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イベントの価値

 10月に入ってようやく涼しくなり、ジョギングをしていても身体が動き、やる気スイッチも入るようになった。先日、Tokyo Legacy Half Marathon大会があり、事前にゼッケンを受け取りに、千駄ヶ谷の国立競技場へ行った。

 そこでは、ツアー会社が「ロンドンマラソン6日間ツアー」を宣伝していて、思わず吸い込まれるようにチラシをのぞき込んでしまった。そこには、同じようにのぞき込むランナーが。ツアー会社はまだ、来年のロンドンマラソンの出場権を持っているので、ツアー参加しないかと宣伝していた。
 知らない人、関心がない人が聞いたらビックリするだろうが、世界的に有名なマラソン大会に一般市民が参加するには、高倍率の抽選に当選しなければならない。そうでない場合、何十万円というお金を積まなければならない。つまり、「お金」の力である金力と、「筋」肉の筋力、二つのキンリョクが必要になって来るのだ。

 そんなお金を払っても行きたい、走りたい大会イベントって何だろうか。イベントの価値とは何か。ツアー会社が用意するパッケージツアーに申し込むのも一案だが、ツアー会社のブース前で出会った男性ランナーは、昨年、ロンドンマラソンにチャリティ枠で走ったという。私も昔、ロンドンで大学院生をしていた時、大学秘書に勧められ、チャリティ枠で走ったことがあるので、そのプロセスの大変さはよくわかる。ロンドンマラソンのイベントに参加する英国(米国NPOも参加)チャリティ団体(医療系団体が多い)にアプローチして参加枠を確保し、その団体に代わっておよそ三十万円前後の募金活動を行い、募金額達成と引き換えにマラソン参加ができる仕組みとなっている。オンライン募金ページを立ち上げ、家族や友人、職場関係者などに向けて、誰のために、そして何のために走るか知らせ、募金活動を行う。

 大会イベントは、走る前から始まっているのだ。チャリティと向き合い、どこのチャリティを支援するのか、なぜチャリティをするのか、募金活動をしながら考える機会を与えられる。その過程で、マラソンとは異なる次元での醍醐味を見つけ出し、一喜一憂し、コミュニティの中で新たなネットワークを築いたり、熟成させたりする。マラソン当日にタイムを競い、縮めることも大切だが、それだけでなく、マラソンのスタートラインに立つに至る過程そのものが、イベントの価値なのではないか。ロンドンマラソンは、一度走った人だけでなく、沿道応援した人も含めて皆、また参加したいと思わせる大会だが、秘訣はそんなところにあるのではないかと思った。

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