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地域金融システムを更新する:ファイナンスが地域経済創発で担う役割

バタバタしていて見られなかったPOTLUCK FESのセッション動画をひとつずつじっくり見ている。まずはBUSINESS STAGE「金融」について。セッションの内容の文字興しではなく、セッションから得た学びをMEMO。

登壇者の3名

細かい紹介は画像のとおり。福留さん・田淵さんはPOTLUCKで記事化しているのでリンクを参照。
・村上 誠典さん:シニフィアン 共同代表
福留 秀基さん:スパークル株式会社 代表取締役
田淵 良敬さん:Zebras and Company 共同創業者・代表取締役

登壇者の3名

地域の可能性は「フロー」ではなく「アセット」

地域の人が「東京がすごい」という時、見ているのは、既に実現しているGDP・売上・利益といった「フロー」。ここで比べると確かに地域は弱いが、そうではなく「アセット」を見るべき。即ち、P/Lではなく、B/S。更にいうと、地域にはオンバランスしていない(=B/Sに載らない)資産が沢山あ地域はこのアセットを過少評価してはいけず、この可能性をアンロックしていくのが地域経済にとっては大切である。

…入口から如何にも「金融」セッションならではの話。私自身、地域に行って感じるのは、自然・人・豊かな時間・・・必ずしも定量化できないが、確かに価値あるものに溢れている。それが「オンバラされていない資産」と言語化されて、凄く腑に落ちた。

BUSINESS STAGE テーマは「金融」

地域×金融にとっての課題

東北唯一の独立VCを運営する福留さん、ゼブラ企業へのインパクト投資を行う田淵さんから見た地域×金融にとっての課題の話に及ぶ。

【課題①】 地方と東京の「価値観の固定化」

明治以降の中央集権制の下、地域行政は中央政府の出先機関としての側面が強い。そこ影響か、東京は夢を持つ場、地方は田園的・牧歌的な風景だというのが根本の価値観として出てしまっている。

■意識変容の重要性

この価値観を覆し社会的インパクトを興すには、「意識変容」を起こす必要がある。事業に関わるステークホルダーの意識を変える。それにより各人の行動変容に繋がり、社会システムや文化が変わる。ただ、地域は歴史もある分、価値観が固定化されている。東京の人の価値観を変えるよりも難しい・・・

【課題②】 地方におけるリスクマネー(挑戦資金)の不足

近年スタートアップ投資が活気づいてはいるが、地方銀行をはじめとする金融機関は「融資」に慣れている為、エクイティファイナンスに対して重い腰を上げ切れていない。その理由は「成功体験」が少ないため。やっても意味ないのではないか、という風潮が流れているのではないか。

■地域ビジネスにおける成功の定義とは?

既存の金融ロジック、例えばスタートアップ投資における「5年でIRR〇%」のようなフレームワークで見ると、地域事業の多くは結果が出ない。地域は長い時間軸で、じっくり事業を作っていくのが重要であり、より柔軟に、「地域における成功とはなにか?」「それに合ったお金の出し方とはなにか?」を考える必要がある。

■スタートアップエコシステムも同じ道を歩んでいた?

スタートアップのエコシステムも同じ道を歩んでいた。スモールIPO・早期上場が目指された時代には、Jカーブ(一旦赤字を掘る)のような概念は理解されなかった。が、今はむしろ、一度赤字を掘ってから成長しようというのが当たり前になってきている。「地域ビジネス」も同様でないか?

再現性がなく説明できないものを金融は苦手とする。即ち「社会インパクト」を図るためのフレームワークがないとファイナンスができないが、現状、金融システムと地域ビジネスが、その答えを見つけられてない。大事なのは、既存の枠を当てはめるではなく、価値観、戦略、時間軸・・・を定義し、人づずつ評価しながら成功事例を作っていくこと。そして少しずつ評価できるフレームワークを作っていくことではないか?

■「成功事例」を作ることの重要性

成功事例がないことによって、関心は高いしお金も流れて始めているが良いスパイラル・モメンタム=上昇気流に繋がっていない(20年前のスタートアップと同様)。地域におけるアントレプレナーシップもまだまだ足りておらず、その中でもがいている。それが大きなお金が流れないボトルネックになっている・・・

課題の解決に向けて・・・

じゃあ成功事例がなければいけないのか?

「成功事例」のとらえ方を変えてみる。つまり、既にあるものを違った角度で見ることで「成功」といえることもあるのではないか。日本にある多くの企業は「ゼブラ企業」といえるところが多くい。そしてそこに金を出している人も実はいる。0→1のインキュベーションに注目が行きがちだが、既存の企業の経営基盤、ファイナンス、戦略を再設計することで、いいアセットやビジネスを飛躍させることで経済を回していくという成功モデルもあるのではないか。

Zebras and Company 田淵さん

価値観を変える・政府を変えるは時間がかかる

大きなものは動かすのに時間がかかるが、身近なものでできることは幾つかある。一つは、「地方出身者」を使うこと。地元に貢献したい人という人は沢山いて、金融がその人の金・知恵を借りるためのハブになることが重要だ。二つ目は、地域の成功パターンを分類すること。前の話と重複するが、ユニコーンがすべてではない。「この地域ではこのパターンが勝ちパターン」、を各地域がそれぞれ作っていく。三つめは「地方豪族企業」の覚醒。B/Sの現金で30億円とか持っている豪族が地方にはいる。そこには地域を変えていく為の力があり、そこと共にムーブメントを起こしていくことができれば地域ビジネスは大きく進化する。

まとめ

このセッションでは、地域×金融、特にエクイティファイナンスを取り巻く課題と現在地が良く理解できた。その解決策については、自分の中でより解像度を高く持てるようにしたいと思ったし、そのヒントは他のセッション内容にも繋がると思った。

POTLUCK FESの全セッションを頑張ってまとめて、「地域経済」の全体像・その解像度を高めていきたい。


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