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7月7日公開オススメ映画『Pearl パール』『キャロル・オブ・ザ・ベル』『1秒先の彼』

映画ライターの松 弥々子が、7月7日に公開されるオススメ映画3作品をご紹介します。

Pearl パール

1918年のテキサスを舞台に、少女・パールの目覚めを総天然色で描いた映画『Pearl パール』
パールが何に目覚めたのかというと……シリアルキラーとしての本能に、だったりするのですが……。

タイ・ウエスト監督、ミア・ゴス主演のこの映画『Pearl パール』は、映画『X エックス』の前日譚になります。
『Pearl パール』『X エックス』に登場したシリアルキラーの老婆・パールの若かりし日を描いた作品なのです。とは言え、『X エックス』を観ていなくてもまったく問題なく、単独の映画として十分楽しむことができます。

ミア・ゴス演じるパールは、第一次世界大戦に夫を送り出し、厳格なドイツ系の母親と、病気で体の動かせない父親と、農場で3人で暮らしている10代の少女です。パールはダンサーになって華やかな衣装を身につけてステージ上で踊りたいと考えていますが、厳格な母親はそれを許しません。そして、パールの中には色々なストレスが溜まっていくのです。そんなある日、街に出かけたパールは、映画館で映写技師の男性と出会います。そして彼女は、映写技師とともにヨーロッパにわたることを夢見るのですが……。

一見、平和な農場を舞台に可憐な少女が歌い踊り、華やかに明るく本作ですが、少しずつ不穏な空気が漂いはじめ、やがて不穏な空気に支配されはじめます。やがてパールが覚醒し、色鮮やかなゴア・ムービーとなっていくのです。

日常のそばに潜む狂気、そして少女の目覚めを描いた映画『Pearl パール』、いつのまにかパールの魅力に引き込まれてしまう、そんな不思議な魅力に魅せた一作でした。

『Pearl パール』(102分/アメリカ/2022年)
原題:PEARL
公開:2023年7月7日
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場:TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて
Official Website:https://happinet-phantom.com/pearl/
(C)2022 ORIGIN PICTURE SHOW LLC. All Rights Reserved.

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

ロシアによるウクライナへの侵攻が始まって1年経ちました。それまで日本のニュースに登ることが少なかったウクライナという国名ですが、実は古くからロシア、ソ連やドイツ、ポーランドから脅かされ続けてきた国でした。

このウクライナ侵攻前、2021年に制作されたウクライナ映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』は、ウクライナという地に起きた悲劇、そしてこの地で生きる人々の強さや信念を知ることのできる映画です。

この映画の舞台となっているのは、1939年のポーランド、スタニスワヴフ(現ウクライナ、イバノフランコフスク)です。ユダヤ人の暮らす家に、店子としてウクライナ人の家族とポーランド人の家族が引っ越してきます。ウクライナとポーランドの関係から、最初のうちは店子たちはギクシャクしていましたが、やがて子ども同士が友だちとなり、三家族は打ち解けていきます。

しかし、第二次世界大戦がはじまり、まずポーランド人家族の両親が連行されてしまいます。やがて1941年にはドイツがウクライナを占領し、ユダヤ人の大家たちも収容所送りになってしまうのです。

ウクライナ人のミハイロ&ソフィア夫妻は、ポーランド人一家の娘・テレサ、ユダヤ人一家の娘・ディナを匿い、自分の娘・ヤロスラワとともに育てはじめます。しかし、ソ連のウクライナ侵攻など、彼らにはさらなる非情な現実が襲いかかるのです……。

この物語は、本作の脚本家であるクセニア・ザスタフスカの祖母の実体験をベースにしているそうです。彼女の祖母は、実際にポーランド人とユダヤ人の家族をドイツ軍から守っていたそう。ほかにも、祖母が体験したエピソードがいくつか盛り込まれているそうです。

物語の中では、ウクライナで古くから伝わっている民謡「シェドリック(Shchedryk)」が何度も印象的に使われています。この「シェドリック(Shchedryk)」は、1916年に“ウクライナのバッハ”との異名を持つ作曲家マイコラ・レオントーヴィッチ ュが編曲し、英語の歌詞をつけ「キャロル・オブ・ザ・ベル」として知られるようになりました。

クリスマスキャロルに秘められた悲しいウクライナの運命を知ることができるこの映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』。この夏、ぜひ多くの人に観てほしい映画です。

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』(122分/ウクライナ・ポーランド/2021年)
原題:Shchedryk
英題:Carol of the Bells
公開:2023年7月7日
配給:彩プロ
劇場:TOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて
Official Website:https://carolofthebells.ayapro.ne.jp/
©︎MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

1秒先の彼

2020年の台湾映画『1秒先の彼女』を日本でリメイクした本作『1秒先の彼』
もともと傑作コメディとして評価の高い原作を山下敦弘監督、宮藤官九郎脚本というタッグでリメイクするとなれば、期待が高まらずにはいられません。

いつもワンテンポ早いハジメと、いつもワンテンポ遅いレイカ。この二人の出会いにより、なぜかある1日が消えてしまうのです。果たしてその理由とは……?

ハジメを演じるのは岡田将生、そしてレイカを演じるのは清原果耶。多くの映画で素晴らしい演技を見せているこの二人が顔をそろえ、山下敦弘、宮藤官九郎がタッグを組んだとなれば、観ないわけにはいきません。

『1秒先の彼』、台湾映画の異才チュン・ユーシュン監督が手がけた『1秒先の彼女』と見比べてみるのもいいでしょう。それぞれの魅力を発見して、両作とも好きになってしまうはずです。

『1秒先の彼』(118分/日本/2023年)
公開:2023年7月7日
配給:ビターズ・エンド
劇場:全国にて
Official Website:https://bitters.co.jp/ichi-kare/
©2023『1秒先の彼』製作委員会

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