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マイベストビール2019

私はクラフトビールを飲む。わりと、まあまあ好んで飲む。消毒用のアルコール綿で擦ればその部分は赤くなる程度には下戸なのにも関わらず。なので一度にたくさんのビールを味わうことはできないし、そもそもクラフトビールは値段も高いため、さほど多くの種類を飲めたわけではない。スマホのビールに関する写真のフォルダに収められている枚数でカウントすると200~250種類程度だ。なのでここでは個人の備忘録として、また自分の「推し」の紹介として簡単な情報、個人の感想を書いていきたいと思う。

Clouds Are Genius / CULMINATION BREWING

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こちらは米オレゴン州ポートランドにあるブルワリー、CULMINATION BREWINGが岩手県の飲食店とコラボしたビールの第2弾とのこと。クラフトビールのジャンルも細分化が進んでいるが、ここ数年で増えてきた印象のあるヘイジーIPA(あるいはニューイングランドIPAとも)に類するものである。一概にIPAといっても以前のガツンと苦味の効いたものから柑橘系の香りが漂うものに徐々に主流は変化していき、最近ではトロピカルフルーツを感じさせる非常にフルーティーなフレーバーのものがトレンドとなっている。このビールも口にした瞬間にトロピカルなフレーバーが強く香り、IPAらしい苦味もあるが非常にドリンカブルで、この後何本か購入して帰った。味の良さもそうだが、そもそも生産本数がさほど多くなかったこともあってか、扱っていた店からは早々と消えてなくなっていた。地元のビアバーの店主さんと「CULMINATIONは外れがないよね」という話をしたが、その中でも特に秀逸と感じた一杯。ちなみに商品名はヘイジーの濁りを雲に例え、岩手出身の石川啄木の著書「雲は天才である」から取ったそう。つまりデザインに描かれている人物は石川啄木ということになるか。

Pleroma Raspberry Creme Brulee Sour / Omnipollo

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九州へ旅行に行ったときに福岡市にあるビアキチ(いい店名だ)といビアバーで飲んだビール。スウェーデンのストックホルムにあるブルワリー。変わった商品名からも推察できるように独創的な作り方をするブルワリーらしく「人々のビールのイメージを根底から覆すこと」を理念に据えているのだとか。ビアスタイルも何にカテゴライズされるでもなく「Raspberry Creme Brulee Sour」と書いてあるのみ。まあ百聞は一見に如かずというか、飲んでみたら既存のスタイルでは定義できないかもな…と思わせる一杯。ビアキチの説明文も「ビールの常識を根底から覆す一杯、迷うならとにかく飲んだほうがいい」などどう説明したらいいかわからないのでとりあえず褒めちぎる、みたいな状態であった。とがりすぎずバランスの取れた酸味にラズベリーの果実感、公式HPによると副原料として乳糖やバニラが入っているようだが、それら由来の甘味や香りもほんのり感じられる。白っぽい濁りもそれらか麦芽由来のタンパク質によるものか。余談だがこのビアキチ、かなり個性の強い店員さんがピザ生地を捏ねながらずっと熱く面白いビールの話をしてくれるしキャラクターも可愛い、ラインナップも良しで福岡に行ったら再訪したい店ナンバーワンである。

DAIDARABOT / FAR EAST BREWING × GIGANTIC BREWING

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こちらははじめに福岡の他の店で樽生でオンタップとなっており、そのときは特に何の印象にも残らない味だな…と感じたのだが、後日札幌のビアバーで瓶で置いていたものを飲んだときは全く別もののようにおいしいと感じた一杯。樽だと開栓からの時間経過やその店の設備管理の度合いなどでも味が変わることが予想されるため、樽生より瓶・缶で飲むことを推奨するブルワーさんもいるくらいなので、そういった違いで味と印象が180度変化したのだろう。こちらは東京のFAR EASTとオレゴン州ポートランドのGIGANTICのコラボで、今年の6月に代官山で開催された日本とポートランドのコラボでのビアイベント用に作られたものである。FAR EASTのセゾンにGIGANTICのIPAに使われているクリスタルという品種のホップを掛け合わせたとのことで、HPにはスタイルはセゾンとしているが、商品ラベルには「JUICY SAISON」との記載がある。味はその表記通りに柑橘系を感じさせるジューシーさ。美味しかったのはもちろんだが、樽と瓶でここまで味が違うこともあるのだなという意味で印象深い一杯でもある。

Smol / 志賀高原ビール

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長野にある志賀高原ビールの新作。フジロックの会場の最奥にはいくつかのブルワリーが合同で出店しているスペースがあるのだが、そちらで先行開栓していたため飲んだ一杯。ちなみに今年は志賀高原の他に箕面ビール、ブリュードッグと、去年の京都醸造に替わってヨロッコが参加していた。志賀高原は「自分たちの飲みたいビールを作る」をテーマにかなりホップの効いたフレーバーが特徴的なブルワリーだが、札幌で行われるビアイベントでは1、2を争う行列を作り、限定商品がオンタップとなれば15分で1樽が完売するほどの人気を誇っている。フジロックでは雨が降っている時間が長く、いずれのブルワリーも客足が伸び悩んでいる様子だった。こちらのスタイルはペールエールということだが、IPAかと思うほどにホップの効いた柑橘系の華やかさが非常に強く、間違いなくホップヘッズが歓喜する味。一方でアルコール度数が低い為すいすい飲めてしまい、まさに「永遠にのめる」ドリンカブルなものとなっている。この商品はこの後に瓶でも販売され、自家栽培の生ホップを使用したハーベストブリューバージョンやマイナーチェンジ版のSmol-Pなどもリリースされていて、いずれも飲んではいるがフジロックでのこちらが一番良かったような気がする。それは製造から間もなかったためフレッシュだったからなのか、初めて飲んだインパクトが大きかったのか、はたまたイベントの高揚感ゆえの気のせいなのか…今年のフジロックのベストアクトは?と問われたら、友人らとここのブースに連日集まってビールを飲みながら閑談していたこと、と答えているので、まあそういうことかもしれない。

STARDUST巨峰 / うちゅうブルーイング

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ビアバーに行くたびに他のお客さんから「うちゅうはうまい」と噂を聞いていたこちらのブルワリー、今年は運良く2回飲む機会に恵まれた。まだ設立まもないこちらのブルワリーは、もともと山梨で無農薬栽培で農業をやっていた方々が、主に自家栽培のホップでビール醸造も始めたという経緯があるそうだ。このビールはフルーツヘイジーIPAというスタイルで、ヘイジーIPAに巨峰を添加して醸造されたもの。はじめは普通にホップの効いたヘイジーといった印象で巨峰の風味はあまり感じられなかったが、時間が経つにつれて温度変化により徐々に巨峰の香りが花開いていく。また飲みたいが、このビールはおろかそもそもすべての商品が入手困難なことが悔やまれる。他にMARSというヘイジーも飲んだが、こちらも美味しかった。

その他

MAGIC ROCK BREWING

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MAGIC ROCK BREWINGは今年初めて出会ったブルワリーだが、いずれもすっきりした飲み口でホップが効いており、かなりアメリカっぽさを感じる。アメリカの醸造所なのかな、と思わせておいて実はアメリカのビールに魅せられたイギリス人がやっているブルワリーである。7種類ほど飲んだが、いずれも平均してクオリティが高く、販売路も拡大しつつあり手に入りやすく(自分の身の回りでは体感として、という話だが)なおかつ比較的安価という点で高評価。おまけにラベルのデザインもおしゃれで大変良い。もし見かけることがあれば購入をお勧めする。


弥彦ブリューイング

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弥彦ブリューイングは新潟県弥彦村、弥彦神社の近くに今年の5月にできたばかり。ビールの苦味が苦手という酒屋さんが自分が飲めるビールを作ることにしたそうで、非常に飲み口はさわやか、軽やかでフルーティ。調べてもあまり情報が出てこないのだが、おそらく新潟以外ではあまり流通はしておらず、弥彦神社周辺のいくつかの酒屋で飲むことが出来る。伊彌彦エールとぶどうを添加したビール(商品名は失念)を飲んだが、醸造を始めてから半年とは思えない出来の良さで、特にぶどうをつかったビールはフルーツ系のビールだとうちゅうのSTARDUST 巨峰に比肩するほど衝撃を感じた一杯。

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台湾のTaihu Brewingと東京のビアバーWatering Holeのコラボ、相思相愛

美味しかった一杯+αという体裁でまとめてみたが、「推し」の紹介と銘打った割りには限定商品や入手困難品が多くなってしまい、このビールを買ってみよう!と思ってもあまり参考にならない記事となってしまった。記事に載せられなかったもの以外でも基本的に他社とコラボしているものは美味しいものが多いので、クラフトビールの購入に迷われた方はコラボビールを見かけたらまず試してみるといいかもしれない。2020年も良きビアライフを。

結論:コラボビールは見かけたら買え(レアリティ的な意味でも)

※この記事はBFMのAbbaye de Saint Bon-Chien 2017を飲みながら執筆しました

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