こそあど

ふしぎな木の実の料理法/岡田 淳

【あらすじ】“この森でもなければ その森でもない あの森でもなければ どの森でもない”「こそあどの森」に住む住人たちの物語。主人公は無口であまり人と関わるのが好きではない少年・スキッパー。彼の同居人・バーバさんが旅先から寄越した手紙の謎をきっかけに、こそあどの森の住人たちと、スキッパーの交流がぎこちなくも始まっていく・・・・・・

われらが時代の児童文学の名手・岡田淳が手がける唯一のハイ・ファンタジーシリーズの第一巻。

「こそあどの森」という世界じたいが、大変に空想をくすぐる代物だ。住人が住む家はみな、個性的なものばかり。ずんぐりした船にとげのあるウニをのせたような「ウニマル」、地面にガラスびんをうずめたような「びんの家」、らせんかいだんの踊り場に部屋がある「ふたごの家」。どれも幼い頃に妄想したような「おとぎの家」のような発想に満ちている。

そして、本作の魅力はなんといっても、はじめは人嫌いだったスキッパーが少しずつ森の住人たちと交流していく過程だ。

スキッパーは「家でひとり、図鑑を眺めている時間が楽しい」という少年で、人にかかわらずとも平気(むしろそのほうが楽)だった。

しかし、バーバさんの手紙と一緒に「ポアポア」という木の実が届く。その調理法は不明で、森の誰かが知っている、と書いてある。それを住人のひとりと一緒に見てしまったものだから、スキッパーは(いやいや)謎解きを始めることになってしまう。

つまり、謎を解くには、いままで避けていた人との交流をしなければならないのだ。ことの説明をするだけでもスキッパーにはひどく難しく、何度も練習していった台詞もうまく喋れず、訪ねたあとには疲労感とともに「やっぱり一人がいい」なんてぼやきもする(このあたり、特に本好きの子供だった人なんかは、ようく共感できてしまうのではないか)。

何度も謎解きを投げ出そうとするのだが、住人と交流していくうち、スキッパーは少しずつ変化していく。そして迎えるラストシーンはじんわりとした感動に包まれること間違いなしなので、ぜひ改めて体験してみてほしい。

既刊全11巻・理論社刊

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