました。
その理由については以下のnoteにまとめています。
辞職を決断した大きな理由は以前まとめた通りですが、その背景として、私自身が社会情勢に対して能動的に行動していこうとしているためであることが大きいと思います。
このnoteは現代の若手獣医師が抱える不安について深掘りし、まとめていくことを目指すものです。
これを読んだ新卒・新人小動物臨床獣医師にとって少しでもご自身のキャリアやスキルを考え直すきっかけになれば幸いです。
若手臨床獣医師の抱える不安
若手の、特に20代から30代前半の獣医師が自信の将来に対して抱える不安は次の3つであると思います。
職への不安
お金の不安
生活への不安
私が"獣医師の拘束時間が長すぎる"と判断した根拠はこの将来に対する不安から発生していることを説明するため、それについて言語化していきます
職への不安
私はゆとり世代に当たります。ゆとり〜Z世代の小動物臨床獣医師は大学入学時から聞かされているフレーズがあります。
「小動物臨床は限られたパイの奪い合いが続き、今後激化する」
獣医師に夢を抱いて大学に入学した学生連中をビビらせるために語られるポジショントークだとも思いますが、調べれば調べるほどそれは真実なのだろうと実感します。
私が臨床獣医師という職種を脅かす要因として特に気にしているものは次のとおりです。
愛玩動物看護師の国家資格化
簡便な検査・処置で獣医師を雇う理由がなくなる
手術と専門診療でしか差別化できない時代になる可能性を常に考えなければならない
スキルアップの時間がより一層求められる
AIとIT技術の発達
当面は獣医師が必須だが、初歩的な問診・診断はAIの補助輪によって"自分が現役の間に代替される"可能性がある
AIにできることとできないことを認知していく必要がある
大動物獣医師の減少による小動物その他業界労働市場への負荷
日本の農業・経済政策上、今後も産業動物事業は苦しい市況が続く→その恩恵からなる大動物獣医師も他業界へ鞍替えする可能性がある
日本経済全体の困窮
ペット産業は娯楽産業に近いため、日本経済・市場全体が困窮するような状況下では不安定かつ他業界に劣後しやすい
小動物臨床施設の数も昭和に比べれば倍近くなっており、事業継承や世襲以外で通常の開業によって参入するのは比較的困難かもしれません。
「"真面目に小動物臨床に向き合えば将来開業して報われる"なんて動物病院経営者視点のポジショントークである」と20〜30代の小動物臨床獣医師は考えているのではないでしょうか。
お金の不安
令和4年現在までに、20〜30代の労働者は大人達から「少子高齢化が続けばあなたたちが老いた頃には年金は全然もらえない」と耳が痛くなるほど聞かされてきました。獣医師に限らず、あらゆる若者が抱く不安ではありますが、簡単にまとめます。
豊かな家庭を築くのに臨床勤務獣医師は収入も時間も足りない
勤務医程度の給料では伴侶と子供を養い、かつ将来の貯蓄・投資をするのに十分な収入が単独で得られるわけではない
うまく開業できたとしても、子供との時間を確保するのは極めて難しい。そもそも勤務獣医師でも難しい
高齢者向けの政策と世情(少子高齢化、増税、年金減少)
書き出したらキリがないので省略
なお、私も毎度投票所に通っているが内心、若者が全員投票したところで政治は変えられないだろうなと思っている
インフレにより老後2000万問題はさらに悪化するかもしれない
2019年に金融庁が「老後資金は2000万円必要である」との資料を公表した。これはあくまで現在の貨幣価値に基づくものであり、わたしたちの世代が定年を迎える頃にはインフレがさらに進み、さらに多額の資金が必要となっている可能性がある
2019年当時と比較するとコ○ナ禍を経た現在のドル円レートは25%以上減価している→外国製品に支えられる日本において、通貨の下落は必ず市場に跳ね返ってくる
2000万円を目指してiDecoや積み立てNISAしているだけでは豊かな暮らしなど得られないかもしれない
昨今獣医師に限らず、iDecoや積み立てNISAなどの投資商品を始める人が増えていますが、受動的に投資活動をしているだけでは、老後の人生が破綻する可能性を拭い切るのは早いかもしれません。
個人的には積極的に金融と投資について学習する必要があるのではないかと思っています。
生活への不安
ある程度の覚悟を持って小動物臨床獣医師という生き方を選んだものの、降りかかるリスクの無視はできません。
予定外の拘束時間が発生することが多い
家庭生活を犠牲にすること前提にする必要がある
そもそも生活に余裕がなければ家庭すら築くこともできず、配偶者に十分な収入を期待しなければならない
中年期に重大な疾病に罹った際のリスク
特に開業獣医にとって、長時間労働や肉体労働は避けられない可能性が高く、事業や資産がパアになるリスクは雇われと比べものにならない。
動物病院業界で今も頑張っている50〜60代の超ベテラン院長の話は大変参考になるのですが、私が10代の頃に働き通して父を亡くした経験からか、生存者バイアスをどうしても無視できず、20時以降にクタクタになって仕事を終えるたびに「この生活をあと40年近く続けるのか…」と考えると少しブルーになっていました。
独身20〜30代が大半を占める新人獣医師のうちは、20時に帰宅して、それ以外の時間をさらなる勉強に充てても生活に支障はありません。
しかし、結婚したり、子供ができたりした場合はどうでしょうか?
週5日11〜12時間病院で過ごしたのちに、家族と過ごす時間を十分に確保できるでしょうか? それに加えて、獣医学のアップデートを十分に行えるでしょうか?
前職場の労働時間は"小動物臨床で普通に働くのは私には無理"と判断するには十分すぎました。
まとめ
以上が、私が感じている若手小動物獣医師の不安です。
「嫌なら辞めろ」というのは百も承知ですし、実際辞めました。
「転職しても消えない不安ばかりだから投資や貯蓄で解決すべき」という意見には完全に同意します。
私個人は学生の頃から5年以上株式投資をしてますし(大きく儲かってはいませんが)、卒後も追加で積立投資するなど、生活防衛のための資金分散は人並みにこなしているつもりです。
それ故、社会の変化に対して敏感になっている部分もあるのかもしれません。
幸い数ヶ月無職でも困らない程度の資産は築けたので、今後のことはゆっくり考えていこうと思います。
以上です。ここまで読んでいただきありがとうございました!
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