架空人物の　(28)

　おしゃれさんになりたい。

　例えば大好きなお友達のHさんのように。
VネックのTシャツ着たら、胸元に金のエルメスのカディナが光っていたり。さりげないおしゃれ。

　これを着たい！と惚れ込んで買うお洋服もあるのだけど、買って満足。着ていく場所がない。田舎ですもの。
　都会だと授業参観にスーツかもしれないけど、この辺りのドレスコード、ジーンズでOK。超カジュアル。なんだったら、パート先の制服で、ちょこっとお邪魔っていうのも、全然違和感ない。
　逆にスーツとか、素敵なワンピースとかで、髪もお化粧も隙ありませーん、みたいな方が悪目立ちするかも。まあ、子供は綺麗なお母さんが好きだから、本当は悪目立ちくらいして欲しいのかもしれませんけど。

　社会人の子供が帰ってきたとき、
　「え、お母さん、それで外に行くの？」って驚愕されちゃった。
　冬だったのですが、灰色のパーカー（フーディーとか恥ずかしいわん)来て、黒のジャケットというかジャンパー着て、ちょっとおしゃれゴゴロでフードは出して、スエットパンツに長靴ですが、何か？
 「スエットパンツって、それ、」
　ありえないお顔の子供に
  「だって、アリスの柄なんだよ。」
 わたしは審判でも下すように言ってみせる。アリスは万能。わたしは〈不思議な国のアリス〉信奉者です。
　「お母さん、それ、幼稚園児の『プいキュアついてゆから、これで幼稚園いく！♪』って、プリキュア柄のパジャマ着て幼稚園行きたがるのと同じ論法だよ。」
  え、そうなの？
　アリスって、切り札じゃないの？
　なんだか、うちのお若い社会人さん説得力ありまくりなんですけど。

　でも、着替えるの面倒でそのまま行っちゃう。
長靴はノータッチなのかい！？長靴は　no problem なの。雪国ですもの。

　そんなオシャレ不精も、メリットがあります。シャンプーの話ではありません。普段の洋服に膠着しない、ということは、髪型にもこだわらないということ。メリットだけに、やはり髪のお話ですか。花王のメリット買おうかな、って、駄洒落ってる場合ではない。
　小洒落たカラリングとか、パーマとかいたしません。ドクターX風に。野武士みたいになってます。いいの。それでも。野武士で、3、4年過ごすの。そうすると、ヘアドネできるんだ。ヘアドネーション。数年前に一度できましたぁ。パチパチパチ。この時は結構年数がかかりまして。また、おしゃれの心を捨てきれずに、毛先を揃えに行ったりしちゃったんですね。毛先揃えるだけでも、10とか15センチくらいに切るんですよ。傷んでたりするからかな。多分それで、目標の32センチ以上カット、の状態に持っていくことができなかった。
　今回は反省して、おしゃれゴゴロを捨てる。粉砕する。毛先なんて揃えないぞ。ただ、野生のままに伸ばし続けております。
　〈おしゃれ無精〉改め、野武士から昇格の〈オシャレ無精〉といたしましては、自分流のヘアドネ実践のため、いい年をして野武士ヘアなんて、と、眉を顰める世間様の冷たい眼差しと日々戦っております。

　自己肯定が過ぎるな。