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2024.3.2
ルーブルにいった。広かった。とちゅうで迷ってしまった。電波がなくて地図もわからず、とりあえず前に進んでいたとき、少しだけ開いている扉があったので気になって入ってみた。電気はついていなかった。前の部屋からの明かりのおかげで見ることができたが、大量の額縁だけが掛けられていて、絵はひとつもないようだった。前の前の部屋まで戻って係員を探したが見あたらなかった。もういちど額縁の部屋に入って奥まで進んでみると、明かりが見えた。さらに進んでみると、ろうそくに火をつけて、ケンタッキーを食べているひとがいた。こんにちは。返事はなかった。KFCですか? こっちを向いて目をあわせたあと、またケンタッキーを食べはじめた。写真を撮ってもよいですか。ああ、どうぞ。黒い歯が見えた。べつのひとが入ってきた。男のところまでいって、たばこをわたした。足がなかった。またべつのひとが入ってきて、小銭をわたした。5、6人くらい集まってきたところでひとつ前の部屋で寝ていた係員がやってきて、人数分のあたらしいろうそくを取りだして火をつけた。全員にろうそくが配られた。男はいつのまにかケンタッキーを食べ終わっていて、係員がごみを片づけた。さっきもらったたばこに火をつけようとして、係員に止められた。係員にうながされて、男はろうそくを持って立ち上がった。さっきまでなかった足があった。係員は入り口の扉のところまで戻ってしっかりと扉を閉めて、いすに座ってまた眠った。男はあいさつをして、この部屋の説明をはじめた。さっきまで黒かった歯が白かった。額縁とはなんなのか、なぜ額縁だけがここに集められているのか、たとえばこの額縁は、というように代表的ないくつかの額縁について説明があり、30分くらいでわたしたちはその部屋の出口までたどりついた。入り口の扉のところで寝ていたはずの係員がそこにいて、ろうそくを回収した。だれかがたずねると、じつは三つ子なんだ、と言った。扉を開けてくれて、まぶしかった。そこの角をまがると敷地の外に出る、そこでわたしが待っている、と言って笑った。角をまがってもだれもいなかった。

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