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ファンサービスをしない監督 落合博満は野球ファンに何を与えたのか 第53章

2023年WBC準決勝 落合が勝敗のポイントに挙げたのは意外なプレーだった

2023年のWBCは、見事に日本代表の優勝で幕を閉じた。
脳裏に蘇ってきたのは、2006年・2009年の感動。
準決勝のメキシコ戦と決勝のアメリカ戦は、どちらも手に汗握る熱戦だったからだ。

まずは準決勝のメキシコ戦。
この試合は、佐々木朗希が4回表に先制3ラン本塁打を浴びて苦しい展開。
しかし、日本も7回裏に吉田正尚の3ラン本塁打で3-3の同点に追いつく。
ところが、8回表に山本由伸、湯浅京己が打たれ、3-5とリードを許す。
それでも8回裏に日本は岡本和真が死球で出塁すると、中野拓夢を代走に出す。その後、3塁に進んだ中野を山川穂高が犠牲フライで還し、4-5。
9回裏には大谷翔平が2塁打を放ち、吉田が四球を選ぶと、1塁ランナーを周東佑京に交代。それが功を奏して、村上宗隆のセンターオーバーの2塁打で周東が生還。
劇的な逆転サヨナラ勝ちを収めた。

この試合のポイントと言えば、吉田の3ラン本塁打、山川の犠牲フライ、大谷の2塁打、9回表を0点で抑えた大勢、村上の逆転サヨナラ2塁打、周東の好走塁が挙げられるだろう。

落合も、この準決勝をテレビ観戦して、自身のYouTubeチャンネルでこの試合を語っていたので、どこをポイントとして観たか、私は気になった。

「8回表にタイムリー打たれてセカンドランナーをホームで刺した。あの1点が大きかったと思う。あれが3点と2点ではえらい違いだからね。あそこで6-3になってるのと5-3ではゲームの流れとしてはえらい重みが違ってくるのでね」

【公式】落合博満のオレ流チャンネル

プロで現役生活20年、監督生活8年で数多くの試合を経験した落合が突き詰めたポイントは、8回表2死2、3塁でメキシコにレフト前ヒットを許した際の、レフト吉田の好返球だった。
あのとき、2死なので2塁ランナーは、スタートを切っている。吉田は、長打も警戒なので思い切った前進守備は敷いていなかった。それでも、ゴロの打球に対して全速力で前進した吉田は、強肩でセカンドランナーをタッチアウトにしてみせた。

1点を防ぐ守備。ここに落合は、大きな価値を見出したのだ。
投手を中心とした守りの野球。それを監督生活8年間貫いた落合が評価したのは、やはり守備での貢献だった。

仮に3-6になっていたら、8回に1点返したとしても4-6。9回に最低でも2点取らなければならないというプレッシャーは重くのしかかっただろう。
1点差の4-5で9回裏を迎えられたからこそ、1点なら何とかなるという心境で攻撃できたのだ。

いかに無駄な1失点を防ぐことが大切か。
それを落合の分析で思い知らされたWBC準決勝だった。

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