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犬のピピの話 326 第二十一章 7月・おーピピ、ピピおー
第二十一章 7月・おーピピ、ピピおー
七月一日(ついたち)のことです。
その日は、雨の土曜日でした。
わたしの伯母、つまり父のお姉さんが手術をうけて、入院しているのをお見舞いに行きました。
わたしの車の、海色のちいさなオプティの、運転席にわたしが、助手席に母が、うしろのソファにピピが、場所をとります。
とちゅうで花屋に寄り、やわらかいピンク色のバラを七本買って、濃い緑のリボンでむすびました。
そのあいだ、ピピは、車の中で母と一緒に待っていました。
わたしが花屋からもどってきて、花束をトランクに入れ、運転席につくと、ピピが
「びょおん!」
と、前にとびうつってきました。
でも、運転席はわたし、助手席は母。そのほかの席はないのです。
どたどたどたどた!!
「きゅ、きゅうちゃん。みんなで狭いところにいなくても」
わたしたちは、車の前半分でどたばたしました。
けっきょく、ピピは母の小脇にかかえられるかんじで、助手席の端っこで、中腰になりました。
「ぷっ。ピピ。なにそのすまし顔・・」
ピピは、いまにもずり落ちそうな、立っているような座っているようなどっちつかずの体勢で、なのに顔から上だけは真面目にすましこんで、前を見ているのです。
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