【2020松本山雅】第3節vs甲府(H)レビュー

1.拾った勝ち点1

待ちに待ったホーム開幕戦は理想的とは言えない展開が続いた。
文字通り拾った勝ち点1で、甲府としては勝ち点2を失った試合であることは間違いない。
後半システム変更で、優勢になったことで攻め続けた山雅だが、前半は何をするべきだったのか。
細かいシーンを分析しながら紐解いていこう。


2.スターティングメンバー

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・松本山雅FC

前節から2人変更、前節負傷の橋内に代わり常田、フォーメーション変更に伴い鈴木に代わって浦田がそれぞれ初スタメンを果たした。
フォーメーションは3-4-2-1
甲府も3バックを用意していたという情報があり、両者ともにミラーゲームを嫌っていたようだが、山雅はスタートから3バックにする決断をした。

・ヴァンフォーレ甲府

前節からスタメンを2人変更、ボランチに武田とJ初スタメンの中村を起用した。
フォーメーションは4-2-3-1
山雅とは違い、状況を見て3バック変更も考えていたようだが、山雅が3バックで臨んだため、試合中で変更することは無かった。


3.悪夢の失点

ゴールキックの流れから失点。
この失点に関しては原因究明は無意味であるが、このプレーがその後90分を支配した事は紛れもない事実であった。
今までこのようなミスから失点するようなことは少なく、チームに動揺が走ったのは事実であり、サポーターの雰囲気で打ち消すことの出来ない無観客試合の影響をまじまじと感じたシーンだった。


4.詰まるビルドアップ、減る時間

3-4-2-1を選択した山雅だったが、前節金沢戦のように4-4-2の試合から同じように苦しんでいたビルドアップでのもたつきが、負のスパイラルに拍車をかけた。

・最初は4分20秒

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森下から浦田に配球。
浦田から裏のスペースに走り出した阪野へ大きなフライスルーパスが出たシーン。

このシーンではボランチのポジショニングが悪く、近くに出す場所がない状況が生まれてしまっている。
藤田ないし塚川が受けに行き、甲府の2列目の選手を動かすことでシャドーへのパスコースを上手く作ることが必要だろう。

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他にも藤田と塚川がドゥドゥとバホスにパスコースを消されるシーンが多々あるが、この問題は後半途中にフォーメーション変更をすることで解決している(後述)。
しかし、フォーメーション変更によってしか修正できないというのは大きな問題であり、ボランチに入る選手には臨機応変な対応と、組み立てる意識を持って欲しい。


・次に6分34秒
左サイドて常田が入れたスローインから浦田が持ち、隼磨と塚川がパス交換、隼磨から杉本へのパスがサイドラインを割ったシーン。

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まず、フィールド左から右へのサイドチェンジが6秒近くかかっていることに問題がある。
この時点で甲府の守備ブロックは、左半分から右半分に完全な移動を終えている。
森下と浦田がそれぞれ2.3タッチをして運んでから展開しているため、甲府としては楽な展開だっただろう。実際、塚川にボールが入った際に縦パスのコースは遮断されている。
元々ビルドアップ時のパススピードが遅いと感じるシーンが多いが、このように遅いスピードでの展開は相手に詰められ、前線へのコースも遮断されてしまうため、改善が必要だろう。


・最後は21分48秒
左サイドで浦田から利弥、ダイレクトで阪野、セルジと繋がり、隼磨へのロングボールが供給されたシーン。

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ここでも問題はボランチのポジショニング。
まず藤田が早めに降りてくることでボランチを引っ張り、利弥には阪野へのダイレクトとスペースができたセルジーニョへの配球という2つの選択肢が生まれる。(実際は武田が居たため落ちるスペースなし)

更に塚川はドゥドゥにマークを受けたまま無効化されており、ボールを受けに行く体制ができていない。
このようにボランチが受ける姿勢が明らかに欠けており、前半シャドーの2選手がボールを受けるコースがなかった原因になっている。



4.明確な交代策

前節に続き、CBの負傷で交代カードを切らざるを得なかった山雅であったが、右サイドで停滞を招いていた隼磨と、ボジショニングが悪くボールを触れる回数が少なかった塚川に替えて、右WBに鈴木、中盤の構成を替えた右IHに久保田を投入した。

中盤の構成が変わったことで、甲府FWによるアンカー藤田へのマークは甘くなり、受けたり裏に進んだりと上下動を繰り返すIHに甲府ボランチは的を絞れなくなった。

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体力的な消耗によるものである可能性は否めないが、前半からビルドアップの形を工夫して作り出すことは可能な形であり、選手交代に寄らなければその状況を打破することができなかった点においてはマイナスである。

その後、アルヴァロ・服部と交代選手を投入し、チャンスを多く作りだした後にオウンゴールで追いつくことに成功した。(詳細は省略)

今回は劣勢を吹き飛ばすまでとは行かなかったが、挽回し勝ち点1をゲットする効果的な交代が出来ていたと言えるだろう。
特に前節疲れが出ていたSBは3バックにすることでWBとなり、SH属性の選手の起用を可能にしただけでなく、果敢に攻守に走り回ったことで体力面の課題と攻撃の圧力を実現させることができた。
3バックへのシステム変更は、一定の成果を上げたといっていいだろう。
守備面でも、左右に振られた際の疲労やクロス対応など4バックのウィークポイントを配置で解決し、甲府が引いたことによってそこまで大きなエラーを起こすことなく90分を乗り切ることに成功していると評価出来るだろう。

対する甲府は、山雅がフォーメーションを変えた後に次々と選手を投入し、運動量を保ち続けたが、前節成功したFW4枚をベンチに置く作戦は、リードを保って逃げる上では逆効果になってしまった。


4.浦田継続起用のススメ

今回、最初のミスからリズムを崩し、ところどころ守備で後手に回るシーンや、攻撃でプレッシャーを受けてボールロストをするシーンがあった。
しかしながらCBとしての攻撃参加は今日の山雅のCB陣の中では最高であり、左サイドを活性化させることに成功している。

ここで提案するのが、浦田のボランチ起用である。
CBの台所事情が苦しい中、実現できるかどうかは難しいところではあるが、攻撃においては献身的な追い越しや、持ち前のパスセンスを活かしボールを動かすこと、守備ではCBのカバーを期待して前に圧力を持った守備をすることが出来るだろう。


5.まとめ

不運な失点からしばらくは立て直すことが出来ず、ビルドアップでのもたつきが自らの首を絞めるまさに自滅の展開となってしまった。
2試合連続で自滅してしまった事を反省した上で、後半軌道修正できたことは今度において明るい材料になるだろう。

2戦連続でCBをケガで失ったことで、より一層厳しい戦いが強いられるが、大野や三ッ田などレンタル加入でない若手選手もいるため、チャンスだと思ってスタメン争いに名乗りを上げてほしいと切に願う。